188 迫る裁きの時
女神セナムーンさんはすでに裁定機構に飲まれているようで、その瞳からは一切の感情を読み取れなかった。しかしその存在感は圧倒的で、ただそこに立っているだけで強烈なプレッシャーを与えてくる。
そして、彼女の背後から光り輝く魔法陣が浮かび上がり私たちに向けて襲い掛かってきた。
「避けろ!」
アダムの合図と共に全員が回避行動を取ったものの完全には避けられなかった。攻撃範囲が広く防御障壁すら破壊されてしまっていたのだ。幸いにも直撃は免れたものの、その衝撃で全員バランスを崩し倒れ込んでしまった。
「くっ・・・」
必死に立ち上がろうとする彼らだったがセナムーンさんの追撃が迫りつつあった。
だけど、その前に立ちふさがる人物がいた。
「ここは私に任せてくれ」
ダビデだ。彼はセナムーンさんに相対するようにして立っていた。その表情は決意に満ちているように見える。そして剣を抜き放ち叫んだ。
「覚悟しろ女神!私が相手になってやる!」
セナムーンさんはそんな彼を冷たく一瞥しただけで何も答えなかった。まるで興味がないと言わんばかりの態度だが、その体から発せられる威圧感はまさに神だと思えるほどだった。だけどダビデは臆することなく向かっていった。
「くらえっ!」
ダビデの剣とセナムーンさんの結界がぶつかり合い激しい火花が飛び散っていた。互角のように見えた戦いだったが、次第に押され始めるダビデの姿が見えた。
「くっ・・・なんだこの力は・・・」
そう呟くと同時に剣を弾き飛ばされてしまう。そして無防備になったダビデに向かって手を掲げるようにして伸ばすと次の瞬間には光球が出現し彼目掛けて放たれた。
直撃すれば即死してもおかしくない威力の攻撃に思わず目を背けてしまったが、その攻撃は彼に届く前に消滅していた。
「ふーん、貴方達の支配者であるこの私の異能も無効化できるとはやるわね、アダム…。大方、ソロモンが小細工
を仕込んでいるのでしょうけど、それもいつまで持つことやら」
そう言ってセナムーンさんは微笑んだ。だがその微笑みは天使のように美しくても悪魔が誘惑しているかのように恐ろしかった。