133 来訪するソロモン72柱の悪魔達
女神に抗うことを決めたダビデとソロモン。これからどうするのか対策を講じなくてはならない。だが仲間が大きく欠けてしまったことは痛手だった。
(ユダ殿の異能……テレパシー能力が使えないのは不利だな。我々の会話もあの女神がいつ聞いているかわかったものではないからな)
ソロモンは自宅の仕事部屋で仕事をしながら冷静に分析していた。何しろ相手は元とはいえこの世界の神だった女だ。盗聴されている可能性は十分にあるため迂闊に作戦会議もできない状態だったのだが、かといってこのまま何もしないわけにはいかない。何か行動を起こさなければ女神の計画を止めることもできないのだから・・・
(この指輪の力を有効に使えないか…おそらくこの指輪の権限まであの女神には握られてはいないはずだ)
そう思い、ソロモンは自身の指にはめられたソロモンの指輪を見つめる。
するとーー
コンコンッ
窓を叩く音がする。
「ヴアル?それにみんなまで。よく来たね」
窓の外にはソロモン72柱の悪魔であるヴアル、バルバトス、ムルムル、マルファスの4柱がいた。どうやら訪ねてきてくれたようだ。相変わらず仲が良いらしいなと思いつつ窓を開けてやる。すると彼らは部屋の中に入ってきた。
「ソロモン王!お久しぶりです!お元気でしたか?」
「ああ、見ての通りさ」
「ふん。お前、少し痩せたんじゃないか?」
ぶっきらぼうな口調でバルバトスは言うが彼なりに心配してくれているようだということはわかっているので笑顔で答えることにする。
「最近忙しかったからね。でも大丈夫だよ」
そう言うと納得してくれたようでそれ以上追及されることはなかった。彼らはたまたまこの街に来たのでソロモンに挨拶しようと寄ってくれたそうだ。
「実は、我々もこの異世界に自分達の領土を作ろうと思っていまして・・・」
「へえ〜!それは良かったね。僕で良ければいつでも相談に乗るよ。国を作るのもいろいろ大変だろうしね」
「ありがとうございます。実はソロモン王に今後相談できないかと我々も考えていたのです。なんと言ってもソロモン王は生前、イスラエルを最も栄えさせた偉大な王ですから、法治のことなどご指導願えればと思いまして……」
そう言って頭を下げるムルムルに慌てて頭を上げるように言うと嬉しそうに笑ってくれるのだった。やはり彼らとは良い関係を築けそうだなと思うソロモンであった。
今聖書転生者達が直面している問題は彼らには関係ないので無闇に巻き込むことは避けたいと思っていたソロモンだが、彼らだって仲間なのだ。
そう思うと前向きに協力してやりたい気持ちになっていたのだったーーー
(うんーーー?待てよ……)
その時ソロモンはある考えが頭に浮かんだ。それは彼の元々の知能ゆえかそれとも天啓なのかはわからないがそんなことはどちらでもいい。
(そうか・・・なぜ気付かなかったんだ!これは使えるかもしれないぞ!)
こうしてソロモンは新たな一手を思いつくことになるのだったーーー