エルフと交信
a flood of circleの理由なき反抗という歌が好きです
ルーズ達が狩りへと出かけている間、ルーテ達はプロメアによる熱心な教育を受けていたが、その時間も過ぎ去ると誰もが暇を持て余していた。
「暇じゃ。余は暇である。やはり余も付いて行くべきだったか。」
「プロメアが付いて行ったら狩りにならないじゃないですか。」
「獣共に感知されない上空から娘たちの様子を伺えばいい。」
星の外からルーテ達を見つけたプロメアならば大気圏外からでも可能そうだったのでルーテは困った笑みを浮かべる。
「本当に子供が好きなんですね。それで独り身だったなんておかしな話なんですれど。」
「なんだ。余の女性関係や男性経験が気になるのか。」
「なんでそんなうれしそうなんですか…」
プロメアはルーテが自分の過去について気になったことに関し、嫉妬の想いを敏感に感じ取ったが、別にルーテは嫉妬を抱いて聞いたわけではなかった。
「まあ余の伴侶として余自身の過去は気になるだろう。しかし安心せい。余は清い身体だ。今の身体も前の身体も。」
「そんな話聞きたくないです…」
「まあまあそう言うな。興が乗った。余の昔話をしてやろう。」
「おおおお〜。」
「楽しみ〜。」
「子供に聞かせられる内容だけに留めてくださいね…」
ルーテは力なく椅子に着席し、その隣に座ったアズたちはプロメアの昔話を聞き始めた。
「そもそも余が何故子供たちのことが好きかという話だが、それは余の種がそういう種だからだ。ドラゴンは子供を大人達全員で育てるという習性を持っているが、赤竜種もこれに当てはまる。」
「へーそうなんですね。」
「だが余の祖先、つまり生まれ故郷の惑星で暮らしていた頃は放任主義で卵を産んだら放置していたらしい。」
「では何故子育てをするようになったんですか?」
「それは周りから狙われるからだ。」
「…ドラゴンを狙う生き物なんているのですか?」
「いる。それはもう雑菌のようにな。殺菌してもまたどこからか現れてドラゴンの子を奪おうとする。」
この話を聞いてルーテはまだ半信半疑に聞いていた。それもそのはずでドラゴンとは恐怖の対象、誰もが恐れる最強の生物。そんな生物を狙う者はあまり想像がつかない。
「ドラゴンは血の一滴まで優秀な触媒になる。それを狙う者達が後を絶たないが、なら狙うのは成体のドラゴンか?それとも…」
「あ、卵か生まれたばかりの幼体を狙う…」
「そうだ。まだ母星に居着いていた時は外敵は居なかった。だが奴らは星の外からやってくる。そして竜の住む星という情報はあっという間に広がってもうそこでは暮らせなくなった。これが余達の歴史だ。」
赤竜種が何故住みやすい星を離れて宇宙を放浪することになったのかをプロメアはルーテ達に説明した。
「だから竜は卵を産み育てる期間を環境や状況によって決めるし、余達の世代は名も無い塵の固まった小惑星の中で生まれた。」
あの竜の王とも云わしめたプロメアが名も無い小惑星で生まれたなんて誰も信じないだろう。
「だから竜には…そうだな、ここでは幼馴染…と呼ぼうか。同じタイミングで卵を産むことから姉弟とは別に同年代の個体が多く居る。そしてそういった子達は大人達が全員で育てるのだ。」
「はへ〜。」
「ふへ〜。」
メーテとクーデのふたりは知識欲が満たされ高揚としていた。
「それで余達は全員で19…。そう19もの赤子が生まれた。だが成体になれたのは15だけだった。…何故かは言わなくても分かるな。まあドラゴンが子供を想う気持ちというものは他の種と比べて大きい。そうやって育ててもらったし、余も幼馴染達が産んだ子供達を守ろうと戦ったりしたものだ。」
プロメアは少し遠くを見て昔を懐かしむように、思い出を噛み締めるように語り終える。
「…貴重なお話、聞かせてくれてありがとうございます。」
「「ありがとープロメア様。」」
「礼には及ばん。余も久し振りに仲間たちの顔を思い出せた。お前達と出会う前は昔話が出来るほど周囲の環境が良くなかったからな。」
放射能汚染も熱による劣化も物ともしないプロメアが言う良くない環境とは一体何について言っているのか、それを本当の意味で理解出来たのはこの場でルーテのみだった。
彼女も同じ境遇でここに辿り着いたからこそプロメアのこの言葉はルーテの心に深く突き刺さった。
「だが何故お前は子を産まなかった。話を聞くと何故子を産まなかったのか不可解だ。」
「ほう…貴様が余のことで気になるのか。」
「あの、喧嘩しないでください。良い話の流れだったじゃないですか。」
ルーテとしては心を揺さぶられる話を聞いて余韻に浸っていた所にアズがムードをぶち壊した感じだった。
「こんなものは喧嘩にも入らん。余は別に気にしていないしな。」
「当方も純粋な疑問で聞いただけだ。」
「ならプロメアは好戦的な笑みを浮かべないでください。そしてアズはもう少し空気を読みましょう。」
(このふたりはいくら言い聞かせても喧嘩し出すんで困ったものです。)
「はあ…余が子を産まなかったのはそもそも相手が居なかったからだ。弱い雄には興味がない。それとも余が自分よりも弱い奴に股を開くような雌に見えるのか?」
「なるほど、愚問だったわけか。」
「そうだ。だが別に余がモテなかった訳では無い。これだけは言っておきたい。」
「何も言っていないだろう?」
「いいや、この際はっきりと言っておかなければならないだろう。余は本当にモテたのだ。その証拠に余は余の実力に匹敵する竜から求婚されたことがある。」
「え?そうなんですか?」
「そうだ。他の竜種だったがかなり強くてな。肉弾戦なら余よりも強かった。しかもそいつは同種から相当モテていたのにもかかわらず余に求婚したのだ。」
かなり得意げに語るプロメアの姿は昔は凄いモテていたと語る未婚の女のようだった。つまりかなりダサかった。特に相手がかなり良い男だったのに自分は振ったのだと語る所は涙を誘うぐらいには見ていられなかった。
「ならなんでプロメアは断ったのですか?他種族だからとか?それとも向こうにはもう相手が居てプロメアが退いたとか…?」
ルーテはそれなりの理由があってプロメアが敢えて求婚を断ったのだと予想したが、プロメアの答えは…
「いや、顔が好みではなかったのだ。」
「顔が…好みではなかった…」
今まで一度も見たことのない硬い表情をするルーテを、アズがまたなんともいえない表情で観察していた。
「余の種族の美観からすれば醜くすらあった。余の子供がこんな醜い顔で生まれると考えたらとてもではないが耐えられなかったのだ。だから何度も何度も断った。しかし奴は諦めが悪くてな…そこは好ましく思っていたのだが本当に顔が無理で断り続け…」
(失礼なんですけどそこまで言われるなんてどんな顔をしていたのでしょう…。)
ルーテはひとり、どんなに醜い顔をしたらここまで言われるのだろうかと興味を抱いていた。
「最後は羽と手足を食いちぎって適当な恒星に投げ捨てた。」
「食いちぎって…投げ捨てた…」
また今まで一度も見たことのない硬い表情をするルーテを、再びアズがまたなんともいえない表情で観察していた。
「これは竜種における最大の拒絶の表れ。もしこれだけの事をされても余に求婚してくるのなら受けてやっても良いと考えた。だが流石にそれからは一度も求婚してこなかったし、奴は普通に幼馴染の雌と結婚して幸せそうにしておった。どうやらその幼馴染は献身にそいつを看病して射止めたようだ。つまり余のおかげでふたりは結婚出来たということ。余は良いことをしたのだ。」
「…」
もはや無言だった。かなりブッ飛んだ内容でツッコミどころしかない。あの好奇心モンスターであるダークエルフ達ですらコメントに困っていた。
「あ、勿論だが余はその結婚式に呼ばれたぞ?スピーチだってした。向こうの親御さんには涙を流して感謝すらされたものだ。竜の王が参加したというだけで結婚に箔が付く。」
確かに王が参加した結婚式は箔が付くだろう。しかし内容が内容なだけに腑に落ちない面持ちだ。
「結婚式…あるんですね。竜にも。」
「それはあるに決まっておろう。大切な事だ。」
「そうなんですね…」
竜の結婚式という圧倒的パワーワードの前ではルーテの抱える様々なツッコミは喉の奥でつっかえて実際に口にすることは出来なかった。
「ふう〜…子供の話をしたせいでより気になって仕方ない。我が子らの様子を見に行くか…」
「いやそれは駄目でしょう!しかもこの流れから行かないでください!残された私達はどんな心境でこの感情を処理すればいいんですか!?その羽はしまってください!!」
流石にツッコミをいれるルーテ。種の代表者として正しい判断だった。
「しかし…」
「はいはい羽を戻してくださいね〜。というか羽無くても飛べません?」
「ぬう…」
かなり渋々といった感じで羽を結晶化させて戻したプロメアは両腕を組んで不満そうに椅子に座り込む。
「だがこうして待ち続けるのは性に合わん。子供達が頑張っている間に昔話をし続ける神経を余は持ち合わせておらん。」
「私もですよ。でもプロメアが全部やったら子供達が可哀想です。何もさせてくれないなんて何のために生きているのか分からなくなりますよ。」
「だからこうして居るではないか。」
「ならみんなが帰ってくるまではちゃんとお留守番をしましょう。子供達に笑われます。」
「むう…」
痛いことを言われた気がしたプロメアは不満そうにしながらもルーテの言う通りに静かに待とうと考えていた…。しかしプロメアとは違い大人の考えを持たない者達が行動に出る。
「プロメア様、みんなの様子を。」
「ここからでも見られるよ。」
「…なに?それは真か?」
「また始まった…」
大体こういう時にダークエルフが発言すると碌な事が起こらないと経験則で知っているルーテはお腹を擦り始める。
「タブレットでみんなの視点を覗ける。」
「しかも音声付き。」
「早くせい!時間は我らを待ってはくれない!」
「「御意。」」
「あぁ~…この組み合わせ最悪だ…」
ダークエルフとプロメア、この組み合わせはかなり相性が悪い。アズとプロメアがそうだが、悪ノリが過ぎるメーテとクーデ達とは悪い意味で相性が良過ぎる。つまりルーテにとってすればとてもとても相性が悪いということだ。
「おおっ〜!!これは………おおぅ〜?」
タブレットに映像が映し出された瞬間はかなりテンションが上がり歓声を上げたプロメアだったが、次第に声尻が小さくなりプロメアの表情から嬉の感情が抜けていく。
「メーテ、クーデよ。これ…画面が些か小さ過ぎはしまいか?」
「ちょっとメーテも思った。」
「タブレットの大きさに対して映し出す画面の量が多い。」
エルフ達4人とルーズ1人の視点をふたつのタブレットだけで映し出そうとするとひとつの視点がかなり縮小されてしまい、画面の臨場感が薄れて期待していたものと大きく異った映像になってしまっていた。
「大きな画面で見たいのか?」
「アズ…?」
突然会話に参加したアズがおもむろに立ち上がり生命の樹の方へと歩いて行ってしまい、それに釣られるようにルーテたちも生命の樹の方へと向かっていった。
「そもそもタブレットは当方の一部。大きな画面で見たければ当方が出力すればよい。」
「アズ…??何をしようとしているのですか???」
いや、本当は分かっていた。それなりの付き合いであるルーテにはアズが何をしようとしているのか手に取るように分かってしまう。
「何って、これだが?」
生命の樹の隣で生えているシュールな絵面のアズテックオスター。そんなアズテックオスターは八角形の形をしていて1面積辺りの面積がかなり大きい。つまり…
「やりやがりましたよ…」
その大きな身体を持つアズテックオスターの表面に映し出されたものはメーテ達の持つタブレットと同じ映像だった。それはまるでディスプレイのようであり、というかディスプレイそのものだった。
「…」
あのプロメアが頭痛に悩むように目頭の辺りを指で押さえていた。かなりショッキングな映像を見たのだろう。まさか仇敵とも言える相手が映像を出力する装置に成り下がったとは考えたくもない。しかも当の本人がそれをやってのけた。
プロメアの心境はもはや語るまでもないだろう。
「余は…余達はこれに…」
「それ以上言ってはいけません。心が壊れてしまいます。因みに私はもう諦めました。かつてあったアズテックオスターへの神秘性なんてとっくの昔にアズの手によって破壊されましたから。」
あの全宇宙どころか他世界からも恐れられたアズテックオスターがだ。これで良いのかと叫びたい気持ちになったプロメアはこのクソデカ感情をどうにか整理しようと頭を抱えた。
「おい、見ないのか?」
「お前はどんな感情で余に聞いておるのだ?」
それは純粋な疑問だった。つい顔を上げてアズを見たがバックに映るアズテックオスターの成れの果てがあまりにもショッキングな絵面をしていてプロメアは力なくその場にしゃがみ込んでしまう。
「分かりますよ…全く同じとは言いませんが近い事をされましたから。」
「余は…お前達とは違い適応出来そうにない。こんなもの適応してたまるか。」
「嫌でも慣れますよ。」
「初めてエルフになったことを後悔し始めたぞ…」
プロメアは目の前の現実を受け入れる為に目を開けてアズとアズテックオスターを視界に捉える。だが…
「…余は弱い。」
目の前の事実に打ちのめされたプロメアは片腕に頭を乗せて項垂れるのだった。
「あ、これ重症ですね。大丈夫ですかプロメア!しっかりしてください!!まだ脈はあります!!」
「ルーテよ…余の手を握ってくれ。」
「もう握ってますよ!」
「本当か…?握られた感覚がないぞ…」
「そんな…!死なないでプロメア!私を一人にしないで!!」
茶番劇なのかマジなのか判断に困っていたメーテとクーデは取り敢えずプロメアのもとに行き手を握ることにした。
「おお…お前達か。頼む、余を、余を…」
「プロメア様…」
「死んでもすぐそこの生命の樹から生えてくるからあまり意味無いよ。」
「こらクーデ!そんなこと言っちゃ駄目です!!」
「ぐあああっ…!!!」
「ほら!!現実がプロメアを殺そうとしているのに!!」
「でも生命の樹の隣にアズテックオスターが生えてるから逃れようがないよ?」
「ぐはっ…!!!」
「プロメアーーーー!!!!」
大体2分程度、茶番劇が続いた。そして少しだけ満足したプロメアがどうにか片目を開けてアズテックオスターをチラ見することに成功する。
「両目からでは情報の量に心が耐えられんが、片目ならばどうにかなる。」
「良かったです…」
「見えづらいのが良いのか?」
アズは一人だけ不服そうにしていたが、皆が大画面の前で横一列に座り、エルフ達のプライバシーを侵害していた。
「ここは…まだ森の中だが少し様子が違う気がするな。」
「あ、メーテのタブレットに位置情報出せるよ。」
メーテのタブレットには簡単な地図が映し出され、そこに黄色の点と黒い点が動いていたが黄色の点がエルフ達で黒い点はルーズであることは見て分かる。
「やはりもう少しで森の外に出るのか。」
「そうだよ。前にクーデ達が狩りに出掛けた時の情報で簡単な地図を作って、今はナビゲーションシステムを組んでる。」
「流石は我が子達よ。」
「プロメア様のおかげ。」
「プロメア様の身体を借りて魔法組んでる。」
プロメアとメーテ達が親子のような会話をしている横でルーテとアズ達はマニアック過ぎる会話を繰り広げていた。
「この映像を出力するうえで当方は3溝(10の32乗)の色を使い分けている。そして映像の遅延は量子のもつれを利用しているので存在しないのだ。」
「へー…」
「音を聞いてほしい。まるでその場にいるかのような迫力があるだろう?これは当方達の居る位置に目掛けて音の方向を調整しているからだ。だから音がリアルに聴こえて…」
「へー…」
(この話…あと何時間続くのでしょうか。)
魔法の話なら理解出来るし興味も関心も向けられます。でもこれって魔法じゃないですよね?魔力を感じませんし多分ですけど機械?のような仕組みを使ってそうです。
「あとは向こうの情報が廻廊で送られてくるが、その逆も可能だ。今は色々と考えているが一番は物質の行き来だな。」
「あ〜なんか一昨日かその前の日にそんな話してましたね。もう出来そうなんですか?」
「向こうからこちらに送ることは出来ると思う。その為にルーズは狩りに行ったからな。」
「あ、やっぱりそんな理由があったんですね。ルーズが提案したのってアズの思惑通りでした?」
「そうだ…と言いたいがあのタイミングで言ったのはルーズの判断だ。抜け駆け出来る良いタイミングだった。」
「ちゃっかりしてますねあの子は。将来は大物になるかトラブルメーカーの2択かな。」
「ルーテの子だからな。将来は大物になるだろう。」
「それを言うならアズの子だから将来はトラブルメーカーになりますよ。」
「酷い言われ様だ。」
気が付けば笑いながら話すルーテにアズも満更でもないように受け答えを続ける。
「あ、森の外に出ましたよ。森の外はなんか乾燥していて急に景色が変わりますね。」
「それは隕石による影響だ。」
「隕石?」
「前にこの星には隕石がよく落ちると話したことは覚えているか?」
「…あ、初めて会った日ですか?」
ルーテはどうにか記憶の棚から正解を引き当てる。
「そうだ。元々この辺りに隕石が落ちる事は非常に稀だ。そもそも隕石の落下する地点には偏りがあり落ちる場所はこことは違って不毛な大地になっているだろう。」
「そんなことも分かるんですね。」
「この惑星の周りの衛星の位置、その周期、そして太陽系の惑星の位置、そしてそれらの星々の引力で隕石が落ちるルートが偏る。」
「ああなるほど。引き寄せられる道筋が出来上がっちゃってるんですね。」
「その通り。そして元々ここは乾燥した大地が広がっていたが、隕石が落ちて地殻変動を起こした。地盤が沈下したのだ。」
「なるほど、それで水が溜まりやすくなって木々が生えたと。」
「流石にそういった知識は持ち合わせているか。だがそれだけじゃない。」
「はいはい!隕石が地殻を砕いて水脈が地表に露出したんですよね?」
ルーテは前に地下水を掘った経験があり、その地下水のおかげで森が形成されたことに気付いていた。
「…その通りだ。しかしこれは分かるかな?元々この大地は…」
「海だった…ですよね?」
「何故分かった。」
「だってここの生き物身体に塩分を含んでいますもん。どこかで塩分を補給しているんですよね?」
「…そうか。狩った獲物を生命の樹に分解させ樹の実を付けさせた時に気付いたのか。」
「はい。その獲物の栄養素を吸収しやすいように果実にしてくれるんですけどどの果実にも若干ですが塩味がありました。だから何処かに岩塩があるんだろうな〜とは予想していましたよ。」
ルーテは別に知識が無いわけではない。当然アズやプロメアと比べれば幼子に近しい知識量しか持ち合わせてはいないだろう。だがルーテはエルフ種の代表としてこの星にやってきた。サバイバル等の生き残る為の知識は当然持ち合わせている。
「ではこの森が出来た時期は分かるか?」
「う〜ん…恐らくなんですけどこの森って何回か火事になって全焼してそうなんですよね。だから3代か4代目の森で、4代目になってからそれほど時間が経っていない感じだと思います。」
「根拠は?」
「私が植物から生まれたからなんとなく分かる…じゃ駄目ですか?」
「まあ及第点をやろう。この森はルーテの言う通り4代目だ。この星の時間で80歳といったところか。」
「あ、思っていたよりも若いですね。」
「森が焼かれて地質に変化が起き、自生していた種に急激な自然淘汰がなされた結果だろうな。弱い個体は強い個体の栄養となって森が大きく、早く形成された。」
「私の故郷でも似た事がよくありました。やっぱり星が変わっても植物の生え方って変わらないんですね。」
「進化の過程は違っても同じ宇宙に存在する惑星。星を形作る元素も同じならば似るのもの頷けるだろう?」
「確かにそう言われるとそうですね。」
なんかアズとこういった話をするのは珍しい気がします。でも私こういう話好きなんですよね。アズとこういう話が出来て嬉しいです。
「しかし魔素が関わるとそうとも言い切れなくなるがな。」
「…進化するから、ですよね?」
「そうだ。急激な自然淘汰は進化そのものだ。魔素が存在する惑星では生き物の進化は激しく際限も法則性もない。独自の生態系が作られる傾向があるが、そのよい例としてルーテ達が挙げられるだろう。」
「そんなに独自な生態してますかね…」
「当方とプロメアのお墨付きだ。汝らのような生態は他にない。」
「…まあ、変なんでしょうね。」
「ああ変だ。そして非常に興味深くもある。」
「研究対象としてですか?」
「それもある。」
「そこは否定してくださいよ。」
ルーテとアズは軽口を叩き合う。そしてルーテは気付く。アズと軽口を叩ける関係性を築けていた事に。これは自身の変化もあるだろうが、一番の要因は間違いなくアズにあった。
前のアズならば冗談を冗談として認識出来ても適切な対応は出来なかった筈だ。しかし今のアズは話していて何もストレスを感じるのことがない。
それはまるでルーテからすれば故郷のエルフと話すようなものだった。つまりアズは順応したのだ。エルフという種族に。
そしてそのことにプロメアも気付いていた。
(まさか…そうなのか?アズはエルフとしての特性を持っている。それはつまるところ余も持ち合わせているということ。)
何故なら余も今はエルフだからだ。だがそれは身体だけのもの。思考は竜の時と変わらん。しかしこれを見ると思考までエルフのようではないか。
これは彼女らと生活を共にして似たとは違う。明らかに価値観に関わる部分の話だ。
(そういえばもう画面を両目で見ても何も感じなくなっている。)
つまり順応したのだ。余もアズと同様に順応性を獲得している。これは…ちょっとした恐怖だ。だが同時に納得がいく話でもある。そもそも生命の樹は他種族をエルフ種にする装置のようなものだ。そう仮定出来る。でないとこんな機能は必要ない。
ならばエルフとして順応することは道理にかなっていると言えるだろう。
「面白い…」
「プロメア様?」
「面白くなるのはここからだよ?」
メーテとクーデは画面に映し出される映像に指を指して指摘する。画面では今から狩りが始まりそうで実際面白そうであった。
「そうだな…面白くなるのはこれからだ。」
そう言うとプロメアはメーテ達を近くに寄せて視聴に集中し始める。今はこれに専念するかのように…
思っていたよりも話が進まなかったですが、こういう日常風景が書けて楽しいです。次回はちょっとコメディ感強めでその次ではかなり話が進んでいく予定です。




