137 その頃ルシファーは
女神派が指令をこなしていた頃、対抗派の1人ソロモンは悩んでいた。
(このままでは埒が明かないな……父上とヤマトちゃんに『このこと』を共有したいが、あの女神に知られるわけにはいかない。この指輪で、秘密裏に情報共有できるような特殊魔法を開発できればいいのだが…)
だが、いくらソロモンの指輪が強力でも何でも自由にできるわけではないことを彼は知っていたため頭を抱えることになる。だが何もしないわけにはいかないので、まずは魔法の開発に専念することにしたのだった。
聖書転生者達とヤマトがそれぞれ、女神の策略により葛藤していた頃ーーー
場面は変わり、大天使ラファエルとサリエルは天界のある場所に赴いていた。
そこは堕天した者を一時的に隔離しておくための場所である。そこには、ソロモンの指輪を狙って異世界で戦争を起こそうと画策した魔王ルシファーや堕天使達などが収容されていた。
現在彼らは一時的に眠りについており、処遇について保留となっている。しかし、いつ目を覚ますかわからない状況にある為、監視を怠ることはできないのだ。そのため、定期的に見回りに行かねばならないことになっている。
「まさかあのルシファーがこんな形で天界に戻ってくるなんて。いや、戻ったというより強制的に収監されただけだけど…」
サリエルは複雑そうな表情を浮かべながら呟くように言った。それに対しラファエルは応える。
「未遂に終わったのが幸いだったね。だが無罪放免というわけにはいかないだろう。しばらくはこのまま幽閉かな」
「そうだね……俺もそう思う。ミカエルは複雑だろうけど」
2人はそんな会話を交わしながらも歩みを進めていくのだった。
**‘
それから数日が経った頃。
ソロモンは指輪を使って、情報を秘密裏で共有するための特殊魔法を開発しようと研究に没頭していたがなかなか上手く
いかないようだった。
(やはりそう都合良くはいかないか…これまでも偶発的要素もしくは対象者の資質によって発現する要素が大きかったからな……。現実的には言語を暗号化して情報共有する方法もあるが、それをすると膨大な時間を要することになるしな……どうしたものか……)
そんな風に悩んでいる時だったーーー
《ソロモン》
頭の中に誰かの声が響く。直接話しかけられた音声としてではなく脳に直接響くような不思議な感覚だ。
(これは……?一体誰だ?)
突然のことに驚くものの冷静に思考を巡らせていく彼であったが声の主はすぐに判明した。
《突然済まない、僕はーーーユダだ》
(!?ユダ殿ーーー?)
それは女神派についている、聖書転生者の1人ユダの声だった。
果たしてユダの目的とは?