128 分裂する聖書転生者達
「あらあら。答えが出ないの?だけど揺れているように見えるけど?うふふ、じゃあこうしましょう」
まるで悪魔の誘惑のように、聖書転生者達が何よりも望むものを餌にする彼女。
何て卑劣なやり方なんだろう。
なぜならそれは、きっと彼らにとって最も大切なものなのだから。
「全員で1つの答えが出せないのなら、各自で選択してもらうことにしましょうか♪」
その言葉にまたしても動揺する彼ら。
しばらく誰も動こうとしなかったけどーーーーーー
「本当にこの世界に呼んでくれるんだろうな?」
1人だけ、決断を下した者がいたのだ。
それはカインさんだった・・・
彼は、真剣な表情で問いかける。
それに対して、彼女はニッコリと笑って答えるのだった。
「ええ、もちろんよ♪ただし条件付きだけどね♪」
「……わかった。条件を聞こうじゃないか」
そう答える彼の瞳には強い意志が宿っていた。
「カイン殿……ダメだ!言うことを聞いては……」
ダビデは制止しようとするけど、セナムーンはそれを無視して言葉を続ける。
「私の眷属として素直に従ってくれればいいわ。大丈夫よ、誰も傷つかないし傷付ける必要もないことだから。少し働いてもらう必要はあるけど、それだけでいいのよ?」
まさに悪魔の誘惑のようであり、思わず耳を塞ぎたくなるような内容であった。
「……そうか。俺はあんたの言う通りにするよ」
だが、それでもなお彼は彼女の提案を受け入れたのだ。
「私もだ」
「……ダビデ、済まない…」
「………」
カインさんに続くように、ヤコブ、イサク、ユダさんも次々と賛同していく。
「そ、そんな……待ってくれ!罠に決まっている!みんな思い直してくれ!」
ダビデは必死で説得を試みるもーー無駄だったようだーー……
他の3人も覚悟を決めた表情をしていたからだーー……
「始祖さまーーー」
ダビデは泣きそうな顔で、リーダーのアダムに懇願するような視線を送るもーー
「……すまない」
ダビデと目を合わそうとせず、ついにアダムまで彼女の要求を受け入れてしまったのだ・・・。
その様子を見たソロモンさんはただ静かに見守っていただけだった・・・。
こうしてーーー
聖書転生者達は2つに分裂してしまったのだった。