5 ダビデの息子ソロモン王
なぜか異世界に来てしまった現代の高校生だった私、そして聖書に登場するダビデ王。
生活費を稼ぐため当面は冒険者をすることになった。
魔聖との戦闘で、光を発したダビデ王だけど本人は無意識みたいで…
ともかく無事にクエストを終えた私達は街に戻ることにした。
一方その頃ーーー
時は同じくして、ある男が異世界にいた。
その男は外見年齢は20歳頃だろうか?
まだ大人になりきれない若者らしさを残しつつも、どこか落ち着いた雰囲気を感じさせる男だった。
肌は褐色で、切れ長の瞳を持ち、鼻筋が通っている端正な顔立ちをしていた。
髪は癖毛だが柔らかそうで、やや長めに伸ばしているのが特徴的である。
彼の名前はソロモンと言った。
ダビデ王の息子であり、同じく古代イスラエル王だった男だ。
彼はどこか挑戦的な目をしながら街の中を歩いていた。
ソロモンは古代イスラエル王時代、賢王として名を馳せ、その知力は並ぶ者なしと言われていた。
神より与えられた並外れた知恵の力ーーそれは異世界においても遺憾なく発揮されていたのだ。
明らかに古代イスラエルとは違う世界。
ソロモンはこの世界が「異世界」だとすぐに気づいたが、不思議と動揺することはなかった。
彼は前世では一度死んでおり、この世界で生まれ変わったのである。
つまり彼は転生したということになるのだろう。
(異世界…僕は生前様々なことを調べていたがその中には『我々の世界とは別に存在する世界ーー異世界』の可能性も含まれていた。僕はその可能性を肯定していたが、やはり異世界は存在したのか)
ソロモンにとって、異世界という概念はすでにあったのだ。古代人とはとても思えない知識量の多さもそれを裏付ける証拠と言えるだろう。
(僕には前世の記憶がある……この知識と知恵があれば生きていくことはできるだろう。それに…)
ソロモンはグローブを嵌めた手をそっと撫でながら笑みを浮かべた。
(こいつも一緒に異世界に来ているとはね。僕が亡くなった後の死体からも離れることがなかったこいつがーー)
グローブの中の手に何か秘密があるようだがーー?とにかく彼は冷静沈着な性格のようだ。
そして、ダビデやソロモンとは違い、全く別の理由でこの異世界に来た者がいるのだが、彼らはまだそのことを知らないのだった。