187 あの頃の私とは違う
集結した聖書転生者達に共鳴するかのように空が、静かに震えていた。
地脈は軋みを上げ、空間が歪んでいく。
それはまるで世界そのものを裁定する機構が動き始めたかのようだった。
セナムーンさんはゆっくりと私達に近づき、そして口を開いた。
「時は来た」
その瞬間、神域に巨大な魔法陣が浮かび上がり、光が放たれる。まるで空に新たな術式を描き出すように。
《結界が起動します》
声が響くと同時に、空間がさらに激しく揺れる。その振動は徐々に強くなりながら、次第に大きくなっていく。それはまるで世界の崩壊そのものを体現しているようだった。
「この結界は、私の力によって作り出されたもの」
セナムーンさんは淡々と語っているけどその目は獲物を狙う獣のように鋭かった。
「この結界は、神域を強制的に再起動させ、魂の再構成を開始する鍵となる」
その言葉に呼応するように空が再び輝き始めた。まるで世界が新たな秩序に作り替えられていくかのように、その光は強さを増していった。そしてそれは同時に私たちとセナムーンさんの決戦が避けられないことを意味していた。
「私たちは、この世界を守るために戦います」
私は決意を込めて言った。その言葉を聞いた仲間たちもまた同じように強い意志を持って前に出る。その様子を見たセナムーンさんは一気に距離をつめてきた。
「では、こちらも全力で防がせてもらうわ。・・・私の申し子達」
次の瞬間には強烈な衝撃が私たちを襲い吹き飛ばされていた。
「気を付けろ。相手はこの世界の元女神、そして我々の魂の管理者。これまでの敵とは訳が違う」
アダムが冷静に分析しながら、次の一手を考えていた。
「だが、ここで負けるわけにはいかない!」
ダビデもまた決意を込めて剣を構えた。
そして他の仲間たちも同じように武器を構えて戦闘態勢に入る。その様子を見ていたセナムーンさんは静かに言った。
「では始めましょう、最後の審判を」
と。その瞬間ーー
「女神の狙いはイブだ!!アダム殿、貴方はイブを守ってください!」
ソロモンさんが叫ぶ。そして今度は私に向かって言う。
「ヤマトちゃん、君は回復役だからイブと一緒にアダム殿の元にいてくれないか」
私は戦えない。だけど回復役としてなら役に立てるーールシファー軍団との戦いの時は足手纏いにしかなれなかった。
だけどーーー
今はあの頃の私と違う!自分を役立たずや足手纏いと卑屈になるより自分ができることをするんだ。自然とそう思えていた。
「イブさん!私から離れないでください!」
「ええ、わかったわ!」
私たちは身を寄せ合いながら、セナムーンさんとの戦いを見守ることにした。