90 ラファエルの疑惑
私の命を助けるか、それとも降伏して今この場でソロモン72柱の悪魔達を指輪で服従させるかーー
ルシファーは選択をソロモンさんに要求してきた。
役に立たないどころか足を引っ張ることになってしまった。
せっかく助けに来てくれた悪魔達が自由を奪われてしまうなんて…。
そんなの耐えられないよ……!! だったらいっそこのまま殺された方がマシかもしれない……。
私はソロモンさんの顔を見て、そっと首を横に振る。
私を気にしないでと思いながら。
覚悟を決めたその時ーーー
何かが勢いよく飛んでくるのが見えた。
バシィッ! 突然、ルシファーの腕を掴んでいた何かが弾いた。
それは・・・アスモデウスが武器で持っていた槍だった。
そしてその隙に
「今だっ!」
ダビデが私を奪取して救出してくれた。
「大丈夫か?」
私は彼の腕の中で震えながら頷いた。恐怖のあまり声が出なかったからだ。
「済まない・・・君を守ると約束したのに」
ダビデは申し訳なさそうに謝った。
私は声にならない分何度も首を振る。
「・・・アスモデウス…。貴様よくも……」
ルシファーは怒りの形相でこちらを睨んでいる。
せっかくソロモンさんを降伏させるチャンスだったのに妨害されて、怒り心頭のよう。
「ソロモン王の弱点は女だと、貴方が言ったのではありませんか」
アスモデウスは好戦的に笑っている。こんな表情初めて見た気がする。
お見通しだったってことだろうか?
「ゴミ虫共め……血を流すことは極力避けてやろうと思っていたが、私の本気を見せてやろう」
ルシファーの周りには強力な魔力が渦巻いているように見える。すごい威圧感だ。流石ラスボスって感じだね……。
「やめるんだ、ルシファー!君達が堕天使だとしても犠牲は出したくない!降伏しろ」
ラファエルさんは必死で説得を試みる。
しかし、ルシファーは全く聞く耳を持たないようだ。
「黙れ……天界でのあの屈辱を……ここで晴らさせてもらう!!」
そう叫んだルシファーから膨大な闇のオーラが溢れ出す。
そのあまりの強大な力を前に聖書転生者達や悪魔達は怯んでいる。
「ルシファー…?私が知っているルシファーとは違う気がする……まさか…?」
ラファエルさんは独り言のように呟いていた