123 ヤマトの正体を知ったソロモン
ヤマトの名前が出た瞬間、思わずソロモンは大きく反応を示してしまう。
「ヤマトちゃんのこと、ですか?」
「ああ。今はヤマトいう名前の少女のようだね」
「え……?」
『今は』とはどういうことだろうか?疑問に思ったがそれを口に出さずに飲み込んでおいた。
「あの少女はーー元は天使だったんだ。昔だけどね……」
「え………!?」
それを聞いたソロモンは驚愕する。
(なっ……!?ヤマトちゃんが元天使だと……!?)
動揺を隠しきれないソロモンだったが、続けて話を聞くことにした。
「ーーーというわけだ。この話は他の者には内密にしてほしい。もちろんヤマトにもね」
ハハイヤからヤマトの前身について話を聞いたソロモンは驚きのあまり言葉を失うしかなかった。
(まさか……そんな……)
確かにヤマトには普通の人にはない特別な力があるとは思っていたし、もしかしたらと思ってはいたが……
(彼女が……元は天使だったなんて……)
にわかに信じられない話だが、目の前にいるこの男が嘘をつくとは思えないし、何より彼が嘘を言う理由がない。
「わかりました。それで頼みというのは何ですか?」
気を取り直したソロモンが尋ねると、ハハイヤは答えた。
「あの子のこと、気にかけてやってくれないか」
そう言って頭を下げた彼にソロモンは慌てて答える。
「あ、頭を上げてください!もちろんですとも!彼女のことは私が必ず守ります!」
ソロモンの言葉にフフッと笑って頭を戻したハハイヤは言った。
「ありがとう、助かるよ。ところで君…何か大変な状況なのかな?」
「……はい。実はーーー」
ソロモンは自分が今置かれている状況を説明した。
話を聞き終えたハハイヤは言う。
「なるほどね……そういうことだったのか。天使は過度に干渉してはならない決まりだ。君達自身で打開していくしかないだろう」
「はい。このまま黙って従うつもりはありません」
「君ならそう言うと思っていたよ。だが、力になれることもあるかもしれない。困ったことがあったらいつでも相談してくれ」
そう言い残して去っていったハハイヤを見送った後でソロモンは思うのだった。
(ヤマトちゃん……あの姿は天使時代の名残りだったのか。彼女が元の世界で男だったのに女性になったのは、天使時代が女性だったからということか)
聖書転生者達と違い、1人だけ現代人の彼女がなぜセナムーンに選ばれて異世界に召喚されたのか?
それも彼女がかつて天使だったことを考えれば納得がいった。
(つまり、僕は天使だった子に恋をしてしまったというわけか……ふふっ悪くない……)
思わず笑みを漏らすソロモンであったーー
***
それぞれに日々を過ごしていた聖書転生者達、そしてヤマト。
そんな彼らに大きな試練が迫っていたのだったーーー