75 僕が君を守る
元の世界には戻らず、この世界で生きていくーー
元の世界に戻る方法を見つけることを目標にやってきた私にとって、それは衝撃的な提案だった。
ソロモンさんの真っ直ぐな視線から目をそらすことができない。
この人は本気で言ってるんだ。
本気で私のことを案じてくれているんだ……。
そう思うと胸が熱くなってくるのを感じた。
それと同時に心の中に何か温かいものが広がっていくような感じがした。
でもそんな余韻に浸っている時間は長くはなかった。
ドゴォンッ!! 突然轟音と共に地面が大きく揺れたのだ。
地震かと思ったがどうやら違うらしい。
「ヤマトちゃん、僕の後ろにいて!!」
ソロモンさんがそう言うと、どこからともなく現れた魔聖が私達を狙うように近づいてくる。
そうだ、この世界は魔聖の脅威に晒されているんだった……!
「大丈夫だよ。僕が君を守るから」
ソロモンさんはそう言って微笑み、剣を抜いて構えた。
その魔聖は種類は分からないけれどとにかく巨大だった。
5メートルはある巨体の人型の生物だ。
いや人ではない、頭部には二本の角があり、背中には大きな翼が生えていて両腕には鋭い爪がある。
「フッ…面白い。新しく開発した魔法の成果を実戦で試せるいい機会だな」
ソロモンさんは不敵に笑うと呪文を唱え始めた。
すると、魔聖が突然怯え出し動きを止めたかと思うとその場から逃げようとした。
精神操作の魔法を使ったんだろう。
しかし次の瞬間、魔聖の周りに結界のようなものが展開された。
そして身動きが取れなくなった魔聖に向かってソロモンさんは右手をかざして叫ぶ。
「滅せよ!!」
その瞬間、巨大な光の柱が出現し魔聖を一瞬で消滅させてしまったのだった。
すごい……!これがソロモンさんの力!! 私は感動していた。
「なるほど。指輪がなくてもそれなりに戦えるな」
ソロモンさんは満足そうに呟き、振り返ってこう言った。
「そろそろ帰ろうか」
「え?だってソロモンさんは身を隠してないと…」
私が戸惑いながら言うとソロモンさんは笑って答える。
「大丈夫だよ。同じ失敗はしないさ。それに、僕にはこれがあるから」
そう言って手をかざしてみせるソロモンさん。
そこにはーー
さっきまで嵌めてなかった指輪…ソロモンの指輪が輝いていたのだった。