151 それぞれの想い
食事会は微妙な空気のまま幕を閉じた。
その後すぐに解散となったのだが、帰ろうとする私達にイサクが声をかけてきた。
「すまないな……気を悪くさせてしまっただろうか……」
申し訳なさそうに言う彼に、私は慌てて首を振る。
「いえ、気にしないで……!」
「それならいいのだが……」
ホッとした様子の彼だったが、まだ何か言いたいことがあるらしく、なかなか立ち去ろうとしなかった。そんな彼の様子を見て、何かを感じ取ったらしいダビデが声をかける。
「どうしました?何か言い忘れたことでもあるのですか?」
そう言われると、イサクは意を決したように口を開いた。
「ああ、そうだな……最後にこれだけ伝えさせてほしい。私は最愛の息子と再会したいと思っている。だが…君達の気持ちに共感もできる。身勝手だが、どちらも本心なんだ」
その言葉を聞いて、本当はイサクも迷ってるんじゃないかと私は思った。
それってつまりーーー
その時ソロモンさんが私の手を繋いできた。
「!」
少し動揺してしまう私だけど、ソロモンさんも私と同じことを考えてるんじゃないかって思った。だから何も言わずに握り返すことにした。
その様子を見ていたイサクはフッと笑って言った。
「どうやら君達にはもう迷いはないようだな」
それを聞いて私とソロモンさんは顔を見合わせて微笑み合う。そして同時に頷いたあと、改めて向き直って言った。
「はい」
「ええ」
それを聞いたイサクは満足そうな表情を浮かべていた。
「ならばよいのだ」
それだけ言い残して去って行く彼を見送る私達だったーーー。
***
《皆の者、済まないーー念話を繋げる約束だったというのに。実は・・・》
《いや、謝らないでくれ。ユダ殿。あの時、念話が発動できなかったのだろう?気付いてたよ》
食事会が終わった後、私達対抗派のメンバーはユダさんが発動してくれた念話で話し合っていた。
謝罪するユダさんにフォローの言葉をかけるソロモンさん。
そうだったのか…。ユダさん、きっと気が気じゃなかっただろうな…。でもどうして念話が使えなかったんだろう?
《なんだ、そうだったのか。お前どうしたんだよってうっかり喋っちまいそうだったぜ、ガハハ!》
冗談めかしてカインさんが言った言葉にユダさんは苦笑するしかなかったようだ。本当に申し訳なく思ってるんだろうなと思った。
《しかし、なぜあの時念話が使えなかったのか…これは不安要素だね……》
《うむ、その通りだな……》
もしかしてあの女神の仕業って可能性もあるのかな…だとすると私達の動向に気付いてるとか・・・?
それってかなりマズイよね…。
私は不安になってしまうのだった。