135 カインとの再会
(このことをソロモンに教えてやりたいーーだが、あの女神に聞かれるわけにはいかん。一体どうすれば……)
悩みながらも歩みを進めていくダビデだったがその足取りは力強いものだった。
場面はヤマト視点に移る。
(良かった……ダビデが少し元気になったみたいで。息子のソロモンさんが自分についてくれたこと、きっと嬉しかったんだろうな…)
私はそんなことを思いながら街を歩いていた。すると思わぬ人から声をかけられてしまう。
「あれ?嬢ちゃん?」
聞いたことがある男の人の声ーー私が振り向くとそこには・・・
カインさんがいた。彼は驚いたような顔でこちらを見ている。そんな彼の顔を見て私も驚くことになった。なぜなら聖書転生者が分裂してしまって以来だったから……。
少し気まずい空気が流れるけど、カインさんは以前と変わらない明るく優しい笑顔で話しかけてきてくれた。
「久しぶりだなぁ!元気にしてたかい?」
そう言って私の頭を撫でてくれるその手はとても大きくて温かいもので、自然と心が安らいでいくのを感じた。やっぱりこの人は面倒見が良くて優しい人だなと思った。
「カインさん、あの……」
私は何て言っていいかわからなくて言葉に詰まってしまう。だけどそれを察してくれたようでカインさんは代わりに口を開いてこう言った。
「ごめんな、俺たちがこんなことになって。けど、俺たちにはどうしても譲れないものがあるんだ……」
その顔はとても真剣で切実なものを感じた。だから何も言えなかった。でもこれだけは伝えなければと思った。
「いえ……でも、カインさんが前と同じで安心しました」
それを聞いたカインさんは一瞬キョトンとした顔になった後すぐに笑い出した。
「ははは!何言ってるんだい!俺たちは仲間だろ!今は一時的に分裂しちまったけどダビデ達は今でも仲間だと思ってるぜ。もちろん嬢ちゃんもな」
その言葉に胸が熱くなるのがわかった。私たちは確かにあの女神によって2つに分かれてしまったけど、こうしてわかり合えることもあるのだと実感できた瞬間でもあったのだ。そしてそれは私にとって嬉しいことだった。
「ありがとうございます……!その言葉だけで嬉しいです……!」
感謝の気持ちを込めて頭を下げるとまた優しく頭を撫でられた。
「いいんだよ、また笑い合える日が来るって信じてるからよ!」
彼の明るい笑顔を見ているとなんだか勇気が湧いてくるような気がした。
***
一方、ダビデとソロモンはそれぞれ打開策になり得る策を得ていたが。
対抗派で共有すれば女神に盗聴される危険性があるため、胸に仕舞うしかない状況に歯痒さを感じていた。