35 噂するソロモン72柱の悪魔達
異世界を訪れていたソロモン72柱の悪魔達は、集まって話していた。
「しかしソロモン王が我々を支配しようとしないとは意外でしたね」
ムルムルはそう発言した。
「それに、あいつ生前はもっと落ち着いてたよな?けど転生したソロモン王はチャラくなった気がするぜ」
マルファスはそう言って首を捻った。
「生前は王だったから威厳を出していたのだろう。そして憶測だが、転生した人間は生前の記憶は保持しても、精神年齢は肉体年齢に引き摺られるのではないか」
バルバトスがそう言うと皆納得したように頷いた。
「なるほど!さすがです!私は今のソロモン王は良いと思います。何だか楽しそうに見えます!」
ヴアルは目を輝かせながら言う。
(こいつはお人好しだからな…そこが憎めないが)
バルバトスはそう心の中で呟いた。
ヴアルは他の悪魔達とは違い、ソロモンへの不信感は抱いていないようだった。
ソロモンはソロモン72柱の悪魔達を服従させていたがお気に入りの悪魔達には甘い所があったからだ。
ヴアルは特に可愛がられていて優しく接されていた為、ソロモンとの思い出もたくさんあったのだ。
かつて封印されてしまったが、ヴアルの性格もあり憎む気持ちはあまり無かったのである。
「ソロモン王のこと、アスモデウスが知ったらどうなるだろうな」
マルファスの発言に一同黙り込む。
アスモデウスの怖さを知っている彼らは身震いするのだった。
***
ソロモン72柱の悪魔達が噂しているソロモンは、悪魔達に運ばせた書物に目を通していた。
そこには様々な種類があり、現代の知識や情報を得るには最適な代物だった。
そして書物の中には歴史本や神話伝承などもあった。
ソロモンは「聖書」を読んでいた。
彼が生きていた時代より前の時代から、生きていた時代、そして自分の死後の歴史がそこには記されていた。
(記録書とはいえ物語や神話的要素が加えられているだろうが…僕が死んだ後イスラエル王国は滅亡の道を辿ったのか…僕が主に背いたために)
ソロモンが3代目イスラエル王だった頃、彼は類い稀な知力と神ヤハウェの加護により、イスラエル国を栄えさせ豊かな国にしていった。
しかし彼は、真理を悟るためあらゆる快楽と享楽を追求した結果、ヤハウェが禁じる異教に走り、ヤハウェを信仰しなくなったため、神は怒り、イスラエル王国の滅亡に至ったとされている。
ソロモンは誰にも見せない顔をしていた。
いや、彼自身も自覚していないかもしれない。
その顔は悲しみに満ちていて今にも泣き出しそうな子供のような表情をしていたのだからーー。
聖書において、ソロモンはイスラエルを最も栄えさせた王でしたが、外国人の妻を多く娶り彼女達の影響で異教の神を信仰する邪道に走り、神ヤハウェに背いてしまいます。
そしてそのことで神の怒りを買い、王国の滅亡のカウントダウンが始まりました。