17 別れる親子
突然のダビデの大声に驚くソロモンさん。そして私もビクッとした。
(びっくりしたぁ……!!)
ダビデったらいきなりどうしたんだろ……?
「父としてお前の愚行を見逃すわけにはいかない。やめろ。わかったな?」
「……」
沈黙してしまうソロモンさん。
いくら父親だからって、それだけで従うのかなあ?
さっきのやり取りじゃソロモンさんの方が優勢ぽかったし。
「………わかったよ」
へ???
今なんて言った??
たったあれだけで引き下がったっていうの!?
「ソロモン。わかってくれるか。ところで、お前も我々と仲間にならないか?こうして再会したのだからな」
ダビデは先程の厳しい顔を一変させ、いつもの穏やかな表情に戻っていた。
まるで別人のようだ。
しかし、それを聞いたソロモンさんは顔をしかめると、首を横に振った。
「悪いが、お断りするよ。僕はもう子供じゃない。保護者は必要ないんだ」
「そうか……残念だ」
心底残念そうに呟くダビデ。
「ま、同じ街にいるんだ。いつでも会えるだろう。またね」
そう言ってソロモンさんは去っていったのだった。
残された私達はというと、その場に立ち尽くしていた。
「ヤマト、済まなかった。親子喧嘩を見せてしまったな」
「いや、私は大丈夫」
ソロモンさん…あの有名なソロモン王のことだよね。
確かソロモンの指輪で悪魔を従えてた伝説があったような……。
本当のことだったんだ。
うーん、神話は好きだったし聖書も少しかじったけど、もっと聖書を勉強しておけばよかったなあ……。
「でも…大丈夫なのかな?口約束しただけで、後で悪魔達を服従させるんじゃ…?」
私が不安を口にすると、ダビデは答えた。
「いや。その心配はないさ。あいつは約束を守る男だ」
ダビデは確信してるみたい。すごい自信だなぁ。
ともかく一件落着かな。
だが心なしかダビデは顔色が曇って
見えたのだった。
(ここには…この世界には主はいないのか……?そうだとすれば私は……)
ダビデが心でそう葛藤していたことを私は知る由もなかった。
ソロモンは聖書の「箴言」の作者で、多くの教えを残していますが「父の教え(論し)を聞き従え」と箴言で語っています。
また聖書の列王記においても「父ダビデ」とダビデの名を出すことも多く、ダビデは前王だったからでもあるでしょうが、父であるダビデの影響は大きかったのではないかと推測します。