127 悪魔の囁き
「あなた達が我が眷属として私のものになる褒美としてーーーあなた達が望む人物1名をこの世界に転生させてあげるわ♡」
突然告げられた言葉に驚く私たちだったが、真っ先に反論したのはダビデだった。
「ふざけるなっ!誰がお前なんかに従うものか!」
そう言って怒りを露わにする彼だったがーー そんな彼女の反応を見てもなおセナムーンは楽しそうに笑っていた。
「皆の者、そうだろうーーー」
ダビデは仲間達に同意を求めるよう振り返るけど・・・
彼らはそんな彼の真っ直ぐな目から逸らすかのように俯いていたのだったーー
「えっ・・・」
予想外の反応を見せる彼らに困惑するダビデだったけど。
(え……?みんな…?もしかして…迷ってるの?)
私はそのことがわかってしまった。
みんな、セナムーンの提案に大きく心が揺らいでしまっているのだと。
「さあどうするの?早く決めなさいな」
そんな彼らを急かすように声をかけるセナムーンだけど・・・・ 誰も答えようとはしなかった。
「おい、みんなどうしたんだ…?始祖さま……?」
ダビデは困惑したように、みんなに呼びかけるけど。
誰も彼に同意しようとしない。
ソロモンさんだけは冷静にこの状況を見つめていたけれど、内心では焦っているように見えた。
その時、聖書転生者達がそれぞれ、心の中である人のことを思い浮かべていたことを私は知る由もなかったのだけどーーーー
(1人をこの世界に転生できるだと・・・?てことは…アベルとまた会えるってことなのか…?)
(1人をこの世界に……私の最愛の妻ラケルが・・・)
(エサウ……)
(主……イエス様。もう二度とお目にかかれないと思っていたがーー再び相見えることができるのか?)
彼らがそんなことを考えていたなんて思いもしなかった。
そして、その様子を見たセナムーンはとても満足そうな表情をしていた。