56 葛藤するソロモン72柱の悪魔達
その頃。
ソロモン72柱の悪魔達、ムルムル、マルファス、バルバトスの3柱は集まって話をしていた。
「アスモデウスが持ちかけた例の話・・・」
「ソロモン王を葬ることに協力する件か」
3柱に重い空気が流れる。
「ヴアルには内密にしよう。あいつは誰よりもお人好しだ。反対するに決まってる」
バルバトスはそう提案する。
「ヴアルには気の毒ですがそれが良いでしょう。本音を言えば我々もこんなことに手を貸したくないが…」
ムルムルはため息をつく。
「だがアスモデウスの言うことは一理ある。俺はソロモン王にされた仕打ちをまだ許せない。それに指輪を使われることに怯え続けるのはごめんだ。これは俺たちの自由のためだ」
バルバトスはそう決意したように言った。
3柱は非情に徹する事を決めたようだった。仲間達のためにもーーー
***
私とダビデ、そしてソロモンさんは王宮に来ていた。
新興宗教の教祖だったアダムは捕まり、教団は解団されていた。
そして、王様から直々に報酬を受け取ることになったのである。
「王。始祖様…いえ、アダム殿はどうなりました?」
ダビデの質問に王が答える。
「国の許可なく教団を発足した事は問題だが、被害も出てなく情状酌量の余地ありということで厳重注意に留めることになった」
それを聞きダビデは安心していた。
「ところで、ダビデよ。そなたは音楽を人々の役に立てたいと言っていたな。その件について、私から提案がある」
王はそう言った。
「何でしょうか?」
ダビデは尋ねる。
「音楽活動をするのであれば国の許可が必要だ。そこで、私が後援しようと思う。もちろん資金面の支援も含めてだ」
それを聞いて、私たちは驚いた。
さらに、今回の功績が認められ、ただの冒険者ではなく国直属の騎士団長として取り立ててくれるとのこと。
しかしーー
「ありがたいお話ですがお断りします」
「ほう。理由は何だね?」
王の質問に対して、ダビデは答えた。
「私は部下を持つよりこの人生では自由でありたいのです。誰かに束縛されるのではなく、自由にやりたいことをして生きたいと思います」
それを聞いた王様は少し残念そうだったが、すぐにこう言った。
「なるほど。面白い男だ。だがそなたは有能な男でリーダー性もある。そなたの自由も尊重するが、指導役などを任せることもあるかもしれないぞ?その時はよろしく頼む」
ダビデはそれを了承し、謁見は終わったのだった。
つまり、今まで通り冒険者もしながら、音楽家と騎士の指導者を国のバックアップを受けてやるということだ。
(凄い……さすがあのダビデ王。一気に地位が上がったし収入も上がるよね)
私は感心するのだった。
「さすが父上だね。しかし、父上も僕と同じことを言うんだね」
ソロモンさんの言葉にダビデが反応する。
「同じこととは?」
「僕も国お抱えの相談役をしてるけど、あくまで契約を結んだだけで自由だからね。せっかく転生したんだからこの人生は縛られず自由でありたいと思ってる」
ダビデもソロモンさんも生前は王様だったから、また王様になりたいのかなと少し思ってたけど。
王様は支配者で頂点だけど、抱えるものも責任も重すぎるらしい。
(まあ、そうだよね……)
「ところで父上達。未だに宿屋暮らしらしいけど屋敷を持ってみたら?」
「おお、そうだな。この国に定住するなら屋敷に住むのがいいだろう」
こうして私達は部屋探しをすることになったんだけどーー
「ねえヤマトちゃん。君はどうするの?良ければ僕の屋敷に来ない?」
ソロモンさんは私にだけ聞こえるように耳打ちした。
え?どゆこと!?