12 ダビデの信仰心
最強種であるドラゴンとの死闘を奇跡的に乗り越えたダビデは、意識を失ってしまった。
私は携帯端末で救助隊に連絡を取り、急いで彼を病院へと運んだ。
幸いにも軽い打撲程度で済んだようだが、検査入院という形で一晩だけ病院に泊まることになった。
ああ、良かったーー!
無事で本当によかったーー!! もう心配させないでよバカァー!と言いたいところだけど、ここはぐっと我慢しようと思う。
(それにしてもあの時の光、何だったんだろう?ダビデがいつも使う光とは違ってたみたいだし…)
不思議に思いながら病室で眠っているダビデを見つめる。
寝てる顔もイケメンだなぁ…なんて考えながら見つめていると、彼が目を覚ましたようだ。
「う……うぅ……」
「あ!気が付いたんだね!良かったぁ……」
安堵のため息を吐く私にダビデは言った。
「君は……無事だったのかい?」
「うん!平気だよ!ダビデのおかげだね」
「そうか……君が無事ならばそれでいいんだ……」
「ふふっありがとう。ところでダビデ、あの時何があったの?」
「ああ、実は私にもよくわからないんだ」
「わからないってどういうこと??」
「あの時は死を覚悟して目を閉じたんだ」
「えっ!?そうだったの!?」
「そしたら暖かい光が降り注いできたんだ」
「また無意識で光を発したってこと?」
ダビデは首を振った。
「いや、あの光は違うんだ。今までとは違う」
「じゃあ誰が……?」
「わからない。ただ、あれは主の御力によるものだと思うんだ」
「主??」
私は何のことかわからず聞き返した。
「主とは、私達イスラエルの神ヤハウェさまのことだ。私は生前、ヤハウェさまに選ばれ王になった。私はヤハウェさま…主だけを信仰し、この身も心も僕として捧げたんだ」
そこまで言うと彼は急に黙り込んだ。何かを思い出しているようだった。
しばらく沈黙が続いた後、彼はゆっくりと語り始めた。
「私は……主に再び会いたいと思っていた。主に会いたい一心で祈りを捧げてきた。主は私の願いを聞き届けてくれたのかもしれない……!」
「それってつまり、神様が助けてくれたかもしれないってこと??」
私が尋ねると彼は頷いた。
「恐らくそうだろうね。そうでなければ説明がつかないだろうからね」
彼はどこか嬉しそうだった。
現代人だった私には信仰ってピンと来ない。
でもダビデにとって主と呼んでる神様はすごく大切な存在なんだろうと思った。
(長く一緒にいたわけじゃないけど、こんなダビデの顔、初めて見た)
やっと彼の心からの笑顔を見た気がする。
(いつも明るく気丈に振る舞ってたけど本当は無理してたんだ…。彼に頼りっぱなしじゃなく、もっとしっかりしないとダメだ!)
今回の件で、ダビデの従者として成長することを心に決めたのだった。
ダビデは神ヤハウェに選ばれて王になってます。ヤハウェに選ばれた者は頭に油を注がれる慣習が聖書の世界にはあり、ダビデも油を注がれてます。ダビデは3度油を注がれていて、そんなに油を注がれる人は聖書でも稀有です。最初に油を注がれたのはダビデが少年時代、しがない羊飼いをしていた時です。
またダビデは非常に神への信仰心が強い人物で、聖書の詩編に残された彼が作った詩にも信仰心の高さが表れてます。