53 神の子達の決戦
私は今、ソロモンさんとダビデの戦いを見ている。
アダムの猛攻は止まらず、2人は追い詰められていた。
(どうしよう…2人とも辛そう。助けに行きたいけど、下がってろって言われたし……)
かえって足手まといになるかもしれない。
そんな時、ソロモンさんは腰につけてる鞘に手をかけようとした。
(剣を抜こうとしてる……?)
今まで剣を使わなかったのに、いよいよ追い詰められてるんだ…。
どうしよう…止めなきゃ…!
でもこのままだとソロモンさん達が殺されちゃうかもしれない。
私の脳裏に過去の出来事が浮かんでくる。
過去の記憶の中で私…僕は母と一緒に頭を下げていた。
〜〜〜
おばあちゃんが1人でやってるお店で万引きしてる子がいたからダメだって注意した。
そしたらその子は逆上して僕の頰を思いっきり叩いてきた。
でもそれだけならまだ良かった。
叩かれた勢いでよろけて棚にぶつかってしまったんだ。
そしてその衝撃で棚の上に置いてあった壺が落ちてきて、その子に当たった。その子は怪我をした。
僕が怪我をさせたことになり、母と一緒にその子の親に謝りに行かないといけなくなった。
母にまで恥をかかせて傷つけてしまった。
僕が余計なことしたせいだーーー
〜〜〜
ソロモンさんに下がってろって言われた。余計なことしないでおこう…。
でもそれでいいのかな……?
その時、あの光景を思い出した。
この世界に転生してすぐ、魔物が現れた時に石を投げて立ち向かっていったダビデの姿をーー
2人に人殺しなんてしてほしくない!!
良い人達なのに…!
(やっぱりダメーーーー!)
私は思わず駆け出していた。
そしてソロモンさんの腕にしがみつく。
「!?」
そしてーーー
私は無意識の内に魔法のようなものを使っていた。
それは回復魔法に似てるんだけど、それよりももっと強力なもののように感じる。
体力の限界そうに見えたダビデも回復したみたいだし、何よりソロモンさんが驚いた顔で私を見ていた。
「ヤマトちゃん……」
「礼を言う!ヤマト」
ダビデは力を取り戻して再びアダムに立ち向かう!
一気に形勢逆転して、今度はアダムが追いつめられる番だった。
(父上!今ならやれる。トドメをさしてくれ!)
ソロモンさんは再び魔術でダビデの攻撃力を上昇させる。
そのおかげでダビデの攻撃の威力はさらに増していた。
(始祖さま…これで……終わりだ……!!)
アダムの体を貫くかのように拳を振り抜く!!
ドゴッ!!
***
「はぁ……はぁ……」
息を切らすダビデ。
その様子を呆然と見ていた私とソロモンさんだったが、すぐに我に返った。
アダムは倒れたまま動かない。どうやら気を失っているようだ。
「よし、拘束するぞ!早く縄を持ってこい!」
こうして、ようやくアダムとの戦いが終わったのだった。
***
一方、上空ではラファエルとサリエルが謎の女に苦戦していたがーー
「あら。終わったの。まあ、今回は負けにしといてやろうかしら」
女はそう呟くと、その場から姿を消したのだった。
「あ、おい待て!!」
「サリエル。我々の目的は戦うことじゃない。それより、ダビデ王達はアダムを止められたようだ」
ラファエルの言う通り、地上にいるダビデ達はアダムを拘束し、退散しようとしていた。
(だが…あの少女が使っていた力は一体…?あの女性の相手をしていたからはっきり見てないが…)
ラファエルは疑問を抱きながらも、彼らを見守るのだった。