134 親友ヘラクレス(猫モード)
ダビデは1人街を歩いていた。息子のソロモンが女神対抗派に残ってくれ、ヤマトと3人になってしまったがそれでも1人ではないのだという思いは大きな力になっていたようだ。
そしてあの時聞こえた天の声ーー
それは自分が唯一信仰している神ヤハウェの声だと彼にはわかっていた。神への信仰心は搾取されてしまっている状況だがそれでも神は自分を見捨ててなどいないと確信していたからだ。だからこそ今の自分があると思っているし、これからもずっと信じ続けるつもりだ。たとえどんな苦難があったとしてもーー
そう思っていた時だった。
「あれ?親友ーー?」
背後から間延びした男の声がする。いつの間にいたのだろう?だがその声には聞き覚えがあった。
「貴方は…ヘラクレス…!」
そこにいたのは相変わらずの巨体を持つ筋骨隆々の男ーーギリシャ神話最強の英雄と呼ばれる大英雄ヘラクレスだった。
だがその迫力ある巨体からは想像できないような、眠そうに目を擦る姿はどこか愛嬌を感じさせるものがあった。というか可愛げすらあったのだーーそんな姿に思わず笑みが溢れてしまう。
どうやら今日は英雄モードではなくマイペースな彼の方のようだ。
そんな笑顔を見て彼もまた微笑む。
「貴方がどうしてここに?」
「いや別に大した用じゃないよ〜ただ街を散歩してたら君の姿が見えたから声をかけただけ〜」
そう言う彼に苦笑するしかなかったのだがそれと同時に安心感を覚えたのも事実だった。この男は信頼できる存在だということを本能的に感じ取ったからである。
互いに近況報告をしたり雑談を交わすが、聖書転生者達の間で起きている問題は言わないようにしていた。巻き込んでしまうと迷惑になりかねないからだ。異教の神とはいえ自分を親友呼ばわりしてくれるこの世界での友なのだからなるべく危険に晒したくないという気持ちが強かったのである。
(ヘラクレスであれば頼りになるだろうがーー我々のゴタゴタに巻き込むのは良くないだろう)
ダビデのそんな心情を何も知らないヘラクレスは時折あくびをしながらも話を聞いていたが、彼が何気に発した情報にダビデは驚愕することになる。
「そういえば……うちの神の誰かが・・・・・・・・・・て言ってたな〜」
(なんだと……?)
ヘラクレスは何気に思いついて「あること」を話しただけのようだがダビデにとっては大きなヒントとなったようだ。
(まさか……それが本当なら……)
詳しく話を聞きたいところだがあの女神がいつ盗聴してるかもわからない。なのでダビデはあえて流し、この話は深掘りせずに切り上げることにした。しかしこれで光明が見えたのは確かだった。