124 聖書転生者達の作戦会議
ある日、私達は久しぶりに集まることになった。
表面上はおとなしく従順なふりをしてやり過ごしていた私達だけど、このまま何もしないわけには行かないからだ。
それに仲間で集まりたいとみんな思ってくれているはず。
だから今日は、みんなで集まって作戦会議をすることにしたのだ。
集まったのは街外れにある高台の広場だった。
ここは、聖書転生者達が信仰する神のために神殿を建てようとしていた土地で、今は一旦保留になっている場所だ。
何もない寂しい場所だけどあえてここを集合場所として選んだのは、彼らなりの意地なのかもしれない。
だけどここにはベンチもあるし、ちょっとしたテーブルもあるので、そこで話し合いをしようというわけだ。
「よお、遅れて悪いな」
いつものように豪快にみんなに声をかけるカインさん。
隣にはユダさんの姿もあった。
2人ともいつもと変わらず元気そうだ。
「イサク殿とヤコブ殿もお元気そうで何よりです」
ダビデは2人と握手を交わしながら言う。
「君、少し痩せたんじゃないか?」
イサクはダビデの体を見て心配そうに言った。
「ええまあ、最近食欲がないもので」
「大丈夫なのかい?」
「大丈夫ですよ」
心配するイサクに対し、笑って返すダビデ。
私の前ではいつもと変わらず明るいけど、やっぱり信仰心を搾取されるのは辛いんだろうなと思う。
私はそんな彼を少しでも支えたいと思い、そっと手を握った。
「ヤマト……?」
驚いたように私を見る彼に向かって微笑みかける。
すると彼もまた微笑み返してくれた。
「ありがとな」
小さな声でそう言った彼に、私も小声で返事をする。
(気にしないでいいよ……)
ダビデと見つめ合っていると、不意に後ろから声をかけられた。
振り返るとそこにはソロモンさんの姿があった。
彼は微笑みながら私に語りかけてくる。
「やあ、ヤマトちゃん。この前も会ったけど、君に会えて嬉しいよ」
相変わらず爽やかな笑顔を浮かべているソロモンさんは私の頰に触れてきた。
彼の手つきはとても優しく紳士的で、まるで王子様のようだった。
(この人本当にイケメンだな……)
つい見惚れてしまう私を他所にソロモンさんは続ける。
「君がいてくれて良かったと思ってるんだ……」
「え……どうしてですか?」
いきなりそんなことを言われて戸惑ってしまう私だったが、ソロモンさんは構わず続けた。
「君といると新しい自分になれる気がするんだよ。そんなこと初めてなんだ……」
「そ、そんな…私なんて……」
私はいつもの癖で卑下してしまう。
素直に受け取ることに慣れていなかったせいだと思うが、それでもソロモンさんの好意が嬉しかったのは確かだった。
その後、それぞれ近況報告や雑談をしたりしていつも通りに交流していた私達だけどーー
まさか、あんなことが起きるなんて夢にも思っていなかったわけで……