81 問題共有するソロモンとソロモン72柱の悪魔達
ルシファーとアスモデウスが大軍を率いて進軍することを企んでいた頃、ダビデ達は新たな異能を使えるようにするため訓練を続けていた。
その一方ソロモンは、ソロモン72柱のヴアル、バルバトス、ムルムル、マルファスを召喚していた。
「みんな、忙しいところ呼び出して済まない。君達にも伝えておいた方が良さそうだと思ってね」
深刻そうなソロモンの言葉に、彼らは真面目な顔で耳を傾ける。
ソロモンは、ルシファーが画策しているソロモンの指輪を巡る陰謀を彼らに説明し始めた。
「何だと…?ルシファーが魔界を支配する可能性があるだと!?」
バルバトスは驚愕の表情を浮かべて叫んだ。
「ああ、そうだ。君達も支配され奴隷扱いされるかもしれない。ルシファーはおそらく僕を自分の傀儡にし、悪魔全員を支配させようと企んでいるはずだ。僕が奴の傀儡になればすなわちルシファーが好きに支配することができるからね」
ソロモンの説明を聞き、悪魔達は動揺を隠しきれない様子だった。
「冗談じゃない!俺達は自由に生きたいだけだ!仲間達が奴隷のように扱われるなんて耐えられない!!」
バルバトスは怒りに任せて机を叩いた。
「ルシファーさんとはあまり関わりはありませんが、部下思いの方だと聞きますし…」
相変わらずお人好しなヴアルにバルバトスは呆れた表情を見せる。
「ソロモン王。我々の仲間達にも共有していいでしょうか?我々も手をこまねいているわけにはいきません」
冷静な判断を下すムルムルに対してソロモンは大きく頷いた。
「構わないよ。むしろその方が助かるかな。みんなで協力して対抗策を考えたいから」
こうして、ダビデ達だけでなく、悪魔達も協力することになったのである。
***
シミュレーション魔法を使って新たな異能を使いこなすために特訓を続けること数日。
様々な状況を想定した戦闘シミュレーションを繰り返し行っていた。
その中には魔物の大群が現れた状況、仲間が全員戦闘不能に陥った状況など現実に起これば絶望的になる状況もあった。
しかし、ダビデ達は諦めることなく何度もシミュレーションを行った結果、新たな異能を使うことができるようになっていたのだ。
最後は、ダビデ達自身が敵として現れる状況で、シミュレーションを行っていた。
聖書転生者達に見た目もそっくりな上、戦闘力も同じくらいの強さなので、ダビデ達は苦戦を強いられていた。
自分と戦うという現実ではあり得ない状況な上、自分や仲間を攻撃することは心理的にも難しいからだ。
(くっ…!これは仮想だと頭ではわかっているのにあまりに現実味がありすぎて攻撃できない……!!)
ダビデ達は思うように動けず、苦戦していた。しかし、そんな時ダビデ達を鼓舞する声が響き渡る。
「惑わされるな。これは偽物だ。本物の私達はこんなことでは倒れない!」
そう言って真っ先に攻撃をしかけたのはアダムだった。
彼は迷いなくダビデ達に斬りかかる。その動きは素早く無駄がないものだった。
他の仲間達も次々と攻撃を仕掛けていく。
彼らの動きは実に見事なもので、仮想のダビデ達を圧倒していく。
「流石だな……!」
ダビデは思わず感嘆の声を漏らしていた。彼らならきっとルシファーにも勝てるだろうと思っていた。
そんな時だった。
突然、大きな地響きが響き渡ったかと思うと、空から巨大な隕石が降ってきたではないか!! それはまるでこの世の終わりを彷彿とさせる光景であった。
「なっ……!?こんな展開聞いてないぞ……!?」
想定外の展開に、さすがのダビデ達も戸惑いを隠せなかった。まさか、隕石が落下してくるとは予想していなかったからである。
「くそっ、このままじゃ全滅だ……。どうすれば良いんだ……!?」
ダビデ達が戸惑っている間にも、隕石はどんどん迫ってくる。
「落ち着くんだ。これは仮想の世界だ。現実の私達が死ぬわけではない」
アダムの言葉のおかげで落ち着きを取り戻した彼らは冷静に対応することができた。
そして、各々が持つ異能を発動させると隕石に向かって放つのだった。
すると、隕石はまるで最初から存在しなかったかのように一瞬で消滅したのである。
その光景を見たダビデ達は安堵すると同時に感動を覚えた。
自分達の力がここまで強くなったことに喜びを感じていたのだ。
こうして、ダビデ達は厳しい訓練をこなし、異能を使いこなせるようになったのだった。