表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したら聖書の登場人物がいる世界だった  作者: B-pro@神話創作してます
魂の選び、世界の揺らぎ
184/211

180 ソロモンの知恵の煌き

「選別……?」


女神セナムーンの言葉が、大広間に冷たい波紋のように広がっていった。


だが、それ以上の説明はなされることなく、彼女は光の柱と共に姿を消す。


ただひとつ、空間に残された響きだけが、全員の胸に居座った。


——選別。

——次の世界。

——神の器。



その言葉が、私達の心に不安の種を蒔いていく。



「……一体、何が起こるんだ」


誰かが呟いた。その声が、全員の疑問を代弁しているように聞こえた。



***



その夜、ソロモンは静かに書庫の扉を閉じた。


蝋燭の炎が揺れ、古びた魔導書の頁を照らしている。


全ての指には装飾が施された指輪——ソロモンの指輪が嵌められていた。


「やはり……来たか」


ソロモンは独りごちた。


あの選別の言葉。

あれは、ただの霊的査定ではない。


——魂の支配を強めるものだ。


「神の器……つまり、この世界をセナムーンの定義した神性に沿わせるということ」


彼は静かに、指輪に触れる。


「選ばれる魂とは……彼女にとって都合の良い魂。ならば選ばれない魂は、切り捨てられる。その先に何があるか……もはや言うまでもない」


ソロモンの指先から、淡い青白い光が漏れる。


それはこの世界の魂循環と共鳴する光——禁術級の『魂の構造解析』


彼は迷っていた。


この指輪を本格的に起動すれば、セナムーンに必ず察知される。

だが、もう時間がない。



「ヤマトちゃん、父上……」


彼は小さく呟いた。



(もう一度、選択の余地を作らなければならない)


指輪が静かに輝き、空間に複雑な魔法陣が浮かび上がる。


ソロモンはそれに、ひとつの仕掛けを施す。


——魂の構造に直接干渉せず

——だが、束縛を緩める回路。


この小さなゆるみが、いつか“自由への道”に繋がると信じて。



***


その頃主人公ヤマト側は——



私はまた夢を見ていた。


白い空間。淡い光の中、ひとつの繭が、微かに震えていた。


(これは……また……)


手を伸ばそうとしたその瞬間。

繭の奥から、声が聞こえた。


——わたしは、誰……?

——ここは、どこ……?

——わたしは、生まれて、いいの……?


目を覚ました私は、額に汗を浮かべていた。


「……イブさん?」


なぜか、その名が脳裏をよぎった。

まるで誰かが、私の中にその答えを預けてきたように——





一方、神域の奥深く。


セナムーンの前に、ひとつの球体が浮かんでいた。


それは揺らぐ魂の繭。


「また……あなただけが反応するのね。イブ」


女神の瞳が、わずかに陰りを帯びる。


「あなたが目覚めれば、他の魂も目覚めてしまう——そんなことは、まだ許されない」


セナムーンは両の手を翳す。

新たな拘束結界が、繭の周囲を封じてゆく。


だがその直後——


球体の表面に、一瞬の波紋が走った。


(これは……!?)


セナムーンの表情が変わる。


その波紋は、彼女の想定をわずかに超えた“外部からの干渉”によるものだった。


——誰かが、結界に微細な歪みを作り出している。



「……まさか、ソロモン……?」


その名を呟いた瞬間、女神の背に漂っていた光が、わずかに揺らめいた。


物語は、誰も知らぬ方向へと静かに動き出していた。


光と影、支配と自由。

魂の行く末を決める真の選別が、始まろうとしている。

読んでくださってる皆様、ありがとうございます。


当小説はリアクションのお気遣い無用です。読んでいただけることが有難いと思ってます。

ですがブクマや評価は励みになります。⭐︎1から歓迎です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ