42 ソロモン72柱の悪魔達と出会うダビデ
大天使ラファエルは、異世界に来ていた。前と違うのは、大天使サリエルも一緒ということだ。
ラファエルの弟分であり慕っているサリエルが、お供になることを天界で申し出たからである。
「ラファ兄。ソロモン王だけじゃなくダビデ王もこの世界に転生してるなら、そっちも注意した方がいい?」
「そうだね、それに…」
「?」
「ダビデ王と一緒にいる少女のことも何だか気になるな…。我々はソロモン王を監視せねばならないが、彼女についても少し様子を見ようと思う」
「わかった」
***
翌日、私とダビデは冒険者達の集うギルドを訪れようとしていた。
だけどダビデは、顔色を変えてある方向を指差した。
「何だあいつは…!鳥の姿をした魔聖か?こんな街中に出没したのか?それにあの人間は、まさか連れ去られたのか!?」
見ると烏の顔を持ち体は屈強な人間の男の姿をした人と、貴族のような格好をした身なりが良い男性が立っていた。
「待ってろ!今助けに行くぞ。俺が守ってやる!!」
正義感の強い彼はそう言うと走り出そうとするので、私は咄嗟に腕を掴んだ。
この人、感情が昂ると一人称「俺」になるよね。
「待ってダビデ。あの人たぶん魔聖じゃないよ」
「どういうことだ?」
「情報によるとあの人は『悪魔』なんだって。人を襲ったりしないから安心みたい」
「悪魔だと?」
一方、ダビデ達が話題にしている、ソロモン72柱の悪魔マルファスは同じく悪魔ムルムルと話していた。
するとーー
「あ?あれダビデ王じゃねえか?おい…何かこっちに向かってくるぞ…」
まさか、あのソロモンの父親であるダビデがこちらに来るなんて思わなかったのだろう。
マルファスは慌てていた。
(げ!あいつの父親ってだけで関わりたくねえし、しかもヤハウェ信仰者だよなあいつ…)
マルファスはダビデに苦手意識があった。
「君達!突然済まない。もしかしてソロモンに支配されていた悪魔なのか?」
「あ、ああそうだぜ……(こいつすげえオーラだな……威圧されちまう……)」
「そうなのか…。私はソロモンの父親である元古代イスラエル王ダビデだ。私の息子が迷惑をかけて申し訳なかった。息子の代わりに謝罪する」
ダビデはそう言って頭を深々と下げた。
「い、いや別に謝ってもらう必要はねえよ!」
(こいつ…けっこう良い奴なのか?)
思わず見直してしまうマルファスなのだった。
***
その後、私達が宿に戻ると、見知らぬ男の人がダビデを訪ねてきていた。
「私は王家の使いの者です。王が貴方に依頼があると言っております」
話を聞くと、ダビデの竪琴の演奏は王家にも噂が届き、国営のコンサートを開催したいという依頼が来たらしい。
「引き受けていただけますかな?」
「……まあ、やるだけやってみようじゃないか」
こうしてダビデは依頼を受けることにしたのだった。