145 アダムとカインの関係性
《それでは、まず僕達から状況を報告しよう。僕とカインの見解ではおそらく難関となるのはアダム様の説得だろうと考えているんだが、それについてはどうだろうか?》
ユダさんが発言すると、真っ先に反応したのはダビデだった。
《始祖さま……始祖さまは以前、あの女神に操られて正気を失っていたと言っていたが、奥方がこの世界にいないことが堪えているからではないだろうか?》
《ああ。表には出してないが、イブ様を失っている状態はアダム様には耐えられないだろうと僕達も考えている。いくら君達が転生させる方法を持っていると言っても、あの女神に従う方が確実だからね……》
確かに、あの女神セナムーンは聖書転生者達をこの世界に呼んだ張本人だからね。
《いくら我々が仲間だといっても生きていた時代も違い、この世界で出会ってまだ日も浅い。信頼関係が十分育っているとは言えないかもしれないね……》
そう発言したのはソロモンさん。
《うーむ……始祖様は人類の始祖であり、私もあの方には逆らうことはできない。どうしたものか……》
ダビデは難しい顔で考え込んでいるような声だった。
それに対して、ユダさんはこう言ったのだ。
《だがアダム様と、イサク殿とヤコブ殿。この3人は比較的まとまっているように見える。イサク殿とヤコブ殿の説得であればアダム様も応じてくれるのではないかと思っているのだがどうだろう?》
そういえば、あの3人は私たちが出会う前から仲間だったもんね。
《そうだね。僕と父上より、イサク殿とヤコブ殿の方がアダム殿との信頼関係はあるかもしれないね》
ソロモンさんも賛同するように言った。
《それなら、息子のカイン殿でもいいのではないか?》
ダビデがそう提案したんだけど、それに対してカインさんはーー
《いや、俺は生前は父さん達の元を去って離れて暮らしてたからな……俺なんかの言葉じゃきっと聞く耳持たないと思うぞ》
そう反論するのだった。
《だが、貴方は始祖さまと決別したわけではないのだろう?》
ダビデの言葉に、カインさんは少し黙り込んでしまった。
そしてーー
《別に仲が悪いわけじゃない。だけど俺が言っても多分駄目だと思うぜ……》
そう呟くように言うのだった。
それを聞いて何か察したのか、ダビデはそれ以上追求することはなく話し合いは続けられるのだった。
カインさん……生前はお父さんと何かあったのかな……? いや、詮索するのはやめておこう。こういうのってあんまり深入りしない方がいいよね。
《それでは、イサク殿とヤコブ殿をこちら側に寝返させるのが先ということだね》
ソロモンさんがまとめるようにそう言うと、ユダさんがこう提案してきた。
《そういうことだ。まずイサク殿を説得して、それからヤコブ殿を説得するのがいいだろう》
《そうだな!まずはそこからだよな!よし、それじゃあ早速行ってくるか!》
え、もう!?
早くないですか!? 私が驚いている間にも、カインさんはさっさと行動に移してしまったようだ。
ひとまず対抗派の話し合いは終了したのだった。