47 悪魔アスモデウス
ダビデとソロモンが新興宗教の教祖を追跡していた頃ーー
ソロモン72柱の悪魔であるマルファス、ムルムル、バルバトスの3柱は集まって雑談をしていた。
「相変わらず馴れ合っているな、お前達」
唐突に低い男の声が響き渡る。
声のした方を見るとそこには牡羊の頭を肩につけ蛇の尻尾を生やし、上半身裸でマントを身につけている長身の男が立っていた。
「貴方はアスモデウス殿!」
3柱は一斉に跪く。
アスモデウスと呼ばれた男は、ソロモン72柱序列32番である悪魔だった。階級は王であり、マルファス達より上の立場にある。
彼は冷酷な性格で、特に人間に対しては、虫けら同然にしか思っていなかった。
「いい。顔を上げろ。お前達、私に黙っていることがあるだろう?」
その言葉にビクッと反応する3柱。
「何のことでしょう?」
ムルムルは表情を変えず、すっとぼけた様子で言ったが、内心は焦っていた。
「とぼけるな。ソロモン王のことだ。奴は復活したらしいな。しかもお前達、接触してるだろ?」
やはり気づかれていたか。冷や汗を流すムルムルだったが、平静を装って答えた。
「……はい。その通りです」
「何故黙っていた?」
「申し訳ありません。ソロモン王に口止めされていたのです」
それを聞いたアスモデウスは少し考え込んだ後、口を開いた。
「まあよい。私は奴を葬ろうと思う。お前達にも協力してもらうぞ?」
それを聞いて3柱は驚く。
「協力…?我々に何をしろと?」
「お前達のことはソロモン王も信頼してるだろう。お前達が奴を油断させている隙を狙い、私が捕えるのだ」
それを聞いて絶句する3柱。
「まさか温情を感じているのか?よく聞け。ソロモンの指輪を使われたら我々はまた支配されるかもしれないんだぞ?そうなる前にソロモン王を殺す必要がある」
「ですがそこまでしなくても…」
「悪魔ともあろう者が人間に情けをかけるつもりか?所詮馴れ合ってばかりの甘い連中だな」
「何だと…!」
バルバトスは思わず怒りを覚えるが、それを制止するマルファス。
「ソロモン王が我々にした仕打ちを忘れたか?奴を信用するな。いつ奴の気まぐれで指輪を使われるかわからんのだぞ?一度指輪を使われたら終わりなのだぞ!!!」
怒声を挙げるアスモデウスの迫力に飲まれてしまうバルバトス達。
彼が言うことは確かに一理ある。
ソロモンへの恨みがないわけでもない。
ソロモンの指輪を使われてしまえば、自由を奪われてしまうかもしれないーー
アスモデウスの言葉に、3柱は傾いてしまったのだった……。
ソロモンに絶体絶命の危機が訪れようとしていることを、ダビデ達は知る由もなかったーーー