79 ルシファーの狙い
「堕天使ルシファーの手元には偽物のソロモンの指輪がある。奴も気付いているだろうから、おそらく僕の身柄を狙ってくるはずだ」
ソロモンさんは険しい表情で語る。
「悪魔アスモデウスもそなたを探していたようだ。また拐おうとしてくるかもしれない」
アダムは心配そうに言った。
「我々はそなたを守らなくてはならない。悪魔と戦うことも覚悟しなくてはならないだろう」
アダムの言葉にダビデ達も真剣な表情になる。
「ええ、そうだね。僕は悪魔使役はもうしないと決めた。悪魔を支配できれば強い武器にもなるだろうが、それでは奴らと同じだ」
ソロモンさんは自分に言い聞かせるように言った。
「いくら主に授かった権限とはいえ、悪魔と契約することは危険すぎる。まして彼らの意思を無視するやり方など業を背負うようなものだ」
ダビデはソロモンさんを見つめながらそう言った。
ダビデは厳しいことを言ってるようでソロモンさんを心配して言ってるんだよね……。優しい人だ……。
「アスモデウスはおそらく僕に恨みがあるのだろう。自業自得だと思ってる。だが彼がルシファーに協力したのは他にも理由があるのかもしれない」
「というと?」
「ルシファーは悪魔全員を配下にしようと企んでいるのであれば、アスモデウスに高い地位を約束したのだろう。アスモデウスはルシファーと同じ7つの大罪の一つ、色欲を司るからね」
「なるほど……そういうことか」
ダビデは納得したようだった。
「ルシファーが悪魔達を支配するとなると、僕とは比較にならないほど惨いことをするだろう。そんなことは絶対にさせてはならない」
ソロモンさんは決意に満ちた目で拳を強く握りしめた。
ヴアルさん達まで巻き込まれて奴隷のように扱われるなんて、そんなの許せないよね……。
良い悪魔だっているのに。
「そこでだ。父上達には修行してもらいたいと思う。新たな異能を授けたが使いこなせなければ意味がない」
ソロモンさんはダビデ達に向かって真剣な眼差しで告げる。
「確かにその通りだ。我々ももっと強くならねばな」
こうしてダビデ達はソロモンさんの警護をしつつ、異能を使いこなすための修行を開始したのだった。
***
魔界では、魔王ルシファーはアスモデウスと話し合っていた。
「やはり奴は見つからなかったか……」
「はい……申し訳ありません……」
「奴は我々の目論見に気付いて身を隠しているのだろう。ダビデ王と一緒にいる少女を狙え。ソロモン王の弱点を知っているだろう?」
「ソロモン王の弱点…。女、ですか……?」
「そうだ。あの者は女に溺れやすい。そこを突けば必ず隙ができる。頼んだぞ」
「かしこまりました……」
アスモデウスは姿を消すと、そのまま異世界へと飛び立ったーー