38 あなたは神様?
《こんばんは。今度会わない?》
ソロモンさんからのメッセージが来ていた。
シンプルに書かれた内容を見てドキッとする。
(まあ、いいか……)
そう思って返信することにする。
やり取りをして会う約束を取り付けたのだ。
ダビデは竪琴を大事そうに抱えている。よほど嬉しかったのだろう。
「ここは宿屋だから弾けないな」
残念そうに言うダビデ。
「外ならいいんじゃない。明日にでも聞かせてよ」
私は笑顔で提案する。
もしこの街の人達がダビデの竪琴を聴いたらどんな反応するんだろう? ちょっと楽しみだなー♪
***
翌日の夜、クエストを終えた私達は広場に向かった。
ダビデは早速竪琴を取り出し弾き始める。
最初は何の曲かわからないくらいゆったりとしたメロディーだったが次第に軽快なリズムに変わり明るく楽しい感じの曲調になっていく。
その旋律に合わせて人々が集まり出した。
「これは音楽?音楽を弾ける人がいたのか」
「すごい。聴いてるだけで心が弾むわ」
人々は口々に感嘆の声を漏らす。
やがて人だかりができ、演奏を聴いている人も増えてくる。
みんな楽しそうだ。音楽っていいなあ……。
みんなの心が一つになった感覚があるっていうか、すごく心地良い気分になれる。
そうだ。これって大好きなアーティストのライブ会場にいる時の感覚に似てるかも!
私もテンション上がっちゃう。
曲が終わると割れんばかりの拍手が起こった。
「素晴らしい演奏だったぞ!」
「こんなに感動したのは久しぶりだ」
人々はみんな笑顔でダビデを賞賛する。
すると1人の子供がこう尋ねた。
「お兄ちゃん。もしかして最近こっちに来たってみんなが噂してる異世界の神様なの?」
子供の質問に周囲はざわめく。
子供は純粋な目でダビデを見つめている。
「私は神様ではない。人間だ。訳あって最近この国にやって来た」
その言葉に周囲が再びざわつく。
中にはがっかりしたような声も聞こえてくる。
異世界の神ではないかと期待していたみたい。
でも人々はダビデを囲んで、口々にお礼を言い始めた。
「ありがとうございます!」
「あなたのおかげで元気が出ました」
「本当に素敵な演奏でした!」
ダビデは戸惑っていたようだがすぐに笑顔になり、こう言った。
「喜んでもらえて何よりだ」
あっという間に人気者になってしまったようだ。
その後もダビデの周りには次々と人が集まってきて、彼を褒め称える言葉が投げかけられるのだった。
少し寂しい気もしたが、彼がみんなに認められていく姿を見るのはとても嬉しいことだった。
そんな様子を遠くから見ている人がいることに、私は気付かなかったのだったーー。