139 裏切り者のユダ
女神派の一員だったユダが自ら対抗派に仲間入りすることになったーー!
《ユダ殿。父上とヤマトちゃんに共有したい情報がある。だがあの女神に盗聴されるとまずい。さっそくだが貴方の異能で2人に伝えてほしいことがあるんだ》
ユダの異能である「念話」を使えば、秘密裏に情報共有ができる。彼が対抗派に仲間入りしたことは大きな意味を持つことだろう。
ソロモンの提案に対し、快諾するユダだった。
***
こうしてダビデ達対抗派は、ユダの異能により情報を互いに共有し合うのだった。
ダビデがヘラクレスから何気なく聞いた情報。
そしてソロモンが悪魔達と会話していて思いついたこと。
それは奇しくも一致した情報だった。
(まさかソロモンも同じことを思いついていたとは…!そうーーーあの時ヘラクレスは言っていた。ギリシャの神の中に『人間を眷属にしようとしている者がいる』とーーーつまり、この世界に人間を転生できるのはあの女神だけの特権ではないということ……!!)
ダビデは心の中で叫ぶ。
ソロモンが思いついた方法とは、ソロモン72柱の悪魔達であれば、この世界に人間を転生させることができるのではないかということだった。
彼らは人間とは違い、元の世界とこの異世界を自由に行き来することができる。
そして彼らは、ギリシャの神々がこの異世界に自分達の領土を作ったように、領土を作ろうとしている。
彼らは悪魔でありながら、自分達を召喚した人間達に力を貸して助けていた。そんな彼らであればーーーー自分達をかつて召喚した人間達の悲願を叶えるためにこの異世界に転生させることだってできるのではないだろうか?
もちろん確証があるわけではないが、あの時ソロモンにはそれは間違いないという確信を感じ取っていた。
(それにそれが可能ならば、あの女神に従う必要などない。僕と父上のコネクションを利用すれば 彼らが望む1名をこの世界に転生させることを頼むことができるはずだ……!!!)
その考えに至った時、彼の胸は高鳴った。オセロがひっくり返るように、こちらが優勢になれたことを確信したからだ。
ユダの異能を介して、対抗派は打開策を共有し合うことができたのだが、ユダはあることを彼らに伝えたかったのだ。
《僕は表向きは女神派を装うことにする。そして、あの女神についてしまったカイン達を説得して対抗派につかせようと思うーーあの女神を欺きながら》
そんな大胆な提案をする彼に驚く一同だったが、それに対して異論を唱える者はいなかった。なぜなら彼の言うことが最も現実的だったからだ。仮に自分が敵対している派閥であっても説得に応じて味方になってもらうというのは常套手段と言えるだろう。
《裏切り役を買うことにするよ・・・あの女を裏切る役をね》
ユダの言葉に迷いはないようだった。
生前にキリストを裏切り、裏切り者の代名詞となってしまったユダだがーーー今度は仲間達のために裏切り役を演じることとなるーー!!