エルフと実技指南
LiaのBravely Youという歌が好きです
「沼地攻略の為の実技指南を始めるぞ。」
午前9時30から始まったプロメアの実技は沼地攻略の為に必要なものでエルフとサラマンダー達の戦闘力を引き上げられると期待が出来た。
様々な戦争を経験し、この時代まで生き残っているプロメアからの実技となれば身が入るというものである。
「攻撃よりも防御を重点的に教える。防御魔法は己に使う事から自身について魔覚の感覚が鋭くなり攻撃魔法にも応用出来るようになるからな。」
「あ、聖霊様もそういう教え方でした。」
「聖霊も余と全く同じとは言わないが魔法生物に分類される場合がある。そう考えれば魔法に対しての考え方が似ていてもおかしくないのかもしれん。」
「ではどうします?プロメアがひとりで指導しますか?私も教えられる事はあると思うのですけど…」
「ルーテは余の助手を務めてくれ。この中で魔法を扱いに卓越した者が限られている。ルーテにはお手本として助力を願うと思うからその時まで待機しててくれ。」
「分かりました!」
「じゃあ基礎の基礎から始めよう。自身の魔素を操り斥力を発せられるように訓練を行なう。これが出来れば様々な攻撃を弾くことが出来るし魔素が散るリスクも減らせる。」
エルフ達の教えられた防御魔法は自身を魔素で包み込み物理的にガードする方法だがこの魔法は魔素が衝撃などによって散ってしまいリソースが減るというデメリットが存在した。
しかし魔素から斥力を発することが出来ればその力でガードする事が可能になる。
「身体全体に纏わせる方法は守備範囲に死角が無くなるが防御自体が薄くなる。故に用途によっての使い分けが必須。魔素をこうして厚く固めればその分防御力が向上する。ここまでは分かっておるな?」
プロメアが魔素を手全体に集めて分厚い層を作り出すと天に向けて掲げてから魔力を放出すると空気の弾ける音が耳を刺激し、空気の揺らぎが視認出来た。
「凄い…まるで大気全体が揺れているみたい。」
「本気を出せば今の余でもそうだな…半径100km程度の範囲にある大気を吹き飛ばす事も可能だ。」
「流石プロメア様です!我々もそうなれるよう精進致します!」
「パロメ、そう言ってくれるのは嬉しいがあまり上を見過ぎるでない。余のようになるということは決して良い事だけではないのだ。余がこれ程の力を手に入れたということは必要だったから故。つまるところこれぐらいの力が無ければ生き残れなかったという悲しい過去があったからだ。」
「プロメア様…」
「…なに、そんな悲しい顔をするでない。余は望んでこの力を得たのだ。それに今はサラマンダーとして生を受けている。これから楽しい人生を送るつもり故にお前たちはただ笑っておれば良い。それだけで余は幸せだからな。」
サラマンダー達の頭を撫でて笑みを浮かべるとサラマンダー達もつられて笑みを浮かべた。
「サラマンダー達は余のような魔法が使えると思うがどの程度出来るかは分からん。是非余に見せてくれ。」
「は、はい!!喜んで!!」
パロメ・ピューレ・ペトラ・ポーラの4人は張り切った様子で魔素を放出して例の板木の前に立つと誰からやるかと相談し合う。
「お願いあたし、あたしからしたい。トイレ掃除しばらく当番変わるから。」
パロメが皆のトイレ掃除を引き受ける事でパロメからやる事が決定する。彼女達が使用するトイレは汲み取り式便所のような造りのために掃除が精神的にキツい事もあってこの仕事は誰もがやりたがらない。
それを引き受けるという最早駆け引きにもならない提案にピューレ・ペトラ・ポーラの3人はすぐに争う姿勢を崩した。
「ではこのパロメが我が母親であられるプロメア様に自身の限界値をお見せ致しましょう。」
「フフッ、楽しみにしているぞ。」
畏まった言い方なのに母親に良い所を見せたいという子供らしい理由で張り切っているパロメに思わず笑ってしまったプロメアは上機嫌に尻尾を揺らしながら愛娘の成長を見届けようとしていた。
「この木製の球体を100メートル先まで飛ばしてみせましょう!」
パロメは立ち位置を調整し木が生えていない広場目掛けて球体を魔力によって吹き飛ばしてみせた。勿論パロメの魔素は球体には触れていない。魔力のみでの干渉で球体はかなりの速度で飛んでいき、何度かバウンドしても止まることなく結局140メートル先まで飛んでいった。
「え、ルーテ様よりも遠くまで飛んでいったよ?」
「当然でしょ?あたしらはあんたらとは血筋と素養が違うのよ!」
「いや、血筋は同じでしょ…同じ木から生まれたんだから。」
いきなりイキり散らされたエルフ達は面倒臭そうにしながら相手にせず適当に流す。そしてその様子を羨ましそうにルーズ・メーテ・クーデの3人が見ており、どうにかこの中に入れないだろうかと画策していた。
「あのですね…私もあれぐらい出来ますからね?あくまで皆さんに教える為に分かりやすくやったのであって…」
「母様、ルーズ分かってるから。」
「それ以上何も言わなくていいよ?」
「子供と競ってるみたいで見てて悲しくなる。」
「…」
悲しくなったのはダークエルフ達ではなく自分だと言えたらどれだけ楽だっただろうか。そう思うだけで口にしなかったルーテは自分で自分を褒めて自分を慰めるという長き人生においてもあまり経験がない悲しい体験をした。
そしてそんな事をしている間にも他のサラマンダー達も球体を魔力のみで吹き飛ばすことに成功する。どうやらサラマンダー達は生まれながら自然と斥力を生み出すことが出来るようだ。
「ピューレもペトラもポーラもパロメと似た感じか。魔力に差は無いのは分かっていたが魔力適正も同じとは本当に仲良しな姉妹なのだなお前たちは。」
「プロメア様、魔力に差が無いのなら魔力適正も大体同じなのでは?」
ピューレがプロメアに対して素朴な疑問を投げ掛ける。実際ピューレの言い分はおかしくなく、ここまでの話を鑑みても筋は通っているように思えた。
しかしプロメア、ひいてはルーテやダークエルフ達もピューレの意見には賛同せずに訂正を入れる。
「それは違うな。お前たちは魔力について、自分について、そしてお前たちの姉達とルーテに対して勘違いをしている。確かにお前たちの魔力は高い。だが全くといってその力を引き出し切れていない。」
「プロメアの言う通り。当方から見てもお前たちの魔力はあくまで資質としては高いだけで十全に引き出し切れていない。今の時点ではエルフとサラマンダー、それに当方を除くダークエルフで比較しても魔力適正は同等だ。」
「そうですね。私もそう思いますし、今のところ私の方が魔力適正は高いですからね。」
これにはサラマンダー達から反発があり、例えプロメアの言ったことでもエルフと同等と言われれば羽を広げ尻尾を逆立ててしまう程だ。
「それって我らがそこのエルフ達と同等の魔力適正って言いたいんですか?」
「そうだ。現段階では同じぐらいだな。まあ合計値という話でサラマンダー達の方が優れている部分もある。」
「…じゃあ劣っている部分があるってことですよね。」
「魔覚の敏捷性はエルフ達の方が現段階では高い。お前達、獲物を探す時に姉であるエルフ達に探してもらっているだろう?それはエルフが魔素を感じ取る感覚が鋭いからだ。」
心当たりがあるのか視線を逸らして居心地が悪そうにするサラマンダー達。プロメアの言う通りサラマンダー達は魔素を感知する能力が低い。これは竜の特性を受け継いでいる要素が大きく、竜はあまり魔素を感知する能力が高くない。
これは狩りに魔素を感知する必要がない程に戦闘力が高い事と、あまり他の種を感じ取れるほど近い距離感で過ごす事が無いことから来ている。
そしてエルフ種は狩猟をする民族。獲物を見つけなければ食い物に困る環境だった為、魔素を感知する能力が他の人種に比べてずば抜けて高い。
「だからこそお前達には期待している。お前達はまだまだ伸びるのだ。背伸びせず、驕らず、怠惰にならず姉であるエルフ達と一緒によく学び、よく失敗し、よく相談せよ。お前達は幸運なのだ。こんなに良い姉達は居ないぞ?もし竜として生まれていたら喧嘩で半殺しにしてくる姉や兄が居るんだぞ?」
「それってプロメアが妹や弟さんたちにしてたことじゃ…」
「母様、しっ。」
「ごめんなさい…」
最近長女として成長が目まぐるしいダークエルフにルーテは素直に謝罪を口にした。
「…分かりました。」
「全く…幼い頃の余を見ているみたいだ。こんなところ似る必要がないのに何故似て生まれてきたのだこのバカ娘達め。」
憎まれ口であっても笑みをたたえるプロメアは彼女らしくもあり、母親らしくもあった。
「ふぅ…ではそうだな。同じエルフ種でもかなり個性があるからそこを説明しようか。先ずは生まれた順でハイエルフからにしよう。」
「私ですか?」
「ルーテの魔力は本当に洗練されていてバランスが良い。魔力を表すパラメーターは満遍なく高く現段階ではサラマンダー達よりも魔素の力は高いな。勿論魔素の敏捷性もエルフ種よりも高い。」
「えへへ~なんかプロメアに言われると嬉しいですね〜。」
「次はダークエルフだが魔素の力はエルフ種の中で最も低い。しかし魔法適正が高く100%引き出しているのでエルフと大差ない。力の距離と魔素の敏捷性も高くはないが完璧にコントロール出来ているので現段階ではエルフとサラマンダー達よりも魔法適正は高いと言えるだろう。」
「やったー。」
「褒められたー。」
「姉としての面目立った〜。」
「そしてエルフ達だが魔素の力はサラマンダーとダークエルフの中間ぐらいで引き出している能力値がまだまだ低いな。だが力の距離と魔素の敏捷性は悪くない。この2つに関していえばサラマンダー達よりも現段階では高いな。」
「そうなんだ…私達のほうが高いんだ…!」
「リタ…良かったわね。」
「私達のほうが早く生まれて狩りをしているからかな?」
「どうだろう。個体数がまだ少ないから比較が出来なくない?それでも嬉しいんだけどさ。」
エルフ達もまだ妹達よりも魔法適正が高い部分があると知れてホッとしたようだ。
「最後にサラマンダーになるが魔素の力はエルフ種で一番だ。しかし力の距離と敏捷性はな…これは正直なんとも言えない。余は経験値と魔素の量でカバーしているから断言は難しい。現段階でいえばそれなりといったところだ。」
「それなりですか…」
「生まれたばかりの童子が何を言うか。プライドを捨てよ。それがお前達の成長の邪魔をしておる。」
「…努力します。」
珍しく落ち込んだ様子のサラマンダー。資質は間違いなくエルフ種で一番なのにまだその力を引き出し切れていない事をかなり気にしてしまっているようだ。
「…仕方ない。ここでこれを言うのは追い詰めてしまうかもと思っていたがお前達も気付いている事だから正直に言ってしまうぞ?…サラマンダーはあり得ない進化の過程を遂げた種族故に余ですら分からん事が多い。そして生物として問題点も抱えている。」
ルーテとエルフ達はここで言うのかと驚く。かなりデリケートな部分でセンシティブな内容だった事から口にはせずにお互いに気を使い合えばよいと考えていた。
「ダークエルフ達もそうだな。特に当方は生まれたばかりの頃は力のセーブが効かず生き物として致命的だった。」
「今もじゃないですか…?」
「それは違うぞルーテ。何故当方が家を建てたりしていたと思う?」
「え、楽しいからじゃないんですか?」
「確かに楽しんで行なっている。だがルーテ達に危害が及ばないように訓練で行なっていたんだぞ?」
「えっ!?そうだったんですか!普通にセカンドライフを楽しんでいるだけだとばかり…」
「当方をなんだと思っているんだ?」
ちゃんと自身の欠点を克服する為に毎日訓練を積んでいたアズ。しかしルーテにその事を理解されていなかった事に今更気付くのだった。
「ーーーまあそこはもう良いだろう。だがエルフ種…というよりもアノン星に定住していたアノン星人と呼ぶのが正しいか。アノン星人は他の種との間に子を儲けられる特殊な種族ではあるが、順当な進化を辿らずに新たな種を生み出すので問題が生じている。余もサラマンダーとして生まれたが生物としてあり得ない欠陥を感じる場面がある。」
「ということだ。当方やプロメアがそう感じているということはこの方法での種の誕生には欠陥があるということ。だからパロメ、ピューレ、ペトラ、ポーラの4人はあまり気にし過ぎるな。これはお前達が生まれる前からあった問題。お前達で解決しようと考える必要はないし抱える必要もない。」
「私もハイエルフとエルフしか居ない環境下が長かったのでダークエルフとサラマンダー達のことはアズとプロメアに任せっきりになってしまい申し訳ないです…。これは大人達側の問題ですのでパロメとピューレとペトラとポーラは何か困った事があれば相談してください。私に言うのはプライドが邪魔して難しいかもしれませんが、私に文句を言うように本当に気軽なく言ってくださいね。」
「ルーズも相談してほしい。というか絶対にメーテやクーデよりもルーズに言ってほしい。なんでも相談に乗るから。」
「ルーズはマウント癖あるからオススメしない。長女面してウザいよコイツ。メーテにしなさい。」
「そう言って良い奴感出すからこのふたりは駄目だよ。クーデならどんな悩みも解決出来る。」
気を使われている…。サラマンダー達は自身の高過ぎるプライドが刺激され、それが原因で家族の言葉が中々受け入れ難くて素直にありがとうと言えない。
「これ多分私達に言ってくるパターンじゃない?」
「私もそう思う。」
「私達経由…でいいんじゃない?」
「お姉ちゃんだしね…」
そしてエルフ達は多分自分たちに言われるんだろうな〜と察し、ルーテ達と情報を共有する必要があるとアイコンタクトで伝え合う。
「ーーーもしかしたら当方の方でいくらか出来ることがあるかもな。」
廻廊を通じて元の身体であるアズテックオスターに意識を向けたアズは生命の樹にアクセスしとある機能を呼び起こす。
「現在進行系で生命の樹の解析を行なっているが今しがたある機能の解析まで至った。この機能は我々エルフ種に対して操作が可能のようだ。」
「操作…だと?」
「プロメアの協力が必須だがもしかするとエルフの身体内部の造りを弄れるかもな。」
「なんかヤバそうな事言いだしたんですけど…」
「別に内蔵の位置を変えるとかの話ではない。魔法生物であるドラゴンを解析出来ているのでそのデータからエルフ達の身体に魔法の一部を植え付けられるかもという話だ。」
「もっとヤバそうな事言い出したんですけど…」
「それはつまり余のように生命活動を魔法で行なえるようになるということか?」
「いや、出来てもそれはしないつもりだ。それでは別問題が間違いなく生じる。当方が言うのはトライバルタトゥーのような補助魔法を体内に仕組むということだ。」
「私達のしているこの魔法とかを体内にですか?」
腕を出して時計を見せるエルフ達。これはダークエルフ達が設計して作り出した魔法で皮膚に定着させている魔法だがこれが体内となるとどうなるのか不安に感じていた。
「勿論形や種類は異なる。使うのはダークエルフの魔法ではなく竜種の魔法をエルフに施す。」
「ふぅー…余でも出来ない事を簡単に申すな。悪影響があったらどうする?」
「それはデメリットにならない。」
「…問題が発生すれば死んで身体を変えればよいと?」
プロメアから殺気が漏れるとプロメアの近くに居たサラマンダー達が一目散に逃げ出してエルフ達にしがみついた。
因みにエルフ達もサラマンダーにしがみつきお互いを守ろうと密集し始めた。
「そうは言わんがそうなるな。しかしこういった問題を早い段階で解決することは後の子供達のことを考えればやるべきだ。」
「分かっている…。だがそれなら…」
「お前では意味が無い。お前はサラマンダーではあるがサラマンダーとはいえない。お前はプロメアという竜であり、竜として生きてきた経験が問題を己の知恵と感覚で解決してしまっている。故にお前を実験体にしても何も意味が無い。」
今となっては珍しくなったアズとプロメアの対立。このふたりに入れる者はルーテしか居なかった。だがこの間に入る者達が現れる。
「あの…いいですか。」
「リタ…止せ。それは優しさではない。自己犠牲は優しさではなくただの押し付けだ。」
リタは今日初めてプロメアからとても冷たい声で制される経験をした。しかし彼女はめげずに言葉を紡いでいく。
「…それでも、言わせてください。私は…妹達に苦労してほしくありません。」
「リタ、余は止せと言ったのだ。二度言わせるでない。」
口調は厳しいものでありある種の拒絶だった。しかし表情はそれ以上は言わないでくれと頼んでいるように悲痛な面持ちだった。
「…私もリタと同意見です。やれることはやるべきだと思います。」
「ツイン…お前まで。」
「わ、私も!みんなと同じ意見…です!」
「…じゃあ、まあ…私もそんな感じで。」
「ミロもアザもか…」
リタが言うなら私達もと言い出すのは分かっていたことだ。そして一度口に出せば引かないことも分かっている。
(何故なら余はこの子らの母親だからな…)
「はぁ…お前達は本当にルーテに似ておるな。全く…どうやら余の負けのようだ。これが惚れた者の末路か。」
頭をガシガシと掻くという非常に珍しい行動に出るプロメアをサラマンダーたちはただ静かにエルフ達にしがみつきながら見ていた。
「…なんか、話が凄い方向へと向かいましたね。」
「同意するぞ我が伴侶様よ。どれもこれもアズのせいだ。」
「全て当方に押し付けられても当方なりの解決方法で行なってしまうぞ?」
「やめてください。」
「やめろ。」
急激な環境の変化にはアズやプロメアですらすぐに適応が出来ない。その点、ルーテは異常だとアズとプロメアは同じ思いを抱いていた。
『ルーテは精霊とエルフとの混合種、つまり当方たちのような混合種と同じ筈だが、欠陥らしき点が見られない。』
『余もそこが気になっていたが、お前も気付いたのだろう?恐らく我が伴侶様は、ハイエルフたちは調整を受けている。ルーテだけではなくハイエルフとエルフ達全員がな。』
『だがルーテの反応からして気付いていない様子だ。相当長い時間を使い気取れないよう徐々に調整したのだろう。それこそ進化の過程のように。』
『精霊…とやらがやったと思うか?』
『不明だ。そういったデータは見つけられていないし、そもそも生命の樹内部にはそういったデータは無い可能性が高い。わざわざ残しておくような記録ではないからな。』
『そうなるとサラマンダーに調整を行なう事はルーテ達の種族で鑑みればおかしなことではないということか…』
『そういった機能が生命の樹にある時点で確定だろう。しかしそれにしても妙だ。機能は載せておいてルーテ本人が知らないとは。』
『お前が言うのならそうなのだろう…。だが余として受け入れ難い事実だ。』
『しかしやらなければ困るのは子供達だ。お前のような竜からサラマンダーになった特殊な個体を除けば他の個体達は長く苦しむことになる。』
『竜の本能の事を言っておるのだろう…。余とて考えていない訳ではない。娘達からそれとなく聞いているし、何回か言い聞かせている。』
プロメアはサラマンダー達に家族が害されても冷静であれとキツく言い聞かせていた。竜の頃とは違いエルフ種は何度でも生まれ直せる異端な種族。真の意味で害されるということはない。
『だがそれは精神面のケアでしかない。環境と境遇は変わらずそのままだ。』
『分かっている…分かっているからもう申すな。』
プロメアは時間があれば解決出来る問題だと認識していた。サラマンダーは魔法適正が高く、今のプロメアのように生物としての欠陥を無視することがいつかは出来るようになる。
例えば精神面の問題も魔法で対処出来る事で、精神面も結局は脳の問題であり身体の問題だ。脳から生まれる様々な脳内物質を魔法で生み出し、感情のコントロールを行なえれば精神的不安は取り除くことが出来る。
『はあ…余は未だに竜なのだな。人の事が実感として感じ取れない。』
『魔法生物であるお前には難しいことかもな。ひとつ知りたいのだが魔法生物として魔法でのメンタルコントロールはいつ習得した?』
『そんなのもう覚えておらん。大人として認められた時には出来ていたように思える。まあ経験を積み鈍くなっただけのように思えるがな。』
アズとプロメアの秘密の会話がここで途切れる。長い時間話していれば他の者に気付かれてしまう可能性があるからだが、そもそもふたりだけで決めて良いことでも無いのでいつかはルーテなどに意見を求めなければならない。
「…まあ、エルフ達がこう言っているのだ。当方としては問題の無い範囲内で留めるつもりである。それに沼地攻略に役立てそうな魔法を授けられるかもしれん。」
「そこで沼地攻略の話を出すのは卑怯ですよアズ。」
「交渉術と言ってほしい。」
「はあ〜〜〜…もう私はいいです。皆さんもそれでいいんですか?私は皆さんの意見を尊重するつもりですけど?」
プロメアは未だに納得していない雰囲気だが否定もしない。ダークエルフ達からは意見が出てこないが傍観というより否定も肯定もしないスタンスのように見える。
そしてエルフとサラマンダー達が肯定的なのは見なくても分かることだ。
「じゃあ…そういうことで一旦この話はおしまいです。アズもいきなりは無理ですよね?」
「そうだな。今も解析している途中だ。可能となったらルーテに知らせる。」
「分かりました。では指導に戻りますよ。今日の本来の目的はこっちなんですからね。」
「分かっている。当方として邪魔をするつもりはない。」
そこで会話は終わり本来の目的へと戻っていく。未だに様々な問題点がある彼女達だが、今はただ目の前の問題を解決する為にプロメアを中心に魔法について学んでいくのだった。
特に書くことないのでブクマおねがいします。




