エピローグ
私は元の世界に戻り、性同一性障害を抱えながらも、そんな自分を受け入れて生を全うすることを決めた。
苦労もあったが、性別を越えた存在となれるように夢だったモデルの道に進むことができた。
恋愛はできなかったけど充実した人生だったと思う。
そして両親の最期を見送ることもできた。
だけどーーー
短い間であっても異世界で過ごした日々は忘れることはなく、ダビデやソロモンさん達とまた会いたいという気持ちはずっとあった。
私が元の世界で誰とも恋愛しなかったのはーーソロモンさんのことがずっと心に残っていたからだ。
私はあの時はまだ自分に自信がなくて卑下も強かった。
ソロモンさんの求愛を素直に受け入れられるほど強くはなかったのだろう。
あの時はまだ、彼の真剣な愛を素直に受け入れることはできなかったんだと、振り返ってみると思う。
(向き合うことから逃げてた、のかな)
そうして私は元の世界で人生を送りーー生涯を終えた。
性同一性障害を抱え、葛藤も辛いこともあった。
だけど後悔はしていない。私は十分に人生を謳歌できたと思うから。
***
「ヤマトちゃん」
懐かしい声だ。
私が目を開けるとーーそこにはずっと忘れられなかった顔があった。
「え!?ソロモンさん?」
私は驚きのあまり叫んでしまう。そしてさらに驚いたのはーー私の体は少女になっていたことだ。そう、それはかつて異世界で過ごした元天使だった時の私だった。
「良かった・・・また君に会いたかった」
「ソロモンさん……どうして?私は元の世界で人生を終えたのに」
混乱している私にソロモンさんは泣きながら私を抱きしめると言った。
「どうしても君にもう一度会いたかった。だから、呼び戻したんだ。我が神に許可を得てね」
そうか。ソロモンさんは、元の世界で人生を終えた私を再びこの異世界に転生させてくれたんだーーー
「ソロモンさん……元の世界でも貴方を忘れませんでした。私は誰とも恋愛できなくて…ずっと貴方が好きだったんです」
「ありがとう。ヤマトちゃん……もう君を離さないよ。永遠に」
彼はそっと私の左手を取り、かつて私に贈ってくれた美しい指輪を薬指に嵌めてくれた。
そして私達は唇を重ね合わせるのだったーー
END
完結しました。約1年10か月の連載でした。
読んでくださった皆様には心から感謝します。ブクマや評価を入れてくださった方々もありがとうございます。
また設定やキャラを貸して下さった異世界ミソロジー様にも感謝申し上げます。
まさか3万5千PV近くまで行くと思ってなかったので嬉しいです。
連載を続けるのを挫折しそうになった時期もありますが、読んでくださってる方々の存在が励みになりました。お陰で完結させることができました。
反省点は多々ありますが…。イエス様も登場させたかったんですが余裕がありませんでした。
最終話の補完として、非公開で書いていたソロモン視点の番外編(三人称)も続けて載せる予定です。
実は非公開で自分用に書いた長編の番外編があり、そちらは公開前提で書いてないので非公開にしますが、本編完結後の聖書転生者達がどんな風に異世界で過ごしてるか、という後日談の短編として一部公開しようかと考え中です。
本編は完結したのでもし読みたい方はどうぞ…という緩いノリで。なのでもう少し番外編として続きます。