194 ラファエルが語るヤマトの真実
それから1ヶ月が経った。
平穏な日々を送っていた私の元にある意外な来客があったのが事の発端である。
「貴方は・・・大天使ラファエルさま!」
ダビデと私の家に大天使ラファエルさんがやって来た。
私は、半ば混乱してまじまじと彼を見る。
「久しぶりだね、ダビデ王。それにヤマト。今日は大切な話があって来た」
「は、はあ・・・」
私は思わずダビデに視線を向ける。彼は少し驚いた顔をしていたけど・・・やがて頷いた。
「ダビデ王にはすでに話していたが…。ヤマト、実は君はかつて天使だったんだ。君のその姿は、天使時代の姿だ。ただし…堕天したから今の魂になっているし、記憶も欠落している。だがこの話を聞く覚悟は出来ているだろうか?」
「え・・・ええ!?私が天使!?」
私は目を丸くする。
「で、でも……私、そんな記憶全然ないんですけど……」
「それは当然だ。君は堕天使として神に背いた存在だからね」
ラファエルさんが言う。
「君は天使として忠実に仕えていたが、ある時人間の男に恋をしてね…。天使は人間と恋に落ちてはならない決まりがある。だが君は諦めきれずその男に近づこうとした。そして神に見つかり……天界を追放され、堕天してしまったんだ」
「そ、そんな・・・」
私は突然告げられた事実に言葉を失った。
ダビデが私の肩に手を置く。
「大丈夫か?」
私が顔を上げると、ダビデは安心させるように微笑んで見せた。
私もなんとか頷き返す。
「だが、君の場合は未遂だったから情状酌量の余地があるということで、神は慈悲として人間に転生して課題を出すことで許した。それが、君の前の世界の人間だ」
「・・・その課題って…私が性同一性障害になったことですか?」
「そうだ。そして今回の転生でその試練をやり遂げることができれば許されるはずだった…。だが、女神セナムーンが君をこの異世界に呼んでしまった。君は人間に転生していたが、天使としての魂は残っていたからね」
ラファエルさんは私とダビデを見て言った。
「神はこの世界に直接的に干渉してないが…君たちを見守っていた。ダビデ王を始め君たち転生者の信仰心は神に届いていたからだ」
「おお…それは本当ですか!?我が神は、我々を見ていてくださっていたのですね…!主よ・・・」
ダビデは感極まったように涙ぐんでいる。
私は、まだ話についていけてなかったんだけど……。
「ヤマト。神は君を、元の世界に戻していいと仰っている。だが、君に選択を与えるそうだ。即ち、元の世界に戻るか。それともこの異世界で生きるか。そのどちらかだ」
「え・・・」
元の世界に戻れる・・・?
家族と会えるの?
ずっと元の世界に戻りたい気持ちはあった。だけど・・・
元の世界に戻れば私は男に戻ってしまう…。
それにソロモンさんやダビデ達と会えなくなる……。
突然の人生の岐路に、私は思考回路が追いつかなくなるのだった。