49 教祖の正体
私達は教祖を追い、逃亡先に目星をつけてそちらに向かっていた。
「まだ時間はさほど経ってないから追いつけるはずだ」
狭い路地を抜けると、空き地のような開けた場所に出た。
そこには一人の男が立っていた。男はこちらに気づいたようで、私達の方に振り向いた。
男は長身で金髪の長い髪をしていた。
何だろう?オーラが普通の人間とはまるで違い、神々しさまで感じさせる。
そしてその男は美しかった。
絵に描きたくなるほど美しい容姿をしている男だ。
まるで神が自ら作り出したかのような美貌を持つ男。
「貴方が教祖か?」
ダビデはそう言った。
この男はキリストにしては若すぎる気がする。どう見ても20代だ。
そんなことを考えていると男が口を開いた。
「そなた達が私を連行しようとした者のようだな?イサクに聞いたぞ」
「ああ、そうだ。国からの命令だ。済まないが身柄を拘束させてもらうぞ」
ダビデは厳しい口調で告げる。
「断る」
しかし教祖はあっさりと拒否した。
「そうであれば力ずくでも連れて行かせてもらう」
ダビデは睨みつけてそう宣告した。
それを遮るようにソロモンさんは男に尋ねた。
「脅して済まない。この人、元軍人だから。貴方の名前を教えてもらえないか?私はソロモン。私の隣にいる男はダビデだ」
ソロモンさんがそう言うと教祖は少し考えてから口を開いた。
「アダムだ」
それを聞いてソロモンさんとダビデは驚く。
「アダム……?まさか…!!」
(容貌はキリストではなさそうだったが、まさかあの人類の始祖だと言われているアダムなのか!?)
さすがのソロモンさんも衝撃を受けた顔してる。
アダム…。
あの、神が自らに似せて作ったっていう、禁断の果実を食べて楽園を追い出された、あの伝説の人!?
そうであれば、人間と思えないこの神々しさも納得出来るかも。
「貴方は……主が最初に作ったと言われる男…?始祖……さま……」
ダビデは驚きのあまり声を震わせながら呟くように言った。
突如国に現れた新興宗教の教祖の正体。
それは人類の始祖と言われているアダムだったーーー
アダムは聖書において神が自らに似せて最初に作った人間です。
神は土から人間の男を作り、土から名前はアダムとなったそうです。