149 食事会の首謀者
ユダさんが念話を使って、対抗派のみんなが脳内会話をできるようにする段取りで臨んだ私達だったけど。
(念話が始まらない…?どうしたんだろう)
私は思わず隣のソロモンさんに視線を送る。
するとソロモンさんは私を安心させるかのように優しく微笑んでくれた。
その顔を見てると何だか安心できる気がした。ソロモンさんはなぜなのか気付いてるのかな?それならありがたいけど・・・。
そんな私達の様子を気にすることなく、アダムは淡々と話し続ける。
「さて、それでは早速食事を始めようと思う。まずは葡萄酒を注ごうか」
そう言いながらアダムはグラスに赤ワインを注いでいく。
全員に配られた後、アダムはグラスを掲げて乾杯の音頭を取る。
「では、諸君らとこうして再会できたことに感謝して・・・」
そうして、私達はワインに口をつける。
「ヤマトちゃん、大丈夫?飲めないよね、他の飲み物にしようか」
ソロモンさんの言葉に、私は素直に頷く。
「ありがとうございます。お酒は飲んだことなくて…」
だって元の世界じゃ高校生だもん。異世界では関係ないかもだけど、やっぱりまだ未成年だしね。
「そうか、じゃあ別の物を頼もうか」
「はい」
そして給仕係に声をかけてくれる。
(うう…優しいなあ…イケメンなだけじゃなく気配りまで完璧とかそりゃモテるわ)
こんな素敵な人に好かれたら幸せだろうな〜なんて思いながら、チラッとソロモンさんを盗み見る。
グラスを傾けてワインを飲む横顔も文句なしの美しさだ。美形すぎて眩しいくらいだよ……。
ついつい見惚れていると、不意に目が合った。ドキッとする私に対して、ソロモンさんはニコリと微笑みかけてくれる。
「どうしたの?」
「いえ……何でもありません……」
恥ずかしくて顔を逸らしてしまう。頬が熱い気がする……きっと赤くなってるだろうな……。
そんな私達の様子を、アダムが見つめていたことに私は気付かなかった。
みんなまだぎこちなく、どこか緊張した空気が流れてる気がする。
私達対抗派も、ユダさんの念話がなぜか始まらないことで一気に計画が崩れた感があるし……これからどうなってしまうんだろうか……。
不安を抱えながら、とりあえず今は目の前の料理を味わうことにしたのだった……。
「ダビデ、ソロモン、ヤマト」
彼らにとって対抗派であるはずの私達3人の名を呼びかける声があがる。
その声の主はーーー
イサクだった。
「実は、食事会を始祖さまに提案したのは私なんだ」
「え・・・?」
イサクがこの食事会を発案したと聞いて驚く私達。一体なぜーーー?