168 ソロモン72柱の悪魔達に恋愛相談をするヤマト
ソロモン72柱の悪魔達は、この異世界に自分達の国を作ってる所らしい。
「あの、私にも何かできることはありませんか?」
彼らは今国作りをしてる最中なのにお邪魔したのが申し訳なく私はおずおずと申し出た。
「貴女って本当に真面目なのね。でも人間の意見も参考になるから少し手伝ってもらえると私達も助かるわ」
アスタロトさんは苦笑しながらも承諾してくれた。
悪魔達は自分達の国を作るにあたり、時にソロモンさんから監督や指導を受けながら進めているところなんだとか。
ソロモンさんってイスラエル国王だったもんね。色々知識があるだろうし頼りにしてもらえそうだもの、私も何か力になれたら良いんだけど。
***
結局、娯楽施設を作るために意見を言ったり軽作業くらいしかできなかったものの感謝してもらえて良かった。
それに作業してるとダビデのことも考えずに済んで少し気分転換にもなるしね。
そして今はみんなでお茶を飲んで休憩しているのだけど。
「小娘。その節は悪かったな」
「あ、貴方は……アスモデウス!?さん……」
何と、以前ソロモンさんを誘拐したアスモデウスがその場にいることに私は思わず身構えてしまう。
だけど彼は改心したし、それにルシファーに捕えられた私を助けてくれている。
「いえ…あの時は助けてくれてありがとうございます」
「いや、当然のことをしたまでだ。ところでお前…愛に悩んでいるのか?」
「え!?」
何でもアスモデウスは人間の愛に関して造詣が深いそうでそんな私の悩みを読み取ったような発言をしてきたのだ。
っていうかまさか私が恋愛で悩んでるって気づいたの!?この人すごく鋭い……!
「え、それってソロモン王のこと?」
「人間の恋愛の悩みか、興味深いな。聞かせてくれよ」
私の恋の悩みに興味津々と言った感じで目を輝かせる悪魔達に退路を塞がれる形で根掘り葉掘り聞かれることになってしまった・・・!(汗)
「ソロモンさんのことじゃありません…!誰かは言えないですけど…今好きな人がいて…でも彼から娘みたいに思ってるって……だから辛いんです……」
思わず本音を漏らしてしまい項垂れていると、悪魔達は同情するように優しく接してくれる。それはまるで親のような暖かさがあって心地よかった。
「そうですか。それは辛いですね…」
「けどよ、まだチャンスはあるかもしれねーぜ?元気出せよ」
ヴアルさんやマルファスさんも励ましてくれようとしているみたいで嬉しかったし救われた気がした。そんな中アスモデウスが口を開く。
「愛とは思い通りにならないものだ…。人間の恋愛とは一方通行なことは多い。だがそれ故に燃え盛ることがあるのだ」
「そうなんですか……?」
何だか一般論というより「体験談」に聞こえるような…でもこの人に限ってそんなわけないか…?
「『恋』に溺れていては自分を見失う。
自分のことだけを考えてはいけないーー相手が一番輝く瞬間を引き出すことを考えろ」
アスモデウスが「恋」という言葉を言った途端、ムルムルさんとマルファスさんがこっそり笑ってたけど、本人は気付いてないみたい。
さすが愛に造詣が深い悪魔だけあってアスモデウスの言葉は私に深く響いた気がする。彼の言葉には重みがあったからだ。
(私は……ダビデが好き。だけど彼の気持ちも考えず、愛されたいだけだったかもしれない……)
私の恋は自己満足かもしれないーーそのことに気付く私なのだった。
***
一方、ダビデとソロモンはそれぞれ、ヤマトのことを探し回っていたのだがーー
「ソロモン?」
ダビデは偶然ソロモンの姿を見かけて声をかけたのだが、次の瞬間思いもよらぬ事態に動揺することになるのだった。
かなり久しぶりの聖書関連の蘊蓄ネタです。
アスモデウスは聖書の外典「トビト記」において、人間の娘サラに恋をしてしまうエピソードが有名です。一度も思いを告げることもできず、彼女に憑いて結婚を妨害し続けていたので、最後は大天使ラファエルに捕らえられてしまいます。
※ただトビト記には悪魔としか記載されてないです。
このエピソードは悪魔創作界隈で定番のネタです(笑)