132 女神側の派閥の動向
「非人道的なことはできないが・・・俺たちはどうしても取り戻したい大切な人間がいる。主への信仰をやめるわけでも異教に走るわけでもない。ただあの女神の目的を果たす協力だけすればいいだけだ」
カインは自分達の選択は正当だと信じて疑わなかったが仲間達の意見はどうだろうか?と心配になっていたが皆も同じ考えのようだった。
その中で特に強く主張したのが聖書転生者のリーダーであるアダムである。彼は絶対に譲らないという意志を示していたのだ。そんな彼を見た仲間たちは驚きつつも彼の意思を尊重しようとしていたのであるーーー
彼にはどうしても譲れないものがあったからだ。
女神は彼らにこう告げていた。
「貴方達が望む人物1名をこの世界に呼ぶという条件ーー私の指令を1つ完遂する毎に1名を転生させてあげるわ。誰を転生させるかは貴方方で決めなさい」
どうやら全員の望む1名を一度に復活させるのではなく、1名ずつ転生させるつもりのようだ。
こうすることで彼らを確実に自分の目的のために最後まで働かせるつもりなのだろう。一体それがいつまでなのかーーわからない以上油断はできない状況だと言えるだろう。しかし彼らはそれを受け入れた上で行動を起こすことにしたようだ。彼らの決意は固かった。
「ダビデには申し訳ないが………」
自分達を必死で引き止めようとしたダビデのことを思い、彼を気にかけるイサク。
イサクは特に穏やかで争いを好まない性格なので仲間同士で分裂してしまった今の状況は非常に苦しいものであったに違いない。だがそれでも彼は自分ができることをやると決めたようである。
「………ダビデは真面目な性格だからな。だが、我々には譲れないものがある。彼とソロモンにはそれがないのだろう……ならば我々が譲歩してやる必要などないのではないか?」
アダムのその言葉に頷く面々だったが、その表情は苦渋に満ちているように見えた。彼らもまた、ダビデ達に対して罪悪感を抱いているのかもしれない・・・。
「今は一時的に分裂しただけだ。彼らが仲間であることに代わりはない。我々だけでも団結していこうではないか!」
そう呼びかけるアダムの言葉に一同は賛同の意を示すのだった。
(すまないダビデ……だが我々はもう後には引けないのだ……どうか許してくれ……!)
心の中で懺悔するように呟くアダムであった。
そんな中、ユダだけは内心で別のことを考えていたのだったーーー