160 アベルのとんでもない失言
翌日、ソロモンさんの屋敷に訪れた私は彼から昨日の顛末を聞くことになった。
アベルさんも詳しくは聞いてないみたいだけど、あの女神はこの世界において魂を管理する役目を担ってるらしくてーーそれは何を意味してるのか?
人々の信仰心を失い、他の神々は絶対神ミュトス以外は力を失い消滅してしまっている状況で尚、あの女神は普通に存在している。それに・・・「元神だった」と言ってるわりに神としての力を保持してるような気がする…。
ソロモンさんは、女神から盗聴されることを警戒してか多くは語ろうとしなかった。だけど深刻そうな表情をしていて何か思い詰めているような印象を受けた。恐らく彼にとって良くない情報を知ってしまったんだろうなと感じたよ。
「それとアベル君が、僕たちとアダム殿達みんなで会おうって。アベル君の歓迎会も兼ねてだと思うけどね」
あ、ソロモンさん、アベルさんの呼び方変えたんだ。
そういやダビデはまだアベルさんと会ってないし…ていうかアベルさんは女神派になるのかな?それとも私達が女神派と対抗派で分裂してること知らないとか?
だったら教える必要があるんじゃ……
「ダビデにも会わせてあげたいし、転生者達みんなで集まってもいいかもですね」
私は特に深く考えずそう言ったのだけど…まさかのアクシデントが待ち受けていることなど知る由もなかったのである。
***
「わあ、ダビデさん。楽器が弾けるんだね!僕、音楽って初めて聴いたけど楽しいもんですねー!」
ニコニコしながら楽しそうな様子でそう言うアベルさんに私とダビデは呆気に取られていた。彼はとても社交的で愛想が良くてすぐ馴染んでしまったのだ。正直すごいと思ったよ……私なら絶対に無理だもん……でもアベルさんって初めて会った時からコミュ力が凄かったっけな。
アベルさんは私達のゴタゴタを知らないのか変わらず無邪気で、私達はまるで以前のように一つにまとまっていた時のような和やかな雰囲気すらあったのだ。
(今の私達にはアベルさんみたいな人が必要なのかもなあ)
ダビデも、以前のような空気がこの時だけでも戻ってるのが嬉しそうに見える。やっぱり仲間思いなんだなって思うと微笑ましく感じるよね!
そんな風にしんみりしてるとーーアベルさんは唐突に私の地雷を踏み抜くような発言をしてきたのだった……!
「ねえヤマトちゃんって今は女の子だけど、前の世界では男だったの?」
は・・・・・・?いきなりなんなのこの人???!!なんで私が元は男だって知ってるの……?!!!
アベルさんの発言に聖書転生者達は全員凍りついたような表情をしていた……