30 ソロモンとソロモン72柱の契約
ダビデ達が天使に遭遇していた頃、ソロモンの方はーー
ソロモン72柱の悪魔達に、ある提案をしていた。
「僕と手を組まない?」
と……。
悪魔達は困惑していた。
「断ると言ったら?」
ムルムルが言った言葉にソロモンは笑って答える。
「別に良いけど。その時は指輪を使って無理矢理従わせるだけさ♪」
ソロモンは笑いながら言う。
悪魔達は冷や汗を流しながら思った。
(こいつ、マジでやりかねないぞ……)
「………手を組むとは、我々は何をすれば良いんですか?」
恐る恐る尋ねるムルムルにソロモンは言った。
「一つ確認したいんだけどさ。君達って異世界に転生したんじゃなくて行き来してるんだよね?」
ソロモンの言葉に悪魔達は頷く。
(やはり僕の見解は当たっていたか。転生してしまった人間の僕には不可能だが、悪魔であれば可能なようだな)
「そうかそうか♪うん、簡単なことだよ。僕が指定する物をこっちに持ってきてくれればいいだけさ」
(そんなことでいいのか?)
(また服従させられるよりはマシだな)
こうして、悪魔達とソロモンの契約が成立したのであった。
「ソロモン王。温情をありがとうございます!私はソロモン王のためにできることはしたいと思います!」
そう言ってくれたのは、ヴアルだった。
ソロモンは一瞬驚いた顔を浮かべたがすぐに笑顔になり、ヴアルの手を取ると言った。
「ありがとう、嬉しいよ」
そして続けて言った。
「これからもよろしく頼むよ」
「はい……!」
そう言って嬉しそうに微笑むヴアルだった。
***
物語は主人公側へと戻る。
(ダビデが欲しいって言ってた竪琴…探したけどこっちの世界にはないんだな…)
私は少し落ち込んでいた。
この世界は、魔物が氾濫して、かつて人類絶滅危機にまで陥ったらしい。
今は復興して、魔法の存在により文明など発達しているものの、人口は少なく魔物対策が最優先らしい。
豊かに見えても脅威に常に脅かされている世界なのだ。
なので芸術や娯楽文化はあまり発展していないみたい。
ここには音楽もなく、まして楽器なんて存在しないのだ。
(無理なのかなぁ。ああ、こんな時に神様が現れてくれたらなぁ)
困った時の神頼み精神になる私。
我ながらちゃっかりしてるなあ。
だけど、求めよさらば与えられんという聖書の言葉。
まさか、本当に神様達と知り合うことになるとはこの時は思いもしなかった。