33 ギャップが激しい英雄
「ふああ…眠いなぁ」
翌日、約束通りヘラクレスさんに会いに行くと、何だか昨日とは雰囲気が違うような…?
(あれ?昨日はいかにも英雄って感じの人だったのに何だかマイペースっていうか、眠そうだし……)
「あ、君昨日の?1人?あの男前は?」
ヘラクレスさんは眠そうにそう聞いてきた。
(なんか英雄ヘラクレスのイメージと違うなあ……)
「えっと、実はですね……」
私が事情を説明すると、彼は納得したように頷いた。
「そうなの?俺にはよくわからん話だが。まあ細かいことはいい」
ヘラクレスさんはニコニコしながら答える。
(なんだか調子狂うなぁ……)
「あの、ヘラクレスさま。お礼なのですが、あまりお金がなくて…」
「ふああぁ…別にいらないよぉ……」
あくびを噛み殺しながら返事をするヘラクレスさん。
「そんなわけにはいきません!」
「そうか?だったら、俺の愛する妻に土産を買いたいから女性である君の意見が聞きたいな」
なるほどそういうことか。
私は今は女の体だけど、元の世界は男なんだよね…。
でも女の子が好きなものや心理はわかるからたぶん大丈夫!
「じゃあこういうのはどうでしょうか?花を贈るというのはどうでしょう?」
するとヘラクレスさんは少し驚いたような顔をした。
「花、か。そんなのでいいのか?記念日でもないんだが」
「女性というのはですね。普段の何でもない日に花を贈られたりすると嬉しいものなんですよ?」
うん、元の世界のネットで見たことあるし。
「おお、そうか!」
そう言って嬉しそうに笑うヘラクレスさん。
だけどこの国には花屋なんてものはない。地図を調べると花畑を見つけたので行ってみることにした。
道中、私は自己紹介も兼ねて自分が別の世界からこの異世界に転生してきたことを話した。
「へえ、君も異世界に来た人間か。実は俺たち神々は君がいた世界から最近こっちに来たんだ。今は信仰も薄れているから」
なんと、神々がこっちの世界に来ていると!
「では元の世界に戻る方法をご存知なんですか!?」
期待を込めて尋ねると、彼は首を横に振った。
「うーん、人間は無理だと思う。死んで冥界からこの世界に転生していると聞く。俺たち神々は行き来することはできるが人間は無理だ」
その言葉を聞いて落胆してしまう私だけど、気になることを話した。
「実は私…死んだ記憶ないんです。ダビデ…昨日一緒にいた人は死ぬ時の記憶があるけど、私は死んだ覚えがないんですよ」
「そうなのか?済まん、それは俺もわからんなあ」
「そうですか……」
結局わからず終いか。でもそんな簡単に帰れるとは思っていなかったけどね……。