146 女神派からの意外な提案
ユダさんの異能である「念話」が複数人で脳内会話できる仕様にソロモンさんが改造したおかげで、対抗派全員での話し合いをすることができた私達。
一番の難関は、彼らのリーダーであるアダムを説得できるのかということみたい。
そのためにもまず先に、イサクとヤコブを対抗派に転じさせる必要があるという結論になり、まずはイサクから説得することにしたらしいけどーーー
(まさかこんなにすぐ実行するなんて思わなかっ
たよ……!)
カインさんは話し合いが終わる前に行動を起こしたみたいで、そのまま話し合いは終わっちゃったんだよね……
***
場面はカインとユダ側に移る。
「全く君は無鉄砲というか…その行動力は羨ましい限りだよ……」
呆れ顔のユダに対して、カインは笑顔で答える。
「まあ、俺にはこれしか能がないからさ!」
そんなやりとりをしながら、彼らはイサクの家へと向かっていた。
「それにさ、こうやって直接話す機会があれば、意外とすんなりいくんじゃないかと思ってな!」
「……それは否定できないな……それにしても本当に急だね……もう少し時間を置いてからでも良かったんじゃないのかい?」
「うーん……やっぱり思い立ったら吉日ってやつかなって思ってさ!」
「やれやれ……だが慎重に行こう。焦って仕損じたくはないからね……」
「ああ、わかってるよ!俺だってそこらへんのことはちゃんと考えてるぜ!」
2人がそんな会話をしながら歩いているうちに、目的の場所に到着したようだった。
そこは屋敷だった。ここにイサクは住んでいる。
ダビデとソロモンのように、親子だからといって息子のヤコブとは一緒には暮らしてないらしいが、2人はよく会っているようだ。
「さて、とりあえず中に入るか」
そう言って、カインが扉をノックしようとした時だった。
扉が開き、中から誰かが出てきたのだ。その人物を見て、カインは思わず声を上げた。
「父さん!?」
そう叫んだ相手は、何とアダムだったのだ。
女神派の中でおそらく最も説得が難しいと思われる彼らのリーダーであるアダムが出てきたことで思わず驚いてしまうカインとユダ。
だが不審に思われるわけにはいかないーー表向きはカインとユダはまだ女神派を装っているのだから。
彼らが裏で対抗派に回り裏切っているなどということはまだ悟られてはならないーーそう思いながら、平静を装って話しかけることにする。
「おや、これはアダム様ではありませんか?イサク殿と会っていたのですね?」
ユダがそう声をかけると、アダムもまた驚いたような顔をした後、こう言った。
「どうしたんだ、そなた達。イサクに会いに来たのか?」
「ええ…最近イサク殿の元気が少しないような気がするとカインと話していたので」
ユダはすらすらと咄嗟の言い訳を口にした。それに対してアダムは特に怪しむこともなく、納得した様子だった。
「そうか、心配してくれたのだな。ありがとう」
と言って微笑んだあと、アダムはこう言った。
「せっかくここで会ったのだからそなた達にも伝えておこう。イサクと話していたのだがーー対抗派になったダビデとソロモン。彼らと我々で食事会をしようということになったんだ」
それを聞いて、カインもユダも驚きを隠せなかった。
全く予想していなかった女神派と対抗派の食事会という展開。
一体なぜなのか……? そしてこの食事会はどうなるのだろうか……?