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エルフが倫理観の崩壊した世界で繁栄を目指します!  作者: アナログラビット
招かれた自然の贈り物
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エルフの別れ道

OrangestarのAlice in 冷凍庫という曲が好きです

マモノ達から唸り声が上がりこちらに近付く脅威達に警告を告げる。これはこれ以上近付けば反撃に出ると分かりやすいアピールだが、逆に言うともうマモノ達は戦おうという意思が無いということでもあった。


もし戦う意思があるなら威嚇などという非戦闘行為はするはずが無い。それが分かっていたアザとペトラは勝機と流れを感じ取った。


両腕の指が切断されていたペトラは残っている指の感覚を確かめる。右手は親指の第二関節しか残っておらず左手は人差し指から小指にかけて斜めに切断されもうマトモに握る事も出来ない。


つまる所今のペトラは両腕が封じられた状態。戦闘能力に少々問題が発生。それに対しアザは魔力が矢を撃ち込んだ事で低下、今も呼吸をする事で空気中に含まれている魔素を取り込む事でどうにか維持していた。


「ペトラ、あいつら魔力は高くて力も強いけどそこまで頑丈じゃない。一撃良いの与えれば殺し切れる。」


「分かってるわ。でも一匹でも逃せば後々驚異になる。だから…」


お互いに視線を交わし殺し方を決める。ここはマモノが逃げる前に殺し切るか、それとも地中へと逃げれない様にしてから順次各個撃破かの2択。相手の出方次第でこの2つの選択肢を帰る必要がある。


「…出方を見るために誘ってみるか。」


アザがあまりにも自然な構えで弓を引いた。殺意を感じさせないその一連の動作はマモノ達に一瞬の隙を与え、決して与えてはいけない初手を敵に許してしまう。


しかし流石と言うべきか魔覚が敏感なマモノ達は魔素で構成された矢を感じ取り反射的に飛び退き回避する。


だがその間に完全にフリーとなったペトラが地面を踏みしめてから超加速、その勢いのまま尻尾を振り抜き空中に跳んで逃げたマモノの首と共にその命も一つ刈り取ってみせた。


「チッ…だから嫌なのよこのやり方は。」


ペトラの尻尾には棘が数本突き刺さっていたが、鱗と鱗の間に引っ掛かっている程度のもので尻尾を振れば棘は地面に突き刺さり全ての棘が抜ける。


尻尾は血が回っていない様な痺れと感覚の無さを覚えるがそういった違和感も数秒程度で無くなり毒が無力化された。


(尻尾は竜としての因子、これぐらいの毒は全身に回る前に解毒されるって訳ね…)


つまり羽根や尻尾は毒が効かない部位ということ。ペトラは竜としての強みを前面に出す立ち回りにシフトする。


「ペトラ!平気っ?」


「大丈夫よ!尻尾になら毒が効かないみたい!」


2人はマモノ達に目を向けながら会話を続け向こうの出方を伺う。すると一匹のマモノから棘が飛来しペトラを襲った。


「ハハッ!アタシから殺ろうって魂胆ねっ!いいわ…かかってきなさいッ!!」


ペトラは右の片羽根に魔力を集中させ盾のように構えて棘を受け止める。10本もの棘が一瞬にして翼膜に突き刺さるがペトラの胴体に届く事はなく棘が半分程貫通するだけに留まった。


「魔力込めてでも貫いて刺さるか…やるじゃない。」


羽根を勢いよく広げてその反動で棘を抜くと同時にペトラは駆けた。羽根を広げて空気を押し加速したペトラは優にマモノとの距離を縮めることに成功、そこでマモノは(ようや)くこの生き物は自分達よりも上、この土地には居なかった筈の外来種(強者)である事に気付く。


ペトラに詰められたマモノは瞬時に穴を掘り地中へと逃れようとした。…が、その穴目掛けてペトラは自身の尻尾を力の限りに思いっ切り突き刺す。


地面は爆薬を爆発させたかのように爆ぜて土煙が上がり地面を土砂が覆った。ペトラはそんな中悠然と尻尾を引き抜き、その尻尾を横薙ぎすると先端に突き刺さっていた何かしらの残骸が飛んで木に激突、残骸に付いていた棘が木に突き刺さりそれがマモノの変わり果てた姿であるとマモノ達に見せつける。


「ペトラ、あなた…」


同じサラマンダーでしかも姉妹である筈なのにパロメはペトラと自分に大きな差があることを自覚し、ペトラが覚醒し始めていることに気付く。


竜の血を継ぐ彼女達は戦闘能力が高いことは分かっていた。しかしペトラはその血が濃いのか、又は戦闘経験が他のサラマンダー達よりも多い事で急成長したのか他の姉妹達とは一線を画す戦闘能力を見せつけている。


そしてそんなペトラを相手に臆することなく隣に立ち戦い続ける彼女も他の姉妹とは一線を画す者だ。


「同時に射抜ければ…!」


弓を引くその手には3本の矢があり、アザはその3本の矢を同時に引きながら狙いを定めると魔力を込めて射抜いた。


3本の矢はそれぞれ独特の軌道を見せ、一直線にではなくホーミングしながら曲がりくねってマモノの側面から突き刺さる様な軌道を描く。


そんな異次元な軌道を描く攻撃に初見で対応が出来る訳がないマモノ達は矢を胴体に喰らい地面に転がったのだった。


矢には勿論のことエルチルスが潜んでおり、マモノの体内に寄生すると毒魔法を発動。酸性の毒は瞬時に体内を焼き組織を破壊、そして毒魔法はその名の通り魔素にも反応を示し、マモノが保有する魔素の包囲力を妨げて魔力そのものを妨害して魔法を使えなくした。


これがエルチルスが他の生物、つまり原生生物を狩り尽くし絶滅しかけた要因。魔法を使えないようにすることは魔素を必要とする生き物にとって最も有害で最も致命的な行為になる。


これを目に見えない程小さく、それでいて膨大な数の菌がやってくるのだ。どのような生物もあの沼地に近付こうとは思わなくなるだろう。


そしてそんな菌と共生し、あまつさえ攻撃手段として使用するエルフはもはや原生生物の天敵と呼べる存在なのかもしれない。


「アザのオーラが矢にも乗ってマモノにも乗り移った…つまりあの矢にはエルチルスが居るのね。」


「だけど後どれぐらい私の中にエルチルス達が居るのか分からないからね!」


「だったら弾切れ起こす前に殺ろうかしら!」


口から空気を吸い肺にめいいっぱい空気を溜めるとペトラは魔力と共に肺の中の空気をすべて吐き捨てた。


その結果落ち葉や土などが舞い上がって視認性が下がる。これでは視覚での発見は困難になり、魔力を偽装するマモノ達を見失う事になるのだがペトラは己の吐いた息にオーラが混じってる事を確認するとニヤッと笑った。


「アタシ達は胸の魔素袋と肺が隣同士にあってその2つは管によって繋がってるのよ。だからアタシらはブレス系の魔法が得意なんだけど、それってつまりアタシの吐くブレスには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…?」


薄い紅色をした煙の様なブレスは地表を覆い地面に開いた穴にも流れ込んでいく。そして空気中に巻かれたペトラの魔素は彼女の思い通りに動きマモノの位置を魔覚によって探り当て、更にはマモノの体内にも侵入していく。


原生生物は魔素を溜め込む事が出来なく、このマモノも同様に常に呼吸をして空気中に含まれる魔素を取り込んでいる。これは無意識的に行なっている行動であり、今もマモノ達は呼吸をして魔素を得ていた。


その結果マモノ達は突然襲い掛かる気怠さや身体の痺れにその場で蹲り身動きが取れなくなる。


「アハハッ!こういうやり方ってエルみたいな木之子種(マイコニド)の専売特許だけど今は真似させてもらうわねっ!!」


魔素は他の元素を包み込む事により様々な振る舞いを見せる。マモノ達も魔素に包まれる事によってマモノという振る舞いをしているが、これはサラマンダーの魔素にも同じ事が言えた。


エルフ族でも魔素に包まれる元素の種類は異なりサラマンダー達の魔素は主に金とタングステン、そして少量の元素が含まれているが、その中で銀も含まれている。


銀は金属の中でも特に熱伝導率が高く、金も同様に熱伝導率が高い金属でサラマンダーはこれらの性質を持つ金属を魔素の包囲力によって圧縮、つまりエネルギーを与え熱を発生させる事が出来た。


この方法により息吹(いぶき)は凄まじい熱を保有し、そんな熱にも負けないタングステンがブレスに重さというパワーを加え途轍もない威力を見せるのだがこの話の本題はこの部分ではない。


本題となるのはサラマンダーの魔素は熱を持つところ。


それでいてマモノすら燃やし尽くした実績を持つサラマンダーのブレスは魔素の包囲力によって生み出している部分、ここに着目する事でペトラが今なにをしようとしているのか見えてくる。


ペトラの思惑に最初に気付いたのは近くに居たアザ。冬の夜は空気が冷え吸い込むだけで喉が痛くなる程だが信じられない事に肌に感じる冬の空気に暖かみを感じたのだ。


そしてアザはこれらの暖かみは暑さへと変わり更には()()に変化したことに気付くとすぐにその場を離れ後ろに待機していた姉妹達に向けて逃げる様に大声で忠告をする。


「この辺り全部が()()()!!みんな逃げてっ!!」


ペトラが何をしようとしているのか、アザが何に気付いたのか、それらを知る前に肌に当たる確かな熱気を帯びた空気に皆が一斉に逃げ出す構えを取った。


ツインのような一人で逃げれない者は他の姉妹達が背中に背負いマモノ達に背を向けて必死に逃げ出す。アザも急いで身動きが取れない者を背負った姉妹たちに手を回し少しでも逃走の速度を上げた。


そして遂に空気の温度はマモノでは耐えきれない温度まで上昇する。


「カッ…はッ…!」


マモノの体内に入り込んだペトラの魔素が周囲の空気を熱する程の温度まで上昇、マモノの口からは体内にある水分が沸騰し蒸気として吐き出されていた。


それでもまだ絶命せずにもがき苦しむマモノも相当なものだ。だが急激に水分を失いミイラ化が進むマモノにはもう戦闘能力はなく後は死ぬか燃え尽きるかの選択肢しか残っていない。


だがこれならマモノのみを熱すればいいのだが明らかに周囲の温度は高く、それでいて広範囲に至っている。ここまでするとなるとペトラの負担も相当なものになり実際ペトラは地面に膝と切断されて出血している両手を着いていた。


「後顧の憂いを断つ…って言うのかしらねこういうのって。」


ペトラは地面に手を付き少しでも()()()()()()()()()()に近付いて魔法を行使し始める。


(土を挟んでとなると流石にアタシの魔覚では感じ取れにくいけど…!)


地中にある自身の魔素との距離を出来るだけ近付くために腕に力を込めて手を地中に埋めていく。切断面が土に触れて激痛が走るがそういった痛覚の信号も魔法で行なわれる生態上サラマンダーは痛覚を遮断する事も出来る。


「こいつらの生態系そのものを破壊すればもうマモノの発生は起きないでしょッ!」


地中にも水分は含まれている。そしてそれら水分を急激に沸騰させ蒸気にした場合、地中にて閉じ込められた水分は地上へと脱しようとするだろう。


その結果地中に張り巡らされたトンネル内に蒸気が充満しその中に居た生命は蒸気の熱で絶命、もしマモノに地中へ逃げ込まれ息を潜んで機を伺っていようともトンネル内に蒸気を満たしてしまえば視認出来なくても魔覚で感じ取れなくても関係ない。


熱伝導率の高いサラマンダーの魔素は容易くトンネルを地獄の釜の底に変え生態系そのものに致命的な打撃を与えるに至った。


最後は温められた蒸気が地上へと噴出すると火山のように地面を吹き飛ばし地中が露出、地中に張り巡らされていたトンネルは急激な圧力の差異に耐えることが出来ずに次々と崩壊していったのだった。


「ふうぅ〜…やっと終わった…というかアタシの立ってる場所も地盤がヤバいかも…!?」


地面が小刻みに振動しだすと周囲に生えていた木々が土砂崩れのように地面ごと流れ地中へと落ちて行ったり、川の水が地面の割れ目に流れ込んで川の流れそのものが変わっていく。


流石にこれほどの質量がみるみるうちに動く場所に留まる事はマモノを全滅させたペトラですら出来ない為ろくに飛べない状態でもどうにか地面から離れ皆が避難した方向へと一目散に逃げ出した。


「これは死んじゃうっー!水と大木と土砂に埋もれる死に方は嫌よー!!」


先程まであった殺気は消え失せ、ただの幼体のサラマンダーとなったペトラは年相応の反応を見せながら未だに揺れ動く地表の上を飛んでいたが、先の魔法で魔力切れを起こしたのか地面に足がつきペトラはもう飛ぶことも出来なくなっていた。


「もう〜~!せっかく結果を残したのにサラマンダーで一番最初に死ぬ汚名を受けるのは嫌ーーっ!!!」


「死なせないから!!」


突如背中に感触を感じ浮遊感を覚えたペトラは足の裏から感じていた地面の感触が突然消えて反射的に落ちない様に身を縮めて丸くなる。


「パロメ…?」


「世話のかかる妹だこと!自分の尻ぐらい自分で拭きなさいよね!」


サラマンダーの長女が世話のかかる妹を掴み空へと避難する。自分達の無事を祈る他の姉妹達の下へと…

マモノ編が終わってシリアスな展開が無くなります。やっとコメディが書ける。ずっとシリアスだったからニコニコ出来る話を多めに書きたいンゴね…

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