エルフと赤竜人たち
samfreeのマインドボイスという曲が好きです
エルフ達とルーズ、メーテ、クーデの3人がローテーションを組み、狩りや森の調査などの業務が滞りなく進めてくれたおかげで私達にある程度の余裕が生まれました。ひとえに子供達の頑張りのおかげです。
本当に私は恵まれていると思います。こんな良い子達の親になれたのですから。
しかし平穏な日常というものは長く続かないものです。それは私が未来に希望を感じ、いつもよりも早い時間(8時半)に起きた何気ない朝の事でした。
「ルーテよ。余と子作りをしよう。」
突然プロメアに皆の前で子作りをしようと言われた私はどうしようかと考えましたが、恐らくこれは断れないんだろうな〜と分かっていました。
だって断れる理由がありません。エルフ達のおかげで今の私達には余裕があります。それにプロメアは子供大好きドラゴンです。それを断るということはプロメアを酷く傷つけてしまう行為に思えます。
「…4人までですよ。」
それが私から出せる精一杯の譲歩だった。
「クフフッ!よもや余に伴侶が出来、しかもその者と子供を儲けられるとはな。長く生きてみるものよ。」
「私もあのプロメアとの間に子供が出来るなんて思ってもいませんでしたよ。だって理由が分かりませんもん。数百年前の自分に言っても信じなかったでしょうね。」
子作りと言っても実際にまぐわう訳ではなく、生命の樹に自身の因子を送ってその間に種を儲けるというのが彼女たちの子作りであり、それを理解しているふたりは生命の樹の前までやってきた。
「私達に妹が出来るんだよ〜!どうするどうする?」
「そりゃ可愛がるに決まってるじゃない!」
「髪型のセットとかお互いやってあげたりとか夢だな〜。」
「狩りのやり方とか教えてあげないと!」
遂に念願の妹が生まれるとエルフ達は嬉しそうに笑い合う。末っ子であった為にずっと欲しかった妹たちと間もなく会えるともなればお祭りムードで騒ぎ出すのも納得だった。
「またルーズの妹が出来る。」
「メーテの妹が生まれる。」
「クーデの妹だよ。」
「「「はあ?」」」
「やんのかおお?」
「やるかって言ってんの。」
「久々にキレちまったよ…」
ここはここで馬鹿騒ぎをし始めるが大体いつもの事なので誰もがスルーをしていた。
「待て、データを取る。」
そして一人だけ別の方向の好奇心を発揮するアズがアズテックオスターの操作をしてデータを取ろうとしていたが、まあここもいつも通りなので誰も触れずにいた。
「聞いておきたいのだが余とルーテとの間の子供は赤竜人種と導く者のハーフなのか?」
「ああ…それは正直なところ分かりません。前にアズとした時は暗き者が生まれました。ですが一応ハイエルフである私の因子は入っているらしいです。」
「そうか。ならばその理屈でいうと赤竜人種の子供が生まれてくる可能性が高いのか。」
「そう…なるんですかね。まだアズとしか試していないので分からないです。」
「ならば今から試してみようぞ。ハイエルフでもサラマンダーでも余とルーテとの子供であることは変わらん。どちらでも余は愛すると誓う。」
ルーテとプロメアのふたりが生命の樹の前に立つ。ルーテは左手を、プロメアは右手を前に出して生命の樹に触れるとその場の空気に緊張感が走った。
「こちらの準備は終わった。いつでも始めてくれ。」
アズは正確にデータを取ろうとアズテックオスターの機能を呼び起こし生命の樹の状態を記録し続ける。
「…では、行きます。幼体で良いですよね?」
「ああ。この子達のような年頃だと嬉しいがルーテに任せよう。」
「分かりました。出来るだけ希望通りになるようにやってみます…」
生命の樹全体が振動すると同時に根が動き出し膜が生成される。その膜は薄い赤褐色のような色合いでプロメアの時と似た膜の張り方をしていた。
「なるほど…やはりこうなるのか。」
アズは膜が生成される前から生まれてくる子供達の種を把握していた。どうやら法則性が確かに存在し、ハイエルフの因子が入っているものの相手の種に引っ張られる事をアズは記録する。
「フフフッ…!遂に余たちの子供が生まれるか!!」
「あ〜…綺麗な赤色をしてるな〜…エルフの色と違うな〜…」
プロメアとルーテは邪魔にならないように生命の樹から離れる。プロメアは今から生まれようとしている我が子達に心を躍らせ、その隣に立つルーテはどうか良い子でありますようにとお腹を擦りながら祈っていた。
そして遂にふたりの子供たちが生まれる。膜を突き破ってみせたのは金属のような光沢を持つ二対の黄色の角。そして膜が破れると赤色の髪が見えて褐色の肌が露出した。
髪の長さは胸の下まで伸びていて根元は直毛だが顎よりも下になるとウェーブがかかり、肩の辺りからは空気を含んだ様にふわりとした質感でとても上品に見える。
これだけでプロメアと同じ赤竜人種であることは明白だったが、彼女と明確に違うのはその背丈だ。
プロメアの身長は198センチメートルとエルフ種の中でずば抜けて高く体格もその身長に見合うものだが、新しく誕生した赤竜人種達の身長はエルフ種の幼体達とそこまで変わらないものだった。
体格も身長に見合ったもので筋肉質だが線のように細長い指先と凛とした出で立ちからプロメア程の威圧感は感じられない。
だが顔の全容が露わになるとやはり血の繋がりを感じるものがある。膜から出ようと食いしばる口からは鋭い犬歯が見えてつり上がる目元からは高圧的な印象を受けた。
そして背中から生えるその羽も尾骶骨から伸びる尻尾もプロメアと同じもので赤竜人種の特徴そのもの、それに胸に仕舞われた魔素袋も発達しているのか背格好が似たエルフやダークエルフ達よりも胸が大きくハイエルフであるルーテよりも少し小さい程度と幼いながらも高い魔法適性を有していそうだ。
「かは…」
口を開けて呼吸した際に漏れた声は獣のような唸り声であり、同時に鈴の音のような透き通った声だった。まだ空気に触れたことがない、穢れを知らない少女の声がエルフ達の鼓膜を揺さぶる。
そして彼女たちの目が開けられると陽の光と同じ色合いの瞳が見え、生気と高貴な面持ちを感じさせる特徴的な瞳が露わになると自然とその瞳に視線が集まっていく。
「すぅー…」
肺に新鮮な空気を取り込んだ彼女達は羽を広げて根から這い出ようと足を動かすが膜がまだ変質しておらず上手くいかない。
膜は空気に触れた箇所から変質していき衣服となるが彼女達の場合はプロメアと同様に少し特殊な意匠のデザインとなっていた。
エルフ種の服は首元が緩いものが多い。何故なら膜を破った際に最低でも頭部一つ分のスペースが生まれるからだ。しかし赤竜人種の幼体たちの首元、つまり襟の部分は伸縮性が富んでいるようで肌に密着し、首の大部分が服に覆われていた。
そして胴体部分も同様に身体のラインに沿って服の形が形成されていき、それが腰の付近まで続く。
腕の袖口はフリルのように広がり彼女達の手首まで覆っているが、特殊な細工が施されている訳ではなく単純にエルフ達の着ている服のような質感になっているだけのようだ。
しかしエルフ達のとは違い紅い色合いの服は活発的な印象を見る者に与え、人によっては苛烈さをも覚えさせる。だが決して粗暴な印象ではなく可憐でいて尚且つ猛々しさが混在した炎のような色合いだ。
そして腰より下、膜の部分が変質して広がりを見せると非常に短いスカート部分が形成された。どうやらワンピース型のドレスといった服装でプロメアと同じく気品を感じるデザインになっている。
それに背中の部分に生地が無い所もよく似ており、そこから尻尾の付け根までソリットのように裂けていた。羽を動かしやすい作りになっている点は非常に酷似していて赤竜人種の特徴的な作りに思える。
だがスカート部だけはプロメアとは違い裾が短い代わりに尻尾の根元にはしっかりと生地に覆われていて大事な部分はちゃんと隠されていた。
それにワンピースの下は赤色のローライズのショートパンツを履いているのでスカートが捲れても問題はない作りだ。
そして根から這い出た赤竜人種たちの足元を見るとロングブーツよりも丈が長いサイハイブーツが履かれていて他のエルフのものとはまた趣きが異なったものとなっている。しかし足の指先はプロメアと同様に爪が長い為か外気に晒されていてつま先に生地が存在しない。
「おおっ…!!よくぞ生まれもうたっ!!!」
プロメアが両腕を広げて生まればかりの娘たちを迎え入れようとする。
「無事に生まれてくれてありがとうございます。私達の言葉は分かりますか?」
ルーテは生命の樹から知識を与えられているのかを確認した。これはエルフが生まれた際にする恒例行事のようなもので、知識が与えられなかった場合ということはルーテの記憶の中では存在しない。
なので本当に言葉が通じないといった心配しての確認ではなかったが、クセが強いかどうかの心配はしていた。ダークエルフとエルフの幼体達のクセというものはもう知っている。しかし赤竜人種の幼体は初めてということもありルーテはそこだけを少しだけ心配をしていた。
杞憂に近い心配だったがそんなルーテの心配は的中することになる。赤竜人種は完全に覚醒し周囲の様子を確認、そして自身に植え付けられた知識をもとに行動を思考し実行に移す。
先ず根から這い出た赤竜人種たちはプロメアの下まで歩いていき…
「プロメア様、我らが母上様。我々に拝謁をする許可を頂けるでしょうか?」
膝をつき頭を深く下げてプロメアに許可を求めた。この一連の動きからダークエルフともエルフとも違う感性を有していることが判明し、ルーテがお腹を擦り始める。
(うわぁ~…また一癖も二癖もあってキャラが濃そうな娘達が生まれてきましたね…。)
「ふむ…子が親に拝謁する許可を求めるものではない。取り敢えず頭を上げい。余にその顔を見せてくれ。」
「はっ、しかし我々は半分とはいえ竜。竜の王にそんな不遜な態度は…」
「くどい。余が良いと言ったのだ。言うことが聞けないのは耳がよく聞こえないからか?それとも余の言葉の意味を理解する頭が無いからか?」
「「「「はっ!プロメア様の言う通りに致します!」」」」
普段のプロメアからすれば非常に珍しい態度と口調を使って赤竜人種達に言い聞かせるが、その様子を見たエルフ達は初対面でのプロメアを思い出した。
初めてこの星に降り立った際は今のような態度だったと記憶していたエルフ達は話に入ることが出来ず傍観者になるしかなかった。
「…これは難儀するやもしれん。ルーテ、先ず最初はどうするのだ?余はエルフ種の文化には疎い。出来ればルーテが進行してくれると余は有り難いが。」
「ああ〜なら自己紹介からしましょうか。私達の名前は恐らく知識として与えられているとは思いますがこれから一緒に暮らす家族となるので軽い自己紹介はしておきたいですね。」
「ならば先ずはルーテから頼む。」
「わ、私ですか?まあ一応は種の代表者ですし親でもありますからね。…ごほん、ええー私はルー・テ・メーデと言います。長いのでルーテと呼んでください。あ、勿論みなさんの親なのでお母様でもいいですよ!」
ルーテが挨拶がてら赤竜人種の顔を見比べようとしたが、気の所為か皆が自分のことを非常に下に見ているような視線を向けている事に気付く。
(ん?気の所為…ですよね?だって私ハイエルフですし皆さんの親ですし種の代表者ですし…???)
「では次は当方がしよう。当方は暗き者のアズだ。好きに呼ぶといい。」
赤竜人種の幼体たちは生まれる際に植え付けられた知識からアズがあのアズテックオスターである事を認識、そして親であるプロメアと同等か、もしくはそれ以上の強者の威圧感を感じ取ると…
「アズ様はじめまして。赤竜人種の末席を汚すまだ名も無いただの童子ですが、かの有名なアズテックオスターとお会い出来て光栄ですわ。」
非常に丁寧で、そして上品な受け答えをする赤竜人種の幼体達にルーテとエルフ達は驚愕していた。
そして次はダークエルフ姉妹達の番になり我先と自己紹介をし始める。
「ルーズだよ。はじめまして妹達。愛してる。」
「メーテだよ。ルーズよりも妹ちゃん達のことを楽しみに待ってたよ。本当だよ。」
「クーデは生まれる前から待ってたよ。あとこのふたりはイジワルで性格おわってるから仲良くしなくていいよ。本当だよ。いやマジで。」
酷い自己紹介ではあったが、ある意味ほんとうの自己を紹介しているとも言える。そんなクセ強姉たちに赤竜人種達は…
「フフっ…お姉様方ったら。そんなに楽しみに待ってて下さったなんて嬉しいです。」
100点の返しをして場を落ち着かせることに成功した。あのダークエルフたちを!?とでも言いたげな表情でその様子を見ていたルーテは先程の自分に見せた態度はやはり見間違いか気の所為だろうと自分に言い聞かせる。
しかし次がエルフ達の番になると先程の態度は自分の勘違いでは無かったと知ることとなる。
「あは!はじめまして!私は…」
「気安く話しかけないでよエルフの分際で。」
場の空気が一瞬にして凍りつく。先程の上品な立ち振る舞い方をしていた赤竜人種たちと思えないような高圧的な態度を取る妹達にエルフ種は全員が固まった。
「…あは、あははは、き、聞き間違いかな〜???えっとね、私は…」
「だから気安く話しかけないでもらえません?」
「これだからエルフ種は…」
「我々よりも早く生まれただけの存在がなにを勘違いしたのかは分かりませんが非常に不愉快ですわ。」
「あーやだやだ。どちらが上かも分からないなんて動物以下ね。」
口元に手を当ててヒソヒソと話し合う赤竜人種たち。その態度から明らかな挑発と侮蔑を感じたエルフ達はどこからともなく弓を取り出すと…
「あはは★こいつらヤッちゃおうか♪」
「ひとり一人までだからね★」
「解体したら生命の樹の栄養になってもらおうかな♪」
「ゴミは吸収出来てもクズはどうかな~???試してみようっと♪」
狩猟本能が刺激されて妹達を狩りの対象と認識して狩ろうとし始める。流石のコミュ力つよつよエルフ達でも我慢が出来なかったらしい。
「ふう…、ルーテよ。少しよいか。」
「えっ?はい!どうしました…?」
「そなたが緊張してどうする。」
「き、緊張なんかしてません!」
どう見てもプロメアの態度を見て緊張しているルーテを連れて少し離れた場所で周りに聞こえない程度の声量で会話をし始める。
「ルーテよ、どうやら我が子供らは竜としての特性を強く引き継いでいるようだ。」
「ああ〜…そんな感じでしたか。」
「そのせいで余のことを親というよりも竜の王として認識しているようだ…。中途半端に知識がある故の弊害と見るべきだろう。」
「…卵から育てていないからですかね?」
「分からん…流石の余も初めての事で断言は出来ん。」
あのプロメアでさえ親になったことも赤竜人種の幼体が生まれたことも初めてという事もありどうしたらよいか決めかねているようだった。
「で、でも悪い子たち?ではなさそうですし???」
プロメアに耳打ちをして赤竜人種の幼体達の様子を一瞬だけ横目で見たルーテはその場から飛び跳ねそうになる。
なんと赤竜人種達が明らかにルーテに敵意の目を向けていたのだ。
「プロメア様に馴れ馴れしいですわ…!」
「エルフ如きがプロメア様に近寄るなど言語道断よ!」
「我らにもエルフの血が流れていると思うと吐き気がするっ!」
「何故あのような貧相な女が良いのか検討もつきません。本当に嘆かわしいですわ…」
かなりルーテへのヘイトが溜まっているようで実際に不満を口にする赤竜人種たちにダークエルフ達ですら目を見開いてどうしたらよいのか戸惑っていた。
「ちょ…!なんであんなに恨めしそうに見られているんですか私!?」
「これは…少し躾が必要か。ルーテよ、そこで待っているといい。」
「えっと…プロメア?」
プロメアは赤竜人種の持つ独特な価値観に懐かしさを感じていた。遥か昔の記憶、自分がまだ幼い頃にまで遡る必要があるほどの大昔の記憶にこれと似たシチュエーションが存在した。
それは生まれて間もない上下関係をまだ知らない弟と妹に生意気な態度を取られた時と同じもの。プロメアは目の前の赤竜人種を人種ではなく竜種として認識し、教育を開始する。
「貴様ら…いま余の伴侶に牙を向けたか?」
その場に居る全員が森が一斉にざわついた様な感覚に襲われた。
「あ、あの…」
「向けたかどうかを聞いている。」
「っ!」
普段の子供たちに接する態度とは程遠い、あまりにも有無を言わせないプロメアの話し方にエルフとダークエルフの幼体達は自分達のことを言われている訳でもないのに赤竜人種の幼体と同様に背筋を伸ばした。
「貴様らは勘違いしている。余はもう竜の王ではない。そして余はルーテを対等以上と認めている。それに異を唱えるということは余に牙を向ける事と同義。つまり余に楯突いているということよ。」
身長の高いプロメアが高圧的な態度を取って詰め寄る姿は生まれて間もない赤竜人種たちにとって恐怖そのものだった。
「なあ、貴様らはなんだ?竜という生き物の何を知っている?もしや貴様らが竜とでも?…あまり余を失望させるではない。これと血が繋がっていると考えるだけで吐き気がするとは正に今の余の心境よ。」
赤竜人種の幼体達は恐怖のあまり尻もちをついて4人で身を寄せ合う。
「貴様らはエルフ種だ。そして余もエルフ種。それから貴様らの姉たちもエルフ種だ。ここにはエルフ種しか居ない。分かるか?ここに竜の価値観を持ってきても意味はない。そんな事も分からずに竜を名乗るとは…竜も落ちたものよな。」
ここまで来ると見ているこちらも泣きべそをかいてしまいそうになるが、実際に泣きべそをかいているのは赤竜人種の幼体たちだけで、先程までの高圧的な態度は最早見る影も無い。
「これ以上余を怒らせるではない…良 い か ?」
「は…はひ…っ…もうわけ、ありませんでした…!」
「ーーー良し、分かればよい。」
両腕を組み前屈みで教育を施したプロメアは上体を起こすと実に満足そうな表情で浸り始める。実はこういった反抗期の子供を教育することが長年の夢であったプロメアはもうこの夢は叶わないものだと半ば諦めていた。
理由はダークエルフもエルフも皆がとても良い子だったからだ。誰もがお互いを尊重し合って仲が非常に良い。しかもある程度成長しているので反抗期はもう終わってしまっている可能性もあった。
だからこそこうして反抗期の子供に教育を施せたことは幸運に近い。心の中では実の子供たちが反抗期で生まれてくれるとは!と大いに喜んでいる。
しかしそんな事を知らない他の者達からすれば一部を除き驚き半分恐怖半分といった反応だった。
「ーーー勘違いしないでほしいが竜の教育はこういうもの故、あまり気にするでない。直にこの子等も分かるであろう。エルフとして生まれた事が幸せであることを。」
「いえ、初めて会った時のプロメアってそういえばこんな感じだったな〜と。」
「止めい。アレは余も警戒していたのだ。そして同時に愚かで無知で傲慢だった。もう忘れるがよい。」
プロメア自身は今の自分が気に入っているので竜の頃のような態度はもう取りたくないと考えていた。
「私達が初めて出会ったことをですか?」
「ーーー撤回する。忘れたら承知しないぞ。」
「はいはい。」
やっといつものプロメアに戻ってくれたとルーテ刃安堵のため息を吐くと4人で固まって泣き続ける我が子の下に向かう。
「皆さん、まだ生まれてばかりで右も左も分からないと思いますがここに居るのは家族だけです。ですからあまり上とか下とか考えずに自分らしく過ごして欲しいというのが私の思いですけど、皆さんがどうしたいのかは自分たちで決めてください。」
「…」
「無理に馴れ合う必要はありません。これからエルフ種の数が増えればどうしても相性が良くない子達も出てきますし、そもそも関わることのない子達なんかも出てくるでしょう。でも今はみんなが目の届く範囲に居ます。だから最初だけでも家族らしく過ごしてはくれませんか?」
ルーテはしゃがみ込んで右手を差し伸べる。親として、ハイエルフとして、種の代表者として申し分ない立ち振舞を見せるルーテに赤竜人種は顔を上げてその手を…
「あんたに憐れられるなんて真っ平御免なんですけど。」
平手打ちではたき落とすとそそくさと立ち上がってプロメアの背後に回っていった。
「お前達な…」
あまりの態度にその場で固まるルーテと呆れ果てて頭を抱えるプロメア。そしてこれからのことを考えて頭痛に悩むエルフ達とカオスがこの場を支配していた。
「あたしらの親はプロメア様だけなんだから!」
「そうよ!母親ヅラしないでよね!」
「あっかんべー!」
「お母様!あっちに行きましょ!」
そうして無理やりプロメアを赤竜人種の幼体たちが連れて行ってしまうと、ルーテは立ち上がり先程差し伸べてはたき落とされた手を握り拳に変えると満面の笑顔でこう言い放った。
「あのクソガキの教育は任せてください。とっっっても良い子にしてみせますから。」
こうして最悪ともいえる初対面を終えたエルフ達は新しい問題児を加えて新たな門出を飾ったのだった。
やっとこの章の起承転結の承を書くことが出来ました。ここからは作者的にも書くのが楽しみなので時間を割いて書いていきたいです。




