169 父と息子の確執
「ソロモン?どうしたんだ?」
ヤマトを捜索していたダビデは、偶然ソロモンを見かけたので普通に声をかけたのだがーー
「!!??」
気が付いたらソロモンに胸倉を掴まれていたことで驚愕してしまう羽目となったわけでーーーー
「何故ヤマトちゃんを放っておいたんだ。あの子に何かあったら、例え貴方でも許さないからな……!」
「おい、落ち着けっ!!」
普段の冷静な彼からは想像もつかぬほどの剣幕で怒鳴りながら迫るソロモンに対し、ダビデは冷静に対処しようと努める。
「父に向かって何て態度だ!」
そんなやり取りをしていると騒ぎに気付いたのか、カイン達も駆け寄ってきたようだった。
「何やってるんだよお前ら……。おい、ソロモン。相手は父親だぞ」
呆れた様子で問いかけるカインの言葉にソロモンはやっと手を離す。
「俺の異能で、嬢ちゃんの行方を探ってみたんだがどうやらここじゃない場所に行ってたみたいだな」
「何…!!」
カインは植物の声を聞く異能を持っているため辺りの様子を探ることができるらしい。相手は植物なのでアダムの動物の声を聞く異能ほど具体的ではないが範囲はかなり広いようだ。
「だが、もう戻ってきてるみたいだぜ。だからそんなに心配するなって」
その言葉に2人はひとまず安堵するが、ソロモンはダビデのことを睨みつけると不機嫌そうに言い捨てる。
「貴方のことは信頼していたが今後は警戒させてもらうことにするよ」
それだけ言い残し去って行った息子の背中を見送りつつダビデは思ったのだった。
(ソロモン……お前まで私の事を……)
***
「ここでいいのか?ヤマト」
「はい。ありがとうございます。ここまで運んでくれて」
「ちゃんと家に帰れよ?また遊びに来てくれよ、じゃあな」
私を街まで送り届けてくれたバルバトスさんはそのまま帰って行った。本当優しい人だよね・・・。
(ずいぶん遅くなっちゃった。ダビデに怒られるかな……うん、叱られても仕方ない。覚悟しよう)
そう思いながら私は家に帰ろうと歩を進める。その時ーーーー
「ヤマト!!!」
聞き慣れた声が背後から聞こえたと思えば強く抱きしめられたのだーーーー 後ろから伸ばされた手は私の顔を覆いつくすかのような勢いだったことから本気で心配した事がわかる。
「良かった、無事で…。心配したぞ」
「ダビデ……」
ダビデは私から体を離して頭を撫ででくれる。よく見ると服も少し乱れてて、顔に疲労の色が浮かんでるようだったからよほど心配してくれてたのだろうと思った。
(もしかして今まで探してくれてたの……?そんなに疲れてまで……)
申し訳なさと同時に泣きたくなるような、喜びが入り混じった感情が湧き上がってきて胸がギュッと締め付けられるような感覚がした・ やっぱり嬉しいって思っちゃうんだよね、私は彼が好きだってことを再確認させられてしまったような気がしてしまう・・・
「えっと……ごめんなさい、遅くなっちゃって・・・」
とりあえず素直に謝罪の言葉を述べることにしたんだけど。ダビデが無言でじっと見つめてくるので段々気まずくなってきたというか居心地の悪さを覚えてきてつい俯いてしまったのだけれど・・・・・・・・?
しばらく待っても何も言ってくれないのでさすがに不安になって顔を上げるとーー
(え・・・嘘、でしょ……)