21 ソロモンとのデート
元の世界とは別の世界である異世界ーー
この世界にはこの世界の神がいるのであれば、自分が信仰してきた神ヤハウェはいないのか?
ダビデはそんな不安で落ち込んでいたようだけど、存在することに変わりはないと信仰を貫くことを決めたようだ。
良かった。元気になって!
「ねえ、ダビデは何かしたいこととか欲しいものってないの?」
ふと思いついて聞いてみる。
「ん?急にどうしたんだ?」
不思議そうに首を傾げる彼だったが、少し考えて答えた。
「竪琴、かな」
「竪琴?」
「ああ。私は生前、竪琴の演奏が得意だった。竪琴を弾くと心が落ち着くし、それに聴いている者にも安らぎを与えられるんだ」
(へえ〜)
知らなかった。ダビデって音楽の才能があったんだね。
意外というか何というか……。
いや、待てよ?それってつまり。
(ダビデが演奏するのを聴いてるだけで癒されるってことだよね!?)
やばい!めちゃくちゃ聴きたいんですけど!!
「そっかあ。もし竪琴が手に入ったら聴かせてくれる?」
「ああ、もちろんだ!」
竪琴の話をするとこんなに嬉しそうな顔するんだ。
何とかして弾かせてあげたいな!
そう思う私だった。
***
そんな話をした数日後のことだった。
ソロモンさんとお茶をする約束の日がやってきたのだ。
(うーん緊張するなあ、これってデート…じゃないよね?)
そう自分に言い聞かせていると、ソロモンさんが現れた。
さすがはダビデの息子。父親に劣らず美男だしまさに容姿端麗。
歩いてるだけでキラキラ輝いて見えるくらいだ。
この人も王様だったんだよな。王様オーラすごいわ。
「待たせたね、ヤマトちゃん」
「い、いえ……」
緊張のあまり声が上擦ってしまう私であった。
そんな私にソロモンさんは優しく微笑みかけてくる。
「さあ、行こうか」
***
この異世界の国は人口が少ないためか、現代の世界にあったようなカフェはない。
冒険者のための宿屋や食堂があるくらいだ。
そういえば娯楽施設のようなものはこの国にはないかもしれない。
彼が案内してくれたのは美しい庭園だった。
それなりに身分が高い人や裕福な人でないと利用できないらしいのだが、今日は特別に貸し切りにしてもらっているという。
(すごい…この人、そんなにお金持ってるのかな?)
そこまでしてもらう価値はあるのだろうかと思ってしまう自分もいて複雑な心境になった。
「わあ、綺麗……」
思わず感嘆の声を漏らすと、彼は満足そうに頷いた。
執事のような人がお茶を運んでくれて、まるで貴族にでもなったみたい。
一口飲むと、爽やかな香りが鼻を抜けていくのを感じた。美味しい……!
ソロモンさんは話が上手く、陰キャラの私でも会話が続くので楽しい時間を過ごせた。
(緊張してたけど普通に良い人じゃん!よかったー)
そう思っているとソロモンさんは見透かすような目で私を見つめてくる。
そしてこう言った。
「君…何か秘密があるんじゃない?」
ダビデは少年時代、初代イスラエル王であるサウルの前で演奏をしていて、王宮の音楽家でした。
音楽の才能にも非常に恵まれた人物です。
ダビデの竪琴の演奏はサウルの鬱病を良くし、音楽療法の元祖とも言われているそうです。
またダビデは詩の才能もあり、聖書の「詩編」には彼が作った詩が多く載っています。