156 新たな聖書転生者
それからしばらくしてーーーついにその時が訪れた。
アダムに連れられてやって来たカインは息を呑んで目の前の光景を見つめていた。
そこには大きな魔法陣があり、その中央には人影が見える。おそらくあれがアベルなのだろう。しかし、その姿を目にした瞬間カインは思わず息を呑んだ。
(アベル……!本当にお前なんだな!?)
カインの記憶にある姿のまま、まだ10代くらいの幼さが残る若者がそこに立っていた。
金髪碧眼で、顔立ちはカインに似ているが彼に比べると童顔で小柄であり、中性的に見える。
(間違いない……あれは俺の弟だ……!!)
「あれ…?ここは…?」
新たな聖書転生者ーーーアベルはゆっくりと目を開け周囲を見渡すと不思議そうに首を傾げた。その様子を見たアダムとカインは慌てて彼に駆け寄ると声をかける。
「アベル!」
アダムの声に反応して振り返るアベル。だが、次の瞬間ハッとした表情になると同時に叫んだ。
「お、お父さん!?」
アベルは驚いたように目を見開くとアダムに抱きつくようにして抱きついた。そしてアダムの胸に顔を埋めると嗚咽を漏らし始める。
そんな息子の様子を黙って見つめていたアダムだったが、やがて優しく頭を撫でるとこう言った。
「会いたかったぞ……アベル」
その言葉にアベルも嬉しそうに微笑んだ。まさに天使の微笑みという形容が似合う純粋無垢な笑顔だ。それを見たアダムはさらに強く息子を抱きしめていたのだった。
アベルはゆっくりとカインの方へ目を向け、悠久の時を経て再会した2人は互いに見つめ合うのだがーーー
カインは頭を床に擦り付けるようにして土下座をしていた。そして謝罪の言葉を述べる。
「すまない!!俺が不甲斐ないばかりに・・・お前にあんなことをしてしまって……」
突然のことに驚くアベルだったが、すぐに笑顔を浮かべて言った。
「何言ってるんだよ兄さん!こうして再会できたんだからいいじゃないか!それに僕だって酷いことをしたしお互い様だよ」
そう言って微笑む姿はまるで天使のようだった。それを見たカインはますます申し訳なく思ってしまうのだった。
だがアベルはそっと手を伸ばし、兄の手を握ると言った。
「これからはずっと一緒だよ!もう離れないでね?」
その言葉を聞いた途端、カインの目頭が熱くなるのを感じた。思わず涙が溢れそうになるがぐっと堪えると笑顔で答えるのだった。
「ああ・・・!約束するよ!!」
2人の兄弟は再び固く抱き合ったのだったーーーー
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