37 ヘラクレスの友情宣言
「……ありがたいお言葉ですがお断り致します。私の主はヤハウェさまだけですから」
ダビデは少し考えた後、きっぱりと断った。
「何……!」
アポロン神は怒りの表情を見せた。
そりゃそうだよね。
せっかく自分の従者にしてあげようって申し出たのに断られるなんてプライド傷つくに決まってるよ。
「アポロン…。落ち着けよ…。こいつはあくまで客人なんだし、無理強いしても仕方ないだろ」
ヘラクレスさんが仲裁に入る。
ナイスフォローだよ! さすがヘラクレスさん。
「それより、約束通り竪琴をダビデに献上してやれ」
ヘラクレスさんはアポロン神に向かって言った。
「ああ、わかっているさ……」
アポロン神は渋々といった感じで答えた。
(この俺の申し出を断るとは…。面白い。ますます興味が出てきたな)
「ではこれをお前に授けよう」
アポロン神はそう言って、竪琴をダビデに渡した。
「心より感謝申し上げます」
ダビデはそれを受け取り深々とお辞儀をした。
***
「お前、すごい奴だったんだな。お前の竪琴を聴いたら眠ってた。ふわああ…」
ヘラクレスさんは眠そうにあくびしながらダビデにそう言った。
ダビデは、前の英雄モードと別人みたいになってるヘラクレスさんに最初は困惑してたけど、もう慣れたみたい。
「いえ、私など大したことありませんよ」
謙遜しているけど、実際すごかったと思うんだよね……。
だって神の前で演奏するなんて普通できないもん。。
「お前、良い奴そうだしお前のこと気に入った。友達になろう」
そして何故かいきなり友情宣言されてしまったーー!!
え?あの大英雄のヘラクレスさんに!?
「ヘラクレス様。私はただの人間ですが…」
「ヘラクレス様なんて虫唾が走る、呼び捨てでいい。あと敬語とかいらないからさ」
ヘラクレスさんは気さくな感じで言ってきた。
結局ヘラクレスさんの勢いに負けて、ダビデとヘラクレスさんは友達になったのである。
「またお前の竪琴を聴かせてくれ!気を付けて帰れよ〜」
ヘラクレスさんに見送られながら私たちは帰ることにしたのだった。
「ダビデ!竪琴の演奏すごかったよ!それに無事に手に入って良かったね!!」
私は帰り道で興奮気味に話しかけた。
「ありがとう。君のおかげだ」
「えへへ♪あ、あれ??」
何だろう?急に体が震えてきた。
あ、自覚なかったけど緊張してたんだ。安心したら今頃震えてきちゃったみたい。
「大丈夫か!?」
私が震えているのを見てダビデは心配してくれたようだ。
「うん、大丈夫だと思う。多分疲れただけだろうし」
すると突然肩を抱かれた。
「?」
「歩けるか?私に寄りかかればいい」
そう言って優しくエスコートしてくれる。
女の子扱いされてるようで少しくすぐったい気持ちになった。
体が密着してるからか安心できる感じがするな……。
(女性は、こういう男を好きになるものなんだろうな)
そんなことを考えている自分に気付き、思わず赤面してしまう。
(あれ……?何でドキドキしてるんだろ…)
いやいや、きっと慣れないことばっかりしたから疲れてるだけだ……たぶん……。
でもやっぱり肩を抱いてくれてる手は優しくて温かいな……。
無事帰ることができ、私は携帯端末にメッセージが届いてるのに気付いた。
それはソロモンさんからの誘いだった。