163 私のこと、女として見て
『私は本当は心も女だったの。今の私は体も心も女の子なんだ…』
ついにずっと隠してきた秘密をダビデに打ち明けてしまった私。胸がドキドキして心臓が破裂しそうになりながらも彼の言葉をじっと待っていたのだった。
「え・・・そうだったのか…」
ダビデはやはり驚いた様子だったけど、私の目を真っ直ぐ見つめてこう告げるのだった。
「そうだとしても君が君であることに変わりはないさ」
出会ったばかりの頃、私が元の世界で男だったことを打ち明けた時も同じことを言ってくれたっけ。あの時はその言葉に心が温かくなったような気がしたし勇気づけられた気がした。
だけど今はなぜかそう思えない。
だって私はーーー
その次に発せられた彼の言葉を聞いた瞬間に頭を鈍器か何かで殴られたかのような衝撃を受けたのだ。
「実を言うとな……君が心も女だということは前からそんな気はしていたんだ。一緒に過ごしていればわかってくるものだ。それに……」
ダビデは慈愛に満ちた微笑を浮かべてこう告げた。
「君のことは娘のように思っているからな。私は父のような気持ちを君に抱いてるんだ」
(お、とう、さん……?)
その瞬間、まるで石化魔法をかけられたかのように体が固まって動かなくなったような感覚を覚えてしまい動けなくなってしまう自分がいた。
なんでこんなにショックを受けてるんだろう?こんなにも好きでたまらないのに、どうして苦しいと思ってしまうの……?わからないよこんな気持ち……知らないよこんなの……初めてだよ……怖いよ……わかんないよ……!
「どうした?ヤマト。顔色が悪くないか?」
ダビデは私の頬に触れようと手を伸ばしてきてーーー
「触らないで……」
「え?」
「いや!!!やめてっっ!!触らないで!!」
パンッと乾いた音が辺りに響き渡り、私の手は彼の手を振り払っていたのだと認識するまで時間がかかったほどだった。
なんでこんなことしちゃったの?!って思う反面、これでいいんだって心の中から声が聴こえるような不思議な感覚が襲ってきていた。
「ごめん…なさい…今は1人にして」
私は絞り出すようにそう告げて彼の前から走り去ることしかできなかったのだったーー
***
その場に1人取り残されたダビデは呆然自失と言った状態にありその場から動くことができなかったのだが、やがて正気を取り戻したようにため息をつく。
『触らないで』
生前、イスラエル王だった頃ーーある女性から同じことを言われた記憶が頭の片隅で蘇ったのだ。
(ミカル……私の最初の妻。だが嫌われてしまい溝ができたままだったな…)
ダビデは生前の妻のことを思い出しながら再び深いため息をついてしまうのだった。
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