125 ユダの異能
私たちは改めてこれからどうするかについて話し合うことにした。
まず最初に口を開いたのはリーダー役のアダムだ。
「あれ以来、あのセナムーンという女神は誰の元にも姿を現してはおらぬようだな」
どうやら聖書転生者達は、あれから一度も彼女に出会っていないらしいことがわかった。
「だが監視はされているかもしれないですね」
そう発言したのはイサクだ。
あの女神がただ黙っているだけとは思えないし、きっと今もどこかで私達の様子を観察しているに違いない。
そう思うと背筋が凍るような思いになる。
だがここで弱気になってはいけないと思い、グッと堪えることにした。
「そこで提案だが」
ソロモンさんが手を挙げて提案する。
「こうして話し合い打開策を見つけたとしてもーーあの女神に聞かれてしまうかもしれない」
「くそ、盗聴までされるのか!」
カインさんが悔しそうに呟く。
「だが、我々だけで共有する方法はある」
「何?それは一体…?」
「僕の力を使えばいい」
そう徐に発言したのはユダさんだった。
「ソロモンの指輪で彼の異能を発現してみたところ、心の中で言葉を任意の相手に伝えることができることが分かったんだ」
そう言って微笑むソロモンさんを前に、私達は驚きを隠せなかった。
そんな便利な能力があっただなんて知らなかったからだ。
「メッセンジャーの異能だね」
この異能は、テレパシーのようなもので、相手の心を読むことはできないけど、心の中で簡単な会話をすることができるらしい。
そして複数人に向かって声を出さずに言葉を伝えることもできる能力なんだとか。
女神は監視はできても心の中まで読むことはできないと思われ、この方法なら秘密裏に情報を共有することが可能だろうという話になったのだった。
(すごい。みんなが団結さえしてれば、きっと何とかなるはず……!)
そんな希望が見えてきて私は嬉しくなったのだけどーーー
そんな楽観的希望は呆気なく覆されてしまうのだった・・・
「あらあら、ちょっとお久しぶりね。みんなおとなしくしてくれてたようね♡」
「!!!」
この声はーー私達を支配してる元女神セナムーン!
この前のように唐突に姿を現す彼女に、私達は嫌な予感を感じるのだった。