50 人類最初の男
「貴方は……本当にアダムなのか……!?」
ソロモンさんはそう尋ねていた。
だって旧約聖書に出てくる、神によって作られた最初の人間なんて言われたら誰だってびっくりするでしょ!
しかもそれが今目の前にいるだなんて。
「私はアダム。神に最初に作られた人間だ。そなた達、イサクやヤコブと同類なのだろう?ならば私が何者であるか分かるはずだ」
アダムは不敵な笑みを浮かべた。
「済まないが私の邪魔をするなら排除させてもらう」
そう言ってアダムは突如襲いかかってきた。
「危ないっ!」
ダビデは慌てて私を抱えて後ろに下がった。
「ほう、なかなかやるな」
アダムは感心したように言うと、ダビデに殴りかかろうとした。
ダビデはそれを受け止めるとそのまま投げ飛ばした。
アダムはそのまま地面に叩きつけられるかと思ったが、空中で体勢を変え、華麗に着地した。
そして間髪入れず体当たりをしてくるが、それをまたダビデは受け止めようとするーー
(何という威力……!)
ダメージはないものの、その衝撃だけで吹き飛ばされそうになるほどだった。
(これが人間の出せる力なのか……!!)
「悪いが2対1で行かせてもらう」
ソロモンさんはそう言うと呪文を詠唱し始めた。
ヤコブを攻撃した時のように光線がアダムを襲う。
だがアダムは自分に届く前にそれを打ち消してしてしまう!
「なっ……!」
これにはソロモンさんも驚いた様子だった。
(こいつ、攻撃魔法を無効化できるのか!?これはこの世界で言われてる『異能』かもしれない…)
「今度はこちらから行くぞ」
そう言うと、アダムは目にも止まらぬ速さでソロモンさんに突進していく。
ソロモンさんはとっさに避けたが、次の瞬間にはもう目の前に来ていた。
ソロモンさんは咄嗟に防御するが、それでも勢いを殺しきれず飛ばされてしまった。
ソロモンさんの背後にあった建物の壁に激突する。
「ぐっ……!」
「ソロモン!くそ…!」
(人間に剣は使えない…。ソロモンの魔法も消されてしまった。こうなったら…!)
ダビデは咄嗟にすぐ近くにあった石を掴みアダムに投げつけた。
すごいスピードで飛んでいく!
だけどーー
何と、アダムは避けてしまった!一体どんな反射神経してるの!?
「そんな攻撃、私には効かんぞ?」
そう言って余裕の笑みを浮かべると、ダビデに襲いかかる。
ダビデはその攻撃を何とか受け止めたけど、かなり押され気味だった。
ダビデは蹴りを入れようとしたが、それも避けられた。
逆に足を掴まれてしまい、バランスを崩した所を殴られそうになった。
ダビデは寸での所で回避したが、頰からは血が出ていた。
(この人…強すぎる…。ヤコブもかなり強かったけど、それ以上だ……)
後ろで見ている私は恐怖を感じ始めていた。
ダビデが相手をしてる隙に私はソロモンさんに回復魔法をかけていた。
「ありがとう。ヤマトちゃん、危ないから君は参加しなくていいよ」
「でも……」
私は回復魔法は何とか習得できたけど、使える回数は限りがある。
ヤコブにも使ったしあと何回使えるか分からない。
「いいから下がってて」
そう言われると従うしかなかった。