番外編1 エピローグのソロモン視点 前編
エピローグの補完となるソロモン視点の番外編です。前後編予定です。
三人称になります。
ヤマトが元の世界に戻ってしまいその姿が光に消えてしまった後ーー
ソロモンはしばらく立ち尽くしていた。
もう会えないと思うと涙が止まらなかった。
嗚咽を漏らし泣き続けるソロモン。
すると隣にダビデがやってきた。
彼は泣いている息子を見てそっと肩を抱いた。
「辛いよな……」
ダビデはそう言って慰めてくれたがそれでも涙は止まらなかった。
やがて落ち着きを取り戻したソロモンは言った。
「父上……僕はどうしたらいいんだろう……」
するとダビデは答えた。
「お前はどうしたいんだ?」
「決まってる!また彼女と会いたい!彼女に会いたいんだ!」
そう叫ぶソロモンだったが、その言葉とは裏腹に体は動かなかった。
するとダビデが言った。
「そうか……。方法がないわけではないぞ」
「え……?」
驚くソロモンだったが、ダビデは続けて言った。
「異教の神であれば、人間をこの世界に転生させることができる。眷属としてな。お前も知っていただろう?」
(ああ、あれか……)
と納得するソロモン。
「そうか!あの子が元の世界の人生を終えた後であれば、こっちに呼び戻せるってことか!」
興奮気味に言うソロモンに対して、ダビデは静かに言った。
「……そうだ」
その言葉にソロモンの表情が明るくなる。
(やった!これでヤマトちゃんに会えるかもしれない!!)
そう思うと嬉しくてたまらなかった。
だがヤマトはこの世界に、別の肉体で転生していた。
かなり特殊な状態での転生だった。そして彼女は元は人間ではなく堕天使だった。
となるとソロモン達が信仰している神ヤハウェの許可が必要になってくるのだが……。
ソロモンは生前、ヤハウェに背信した過去を持つ。そのせいで彼の子孫は罪を背負い王国は消滅してしまった。
困難が予想されたがそれでもソロモンは覚悟を決めた。
「行くよ僕。必ずヤマトちゃんを取り戻すんだ!!」
決意を固めるソロモンだった。
***
神の信頼を取り戻すのは簡単ではなかった。
この異世界に建てた神殿で祈りを捧げてもなかなか効果が現れなかったからだ。
それでもソロモンは諦めなかった。毎日神殿に通い祈り続けたが神が応えることはなかった。
だが諦めずに何度も祈りを捧げ、3ヶ月以上が経過したある時ーー
神ヤハウェはソロモンにこう伝えた。
「あの堕天した天使を人間として呼び戻すのであれば責任を取って貴方が娶れ。そしてアダムが重婚を禁じたそうだが、一夫一妻を守ると誓え」
という指示を受けたのである。
それを聞いてソロモンは一瞬戸惑ったが、すぐに答えた。
「はい、誓います」
と。
それを聞いた途端、神の態度が変わった。
今まで頑なに拒んでいたものが急に手の平を返すように態度を変えたのだ。
ソロモンは生まれた時から神に愛されていた。神は彼に祝福を与えた。神の寵愛を受けるものは特別な力を得ると言われていた。
ソロモンはその力を存分に振るい、多くの人々を救ったと言われている。
「かつて女により堕落した貴方だが、今回は見事に試練を乗り越えた。貴方にもう一度機会を与えよう。今度こそ正しく生きなさい。そうすれば貴方の望む幸せを手に入れられるであろう。さあ行きなさい。我が僕よ」
そう言うと、ヤハウェは去っていったのだった。
こうしてソロモンはヤマトをこの世界に呼び戻すことができるようになったーーー
***
今度は異世界の絶対神ミュトスに、ソロモンはヤマトの魂を呼び出すことを願い出た。
彼女がこの世界にいた頃の姿のまま、彼女の記憶をそのまま残したままこちらに召喚したいというのがソロモンの要望だった。
それを聞くと、ミュトスは言った。
「その願いを聞き届けましょう。ですが、条件があります」
それに対してソロモンは言った。
「何でしょうか?」
するとミュトスは言った。
「貴方は彼女を幸せにできるのですか?」
その問いにソロモンは答えた。
「もちろん、絶対に幸せにしてみせます」
その言葉を聞くと、ミュトスは満足した様子で頷いた。
そしてソロモンはヤマトを呼び出した。
辺り一面に光が広がり、その中から現れたのは見覚えがある少女だった。
「あれ?ここはーーー?」
彼女は不思議そうに周囲を見回している。どうやら状況が理解できていないようだ。そんな彼女にソロモンは言った。
「久しぶり……だね……ヤマトちゃん……」
その言葉に彼女は驚きの表情を見せた。
「あなたはーーソロモンさん!?」
そう言って驚いた顔で見ている彼女にソロモンは優しく微笑んだ。
「良かった・・・また君に会いたかった」
ソロモンはヤマトを抱きしめ、涙ぐんだ声で言った。
元の世界に帰ってしまった愛しい人が目の前にいることに感動してしまったのだ。
(ソロモンさん……こんなに私のこと想ってくれていたんだ……嬉しい……)
そう思った瞬間、ヤマトも泣き出してしまった。
2人は抱き合いながら再会できた喜びに浸っていた。
そんな2人の様子を微笑ましく見守る人々の姿があった。それはダビデや彼の仲間達だった。
(良かったなソロモン…おめでとう……)
思わず涙ぐむダビデだった。
転生期間の矛盾(異世界では3か月くらいしか経ってない)については後半で…。