番外編2 異世界に迫る危機に奔走する聖書転生者たち④
その巨体からは想像できないほどのスピードで動き回る巨大生物に苦戦するソロモン達であったが、ここでソロモンがある提案をした。
「みんな、僕に考えがあるんだ」
それを聞いた一同は少し驚いた様子だったが、ソロモンはすぐに説明を始めた。
「僕の指輪には様々な能力が付与されているだろう?」
ソロモンは自分の手にある指輪を見つめながら言った。
この指輪によって聖書転生者達の能力が強化されていることは既に周知の事実であった。
「だからそれをうまく利用すれば巨大生物を倒せるかもしれないと思うんだ」
その話を聞いた聖書転生者達は俄然やる気になったようだった。
そんな彼らにアダムが言う。
「それでどうするんだ?」
その問いにソロモンは答えた。
「僕を含めた全員で必殺技を出すんだよ」
「必殺技だと……?」
「うん、聖書転生者全員に宿っている異能ーー異能力を最大限に引き出し、最大限の威力を持った技を巨大生物に向けて一斉に放つことで倒すことが出来るはずなんだ」
それを聞いて驚くアダムに対して、ソロモンはさらに続けた。
「それにはまず僕が異能力を発動しないと始まらないから、少しの間だけ時間を作って欲しい」
そう言うとソロモンは自分の前に巨大な魔法陣を出現させた。
聖書転生者達はそれぞれ自分の異能を発動させるべく、精神を集中させていく。
そんな中、巨大生物もまた攻撃の準備を進めていた。口から火炎放射を放ち、尻尾を振り回して周囲を薙ぎ払うなどして暴れ回っていたのだが、やがて動きを止めると口を大きく開け、息を吸い込み始めたのである。
(まさか……またあれを撃つつもりなのか……?いや、でもあれは予備動作が必要なはずだ……!今はそれが無い……!だとすると……まさか……!!)
何かを察したアダムだったが、既に遅かった。
次の瞬間、巨大生物の口から巨大な炎の球が発射されたのだ。
直径5メートル以上はあるであろう巨大な火球はそのまま真っ直ぐに飛び、聖書転生者達に迫る。しかしーー
「させるかぁぁ!!」
ーーダビデの放った一撃によって相殺されてしまった。
それによって巨大生物の攻撃を防ぐことは出来たものの、巨大生物も諦めていなかったようですぐに第二撃を放ってきた。
巨大生物は再び息を吸い込むと、先程と同じように火炎放射を吐き出す構えを見せたのだ。それを見たソロモンは慌てて叫んだ。
「今だ!いくぞ!」
ソロモンの掛け声と同時に聖書転生者達が一斉に動き出す。ソロモンは両手を突き出すとそこから魔力を放出し始めた。それと同時に他の仲間もそれぞれの能力を発動する。
(まずは父上!貴方の力を見せてもらう!)
ダビデの持っている竪琴から美しい旋律が流れ始める。
すると、その音を聞いた巨大生物の動きが鈍り始めたではないか。
ダビデは竪琴の演奏で魔物を鎮静化させる効果を持つことができるのだ。ダビデの演奏を聞いているうちに巨大生物は次第に大人しくなっていった。
(よし、成功だ!あとはみんなの異能力を合わせることができれば……!!)
その様子を見ていたソロモンは他の仲間達に指示を出す。
「全員、僕の周りに来て!」